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緑色が好きな人の性格は穏やかより頑固!好きな理由に恋愛傾向が出る

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押し入れの奥をガサゴソやっていたら、相談所時代の手帳が出てきた。
名前は一文字も書かない自分用のメモで、年齢と職業と一言だけ。
余白には、その人が好きだと答えた色の色鉛筆で、小さな丸をつけてある。
面談のたびに好きな色を聞くのが、七年間の私の癖だった。
七年分の手帳に、緑の丸はおおよそ四十個。
この質問には、緊張で固まった人の肩をゆるめる効き目がある。

緑色が好きな人の性格、と検索すると、画面はやさしい言葉で埋まる。
穏やか、平和主義、協調性、押しに弱い癒し系。
ところが緑の丸がついたページを読み返すと、そういう人が驚くほど少ない。
いたのは、穏やかな顔をした頑固者ばかりである。

自分が緑派だから調べた人も、気になる誰かが緑好きな人もいると思う。
色だけ眺めても、性格はたいして読めない。
本性が出るのは、なぜ緑なのか、の答えのほう。

目次

緑色が好きな人の性格は、穏やかどころか静かな頑固者だった

緑と答える人は、なぜか一秒も迷わなかった

色の質問をすると、たいていの人は少し考える。
うーん、青かな、白も好きだけど、と天井を見ながら迷う人が大半だった。
赤の人は理由まで熱く語り出し、白の人は、話がいつしか服の方向へそれていく。
緑の人だけは、ここで様子が違う。
質問が終わるか終わらないかのうちに、緑です、と即答する。
しかも、深い緑とか若草色とか、色味まで指定してくるときたもんだ!
(この人たち、自分の好みに迷いがないな)
その予感は、そのあとの婚活で何度も当たることになる。

緑が好きな男性は、争わないのに一歩も引かない

三十四歳、市役所勤めの男性会員の欄には、緑の丸と短いメモ。
日曜の朝は畑。
市民農園を借りていて、毎週欠かさず土いじりに出かける人だった。

初対面の評判は上々で、どの女性からも優しい、話しやすいと好かれた。
それが交際に進むと、相手からは決まって同じ相談が来る。
日曜の朝のブランチに誘っても、毎回笑顔で断られるんです、と。
二人目のお相手は、少しくらい私に合わせてよ、と泣いて去っていった。

せめて月に一度くらい空けてみたら、と私からも持ちかけてみた。
その時間は畑なんです、と穏やかに言うだけ。
声を荒らげることは、ただの一度もなかった。
押されて折れるどころか、何度押されても位置が変わらない。
(苔か、この人は)

でも結局、彼が結婚したのは、畑に長靴で現れた三人目の女性だった。
軍手まで自前で持ってきたと聞いて、思わず手帳に花丸をつけた。
日曜は私も朝が早いんです、と彼女は笑っていたそうだ。
正直言って、緑好きの男性に押しの弱さを期待すると痛い目を見る。
ケンカをしないのは、気が弱いからじゃない。
最初から陣地を譲る気がないから、戦う必要がないだけ。

緑が好きな女性は、笑顔のまま非常口を確保している

女性会員の緑のページにも、似たメモが並んでいた。
二十九歳、図書館勤務、帰りの時間を必ず先に決める。

デートは断らないし、店選びにも文句を言わない。
そのかわり、九時には帰りますね、と最初に言ってから席に着く。
居酒屋では入口に近い端の席、食事会ではトイレに立ちやすい通路側。
押しの強い男性に、しつこく二軒目へ誘われた夜があった。
彼女は言い返しもせず、その夜のうちに私へ交際終了の連絡をよこしたのである。

ビルの非常口に光っている、あの緑のランプを思い浮かべてみて。
緑好きの女性は、どんなに楽しそうでも、あの明かりの位置を先に確かめている。
平和主義に見えるのは、争いになる前に出口から抜けてしまうから。
押しに弱いと思って近づいた男ほど、気づけば一人で取り残されている(笑)

緑の理由を尋ねたら、図書館の窓から見える桜の葉っぱ、と返ってきた。
花の季節より、葉の季節のほうが好きな人。
彼女が選んだのは、初デートで、何時までなら平気ですか、と聞いてくれた人。

頑固だの逃げ足だの散々言ったけど、悪口のつもりはない。
流行りにも他人の声にも流されない芯は、長い結婚生活でいちばん頼りになる。

好きな色と性格の関係は、思っているよりはるかに薄い

色の好みを左右するのは、その色にまつわる思い出

色の好みがどこから来るのか、心理学にはわりと有名な説がある。
人は、好きなモノを連想させる色を好きになり、嫌なモノを思わせる色を嫌う。
青い空やきれいな水が好きな人が多いから、青は好かれやすい、という理屈だ。
くすんだ黄土色が嫌われがちなのも、傷んだ食べ物なんかを連想するかららしい。
自分の大学の色に愛着がわく、なんて調査まであるそうだ。

