素直になれない自分が嫌で、でも直せなかった
好きなのに冷たくしてしまう。会いたいのに会いたいと言えない。嬉しいのに嬉しそうにできない。自分でもわかってる、それが関係を壊していると。でも直せない。
7年間、結婚相談所でアドバイザーをやってきて、素直になれないという悩みを抱えた会員さんに何人も会ってきた。外から見るとわかりやすいのに、本人には全然見えていない。素直になれない人の内側には、ちゃんとした理由がある。その理由を知らないまま頑張っても、直らない。今日はその話。
素直になれない人を責めるのは的外れだという話
素直になれない、という状態を意地悪とか子どもっぽいと片付けてしまう人がいる。でもそれは違う。素直になれない人の多くは、素直になることへの本物の恐怖を抱えている。恐怖があるから動けない。意地悪でも子どもっぽくもない。怖いだけだ。
その恐怖がどこから来ているかを理解せずに、素直になりましょうとアドバイスしても、何も変わらない。現場で何度も見てきたことだ。
恋愛で素直になれない人の心理、その根っこ
傷ついた記憶が、感情の出口を塞いでいる
素直になれない人の多くに、過去に感情を出して傷ついた経験がある。好きと言ったら笑われた、弱さを見せたら離れていった、本音を話したら利用された。そういう経験が積み重なると、感情を出すことへのブレーキが自動的にかかるようになる。
千尋さん、34歳の会計士。相談所に来たとき、お見合いで何度褒められても表情が動かないと男性側からフィードバックが来ていた。本人に話を聞くと、20代の頃に好意を素直に伝えたら相手に引かれた経験があり、それ以来感情を出すことが怖くなったと言っていた。
ブレーキは一度かかると、外す練習をしない限り外れない。意識しても外れない。なぜなら、そのブレーキは自分を守るために脳が作ったシステムだからだ。
プライドが邪魔をしているパターン
素直になれない理由として、プライドが邪魔をしているケースがある。会いたいと言ったら負け、先に好きと言ったら主導権を失う、という感覚だ。駆け引きの文化がこれを助長してきた部分もある。
でも現場で見ていると、プライドを守ることと関係を守ることが、あるポイントから先は完全に矛盾し始める。プライドを守るために本音を隠し続けると、相手には気持ちが伝わらない。伝わらないから相手は離れていく。離れていった結果、またプライドを傷つけられる。皮肉な話だけど、プライドで感情を守ろうとした結果、感情が行き場を失う。
見捨てられることへの恐怖が、本音を封じている
これが一番根が深いパターンだ。本音を見せたら嫌われる、弱さを出したら去っていく、という恐怖が、感情の表現を根本から封じている。
素直になれない人の中に、幼い頃から感情を出すと怒られた、泣いても誰も来なかった、本音を言うと状況が悪化した、という経験を積み重ねてきた人がいる。そういう環境で育つと、感情を抑えることが生き延びる知恵になっていく。大人になってからも、その知恵が恋愛の場に持ち込まれる。
千尋さんの話を聞いていくと、家庭環境の話が出てきた。感情を出すと親に否定された記憶が何度もあったと言っていた。恋愛での素直になれなさは、恋愛の問題だけじゃなかった。
素直になれない人が恋愛でやってしまうこと
好きな人に冷たくしてしまう
好きだから怖い、怖いから距離を取る、距離を取ったら相手が離れていく。このパターンを繰り返す人がいる。外から見ると興味がないように映るけど、本人の中では全力で好きな感情が動いている。
相談所のお見合いで、明らかに気に入っているのに態度が硬くなる女性がいた。面談室に戻ってくると今日の人すごくよかったと顔を輝かせているのに、お見合いの場では無愛想に見えていたと男性側からフィードバックが来る。その落差が、何度もすれ違いを生んでいた。
好きな人に冷たくしてしまうのは、好きじゃないからじゃない。好きすぎて怖くなっているからだ。
嬉しいのに嬉しそうにできない
褒められても流す、プレゼントをもらっても薄い反応しかできない、デートが楽しかったのに楽しかったと言えない。嬉しい感情は確かにあるのに、それを表現する回路が詰まっている状態だ。
受け取る側の男性は、反応が薄いと喜んでもらえなかったと感じる。次第に、この人のために何かしてもあまり意味がないという感覚になっていく。嬉しそうにできないことが、相手の気持ちを少しずつ削っていく。本人はずっと嬉しいのに。
これほどもったいないすれ違いはない、と思いながら何度も見てきた。
