ヒモ男を養う女性を、外から見ていると
相談所に来る女性の中に、一定の割合で、過去にヒモ男と付き合っていた、今もそういう相手がいる、という女性がいた。婚活を始めたからといって、過去の恋愛パターンがすぐに変わるわけじゃない。話を聞いていると、なんでそんな相手に、と思うことが何度もあった。
でも7年間で気づいたのは、ヒモ男に貢ぐ女性を不思議な人間として見ている限り、何も見えてこないということだ。貢ぐ側の女性には、貢ぐ側の内側の論理がある。今回はその内側の話。
ヒモ男の定義を先に整理しておく
ヒモ男という言葉は、使う人によって指す範囲が違う。仕事をしていない男性全員がヒモではないし、お金を受け取っている男性が全員ヒモでもない。
ここで使うヒモ男は、働く意志が乏しく、女性からの経済的なサポートに依存することを当然のものとして受け取り続けている男性、とする。一時的に困っているのではなく、その状態が続いている場合だ。
ヒモ男に貢ぐ女性の特徴、表面に出やすいもの
世話好き、面倒見がいい、が行きすぎている
ヒモ男と長期間付き合う女性に、まず共通してよく出るのがこの特徴だ。人の世話をすることへの抵抗感が薄く、むしろそこに自分の存在意義を見出している場合がある。
松岡さんという36歳の女性会員は看護師で、仕事でも誰かの面倒を見ることが自然な環境にいた。相談所に来る前の交際相手が、典型的なヒモ男だったという話をしてくれた。家賃を払い、食費を出し、相手の携帯代まで払っていたと言っていた。
それがなぜ続いたかを聞くと、彼が私を必要としてくれていたから、という言葉が出てきた。必要とされることが、愛されることと同義になっていた。
これがヒモ男との関係が続く構造の、かなり核心に近い部分だと思っている。
自己肯定感が低く、見捨てることへの恐怖が強い
これは表に出にくいけど、根っこにあることが多い。自己肯定感が低い女性は、相手に頼られることで自分の価値を確認しようとする。お金を出すことで、相手が離れないようにしようとする。貢ぐことが、関係を繋ぎ止めるための無意識のコストになっている。
見捨てたら可哀想、という感覚も強く出る。働けない事情があるのかもしれない、私が支えないとこの人はどうなるんだろう、という思考が、関係から抜け出すことへのブレーキになる。
松岡さんも、別れようと思ったことは何度もあったと言っていた。でもそのたびに、彼が私なしでは生きていけないと思って踏み止まった、と。この感覚が、年単位で続いていた。
恋愛と親子関係が混線している
現場で感じてきたことで、これが一番複雑な話だ。ヒモ男を養い続ける女性の一部に、恋愛しているつもりが実質的に子育てをしている状態になっているケースがある。
相手に対して怒りより先に心配が来る、叱るより先にフォローしたくなる、ダメなところも含めて守ってあげたい。これは愛情の一形態だけど、対等な恋愛じゃない。親が子に向ける感情に近い構造になっている。
面白いことに、こういう関係になりやすい女性の幼少期を聞くと、自分が親の面倒を見てきたという経験を持っている場合が少なくなかった。親が精神的に不安定だった、経済的に苦しい家庭で自分が支える役割を担っていた、など。幼い頃から誰かを支えることが当たり前になっていて、それが恋愛に持ち込まれていた。
ヒモ男に貢ぐ女性の特徴、内側にある心理
お金を出すことで罪悪感を処理している
これは少し意外に聞こえるかもしれない。貢ぐ女性の中に、罪悪感から貢いでいるケースがある。稼いでいる自分が稼いでいない相手と一緒にいることへの後ろめたさ、相手より恵まれていることへの申し訳なさ。それをお金で埋めようとしている。
中井さんという32歳の女性会員は外資系企業でバリバリ働いていて、収入もかなり高かった。交際相手はフリーターで収入が不安定だったと言っていた。私の方が稼いでいるから出すのは当然、という話をしていたけど、話を聞いていくと当然というより、自分が稼いでいることへの後ろめたさを感じていたことが見えてきた。罪悪感ベースの貢ぎは、止まりにくい。お金を出すたびに罪悪感が一時的に和らぐから、また出す。