甘えたいのに甘えられない
疲れているのに大丈夫と言う、助けてほしいのに助けを求められない、寂しいのに寂しいと言えない。甘えることへの抵抗感が強い人に、これが出やすい。
甘えることを弱さと捉えている人がいる。弱さを見せたら相手に軽く見られると思っている。でも実際には、甘えられる関係の方が相手との距離が縮まりやすい。甘えることは弱さの表明じゃなくて、信頼の表明だ。その感覚が逆転したまま恋愛をしていると、関係がいつまでも表面的なところに留まる。
素直になれない人が、素直になろうとして失敗するパターン
頑張って素直になろうとすると、空回りする
素直になれないことに気づいた人が次にやるのは、頑張って素直になろうとすることだ。でもこれが大体うまくいかない。
無理に感情を出そうとすると、不自然になる。演技っぽくなる。相手にその不自然さが伝わって、逆に距離が生まれることがある。素直になろうと頑張った結果、余計にぎこちなくなったという経験を持つ人が何人もいた。
素直さは頑張って出すものじゃない。ブレーキが外れたときに自然と出てくるものだ。ブレーキを外す前に感情を出そうとしても、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態になる。
素直になることと、感情をぶつけることを混同してしまう
素直になれない人が素直になろうとしたとき、感情をそのままぶつけてしまうことがある。ずっと抑えていた分が一気に出る。怒りとして出る、涙として出る、責める言葉として出る。
素直に感情を伝えることと、感情を制御できないまま出すことは全然違う。前者は関係を深めるけど、後者は関係を壊す方向に動きやすい。抑圧してきた感情が急に溢れると、相手が受け取りきれなくなる。
千尋さんも、素直になろうと意識した時期に、交際相手に感情を一気にぶつけてしまって関係が壊れた経験があると話していた。素直になれなかったときより、素直になろうとしたときの方が傷ついた、と。
では、どうすれば素直になれるのか
ブレーキがかかっていることを、まず自覚する
素直になれない人が最初にやることは、頑張ることじゃない。自分の中にブレーキがあることを自覚することだ。
素直になれない瞬間に、あ、今ブレーキかかってるな、と気づけるようになるだけで、だいぶ変わる。気づかないままだと、自動的に感情を押さえ込む。気づいた瞬間に、本当は今何を感じているかを一度だけ確認できる。感情を出す出さないは次の話で、まず何を感じているかを自分だけに対して正直になる練習が先だ。
小さいところから一つだけ出してみる
いきなり全部の感情を出そうとしなくていい。一番小さいところから一つだけ出してみる。おいしかった、楽しかった、嬉しかった。ネガティブな感情じゃなくて、ポジティブな感情から少しずつ出す練習をする。
千尋さんがカウンセリングの中でやり始めたのもこれだったと後から聞いた。デートが楽しかったとき、帰ってから一言だけLINEで伝える練習を続けたと言っていた。最初はぎこちなかった、でも続けているうちに自然になっていったと。
小さい素直さが積み重なると、大きな素直さへの道が少しずつ開けてくる。
信頼できる相手かどうかを確認してから出す
素直になれない人に伝えたいのは、誰にでも素直になる必要はないということだ。素直に感情を出していい相手かどうかを、ある程度確認してから出せばいい。
素直に感情を出したとき、それを大切に扱ってくれる相手かどうか。その確認が取れない段階で無理に出そうとすると、また傷つく。傷つくとブレーキがさらに強くなる。慎重に相手を見極めながら、少しずつ開いていく。これが素直になれない人に向いているペースだと思っている。
素直になれない人が選ばれる瞬間の話
少しだけ開いた瞬間が、一番刺さる
ずっと硬かった人がふっと素直になる瞬間は、受け取った側に強く残る。ずっと感情を出さなかった人が、ある瞬間だけ本音を一言言う。その一言の重みが、最初から全開で感情を出している人の言葉とは全然違う。
千尋さんが交際中の相手に初めて素直に今日すごく楽しかったと言えた日のことを、後から話してくれた。相手がものすごく嬉しそうにしていた、と。それまで何度会ってもどこか手応えを感じられずにいた相手が、その一言で全然違う顔をしていたと言っていた。
ずっと閉じていた人が開く瞬間の力は、ずっと開いている人には出せない種類のものがあるから逆に武器にしちゃえばいいんだよ。