ヒモ男の甘え方が、心地よかった
ここを書かないと、片手落ちになる。ヒモ男は往々にして、甘え方が上手い。必要としている、あなただけが頼りだ、という言葉や態度を、そのまま女性に向けてくる。これが刺さる女性には、本当に刺さる。
ぞわっとするくらい依存してくる相手に、逆に強く引きつけられる感覚。これはヤンデレの話と少し重なるけど、必要とされている実感が愛されている実感の代わりになってしまっている状態だ。
甘えられると、嬉しいという感情が先に来て、これは依存だという判断が後回しになる。感情が判断を追い越している。
別れた後の孤独が怖い
関係から抜け出せないもう一つの理由として、別れた後の自分の孤独への恐怖がある。今の状況はしんどいけど、一人になるよりマシ、という計算が無意識に働いている。
これは女性に限った話じゃないけど、ヒモ男との関係に特有の重さがある。お金と時間を注ぎ込んできた分、ここで終わらせたらその全部が無駄になる、という感覚だ。サンクコスト、過去に費やしたものを取り返せないことへの執着が、関係を引き延ばさせる。
松岡さんが最終的に別れを決断したきっかけは、友人に「あなた、どんどん疲れていってる」と言われたことだったらしい。自分では気づいていなかった。外から見えていたものが、本人には見えていなかった。
ヒモ男が出てくる関係の構造
最初からヒモだったわけじゃない場合が多い
ヒモ男との関係は、最初からそうだったわけじゃない場合がほとんどだ。最初は普通の交際で、少しずつ役割分担が固定されていって、気づいたらその状態が当たり前になっていた、というパターンが多かった。
最初に一度お金を出した、困っているときに助けた、そのときの相手の反応が嬉しかった。その繰り返しの中で、出す側と受け取る側の構造が強化されていく。ある時点でそれが崩れなくなる。
段階的に進む変化は気づきにくい。これがヒモ男との関係の厄介な部分だ。
ヒモ男は相手を選んでいる
これは少し意地悪な見方かもしれないけど、ヒモ男は無意識に、貢いでくれる女性を選んでいる。面倒見が良さそうな女性、断れなそうな女性、寂しさを抱えている女性に近づく傾向がある。
悪意を持って計算している男性ばかりじゃない。でも結果として、支えてくれそうな相手に引き寄せられていく。相性というより、搾取の構造としての相性だ。
貢いでくれた女性が別れを告げると、同じように支えてくれる別の女性の元に移っていくケースを、何件か見ている。
ヒモ男との関係から抜け出すために
貢ぐことをやめたとき、何が起きるか
ヒモ男との関係で、貢ぐことをやめると何が起きるか。これは試してみた女性の話を聞いてきた経験から言うと、二パターンに分かれる。
一つは、相手が本気で変わろうとするパターン。貢いでもらえなくなって初めて、自分の状況に向き合い始める男性が、まれにいる。まれに、だ。
もう一つは、態度が変わるか、去っていくパターン。貢ぎが止まった途端に関係の温度が下がる。これが、その関係の正体を教えてくれる。貢ぎが止まっても続く関係なら本物で、止まったら変わる関係なら、貢ぎの上に成り立っていた関係だったということだ。
中井さんは、ある月からお金を出すのをやめた。相手の反応を確認したかったと言っていた。結果は一週間で答えが出た。
パターンを変えるには、パターンに気づくことが先だ
ヒモ男との関係を繰り返す女性に共通しているのは、自分がそのパターンを持っていることへの自覚が薄いことだ。一人のヒモ男と別れても、次に似たような相手を選んでしまう。
松岡さんも、最初のヒモ男と別れた後に、別の形のヒモ男と付き合った経験があると話してくれた。外見も職業も違う、でも構造が同じ相手だった、と気づいたのは相談所に来てからだと言っていた。
相手を変えるより先に、自分が何に引き寄せられているかを見ること。それが最初の一歩だと思っている。必要とされることと、一緒にいたいと思われること。この違いに気づいた瞬間から、選ぶ相手が変わっていくよ。