これを知ったとき、真っ先に浮かんだのはメロンソーダ。
子どもの頃、祖父に連れられて入った喫茶店で、毎回頼んでいた緑の飲みもの。
ストローを刺すと、グラスの底からシュワシュワと泡がのぼってくる。
私が今でも、あの人工的な緑だけは妙に好きなのは、たぶんあの席のせい。
性格とは、何の関係もない。

好きな色は緑、理由は実家の軽トラ、と答えた男性会員もいた。
お父さんの軽トラの助手席が、幼い頃の特等席だったらしい。
色の話を聞いたつもりが、家族思いな人柄まで一緒に出てきたわけだ。
緑好きの胸の中にも、きっとそんな思い出が沈んでいる。
色の奥にあるその記憶のほうが、よっぽど雄弁なのだ。

深緑、黄緑、カーキの違いは、暮らしぶりに表れる

メモを色味ごとに分けてみると、別の面白さが見えてくる。
深い緑を挙げた人は、同じ美容院に十年通っていたり、実家の店を継いでいたり。
黄緑の人は、転職したてや引っ越したてで、何かを始めたばかりの時期が多かった。
ミントグリーンの人は、部屋も言葉づかいも、よく片づいている。
抹茶色を推す人は、話してみるとたいてい甘党。
青緑やエメラルドの人は、なぜか海辺の町の出身ばかり。

傑作なのは、カーキやオリーブの人。
さっきの説でいえば嫌われやすい側の色なのに、本人たちは大好き。
休日の話を振ると、テントだの焚き火台だの、キャンプ道具の話が止まらない。
あの色の連想先が、台所の隅ではなく焚き火の夜なのだ。

どれも性格というより、その人の暮らしの手ざわり。
占いほど当てにはならないけど、会話の糸口には十分使える。

急に緑が好きになったなら、心の疲れを疑ったほうがいい

相談所を辞める前の一年、私の机だけ森になっていた

実は、私自身が緑好きだった時期がある。
退職前の、最後の一年だけ。

緑のボールペン、緑のタンブラー、机の端には多肉植物が三鉢。
気づけばデスクマットまで緑に染まって、同僚から森と呼ばれていた(泣)
まさか自分が、職場で森扱いされる日が来るとは…。
当時の私は、癒し系とは真逆の、限界の一歩手前。
土日も面談、平日は保育園のお迎えに走って、寝かしつけのあとは交際トラブルの電話。
帰りの電車では、つり革を握ったまま寝ていた。
はぁ…。今思い出しても肩が凝る。

面談に来た会員さんに、先生の机は森みたいですね、と言われた日のこと。
笑って返しながら、自分がどれだけ疲れているかに初めて気づいた。
あの緑は、性格じゃなくて悲鳴だったんだろう。
体は休みたがっているのに、頭が許してくれない。
だから、せめて目だけでも森へ逃がしていた気がする。
退職して半年たった頃、机の緑はいつの間にか引き出しの奥に消えていた。
多肉植物は、三鉢とも枯らしたけどね。
辞めた翌月、久しぶりに真っ赤なマニキュアを買ったのを覚えている。

好きな色が変わる時期は、人生の曲がり角と重なる

手帳を見返して、もう一つ気づいたことがある。
入会の日と退会の日で、好きな色の答えが変わる人が、意外と多い。
黒と答えて入会した四十歳の男性が、成婚退会の日には若草色と言って照れていた。
失恋の直後に入会した女性は、半年ほど緑の丸が続いて、ある日突然オレンジに変わった。
その月から、彼女へのお見合いの申し込みが一気に増えたのは、たぶん偶然じゃない。
緑から暖かい色へ移る人の多くは、恋が動き出す手前にいた。

好きな色なんて、履歴書みたいに一生ついて回るラベルとは違う。
今の自分に足りないものを、目が勝手に探しにいった結果。
観葉植物の売り場で足が止まる、緑の服ばかり増えた、森の動画を眺めて夜ふかしする。
思い当たるなら、性格が変わったわけじゃない。
どこかで、休みを求めている合図と見ていい。
そういう時期は、緑の雑貨を買い足すより、週末の午前中を一度空っぽにするほうが効く。
あの畑の彼が週末の朝を死守していた理由も、今ならよくわかる。

緑色が好きな人と恋愛するなら、急かさず庭に踏み込まない

怒らない緑好きは、不満を言葉より距離で知らせてくる

緑好きと付き合って、ケンカになったことがないと自慢する人がいる。
残念ながら、それは平和の証拠とは限らない。
緑好きの不満は、怒鳴り声より、返信の遅れや会う回数の減り方で届くから。
既読から返事までの時間がのびる、スタンプだけの返事が増える。
次の約束の日取りを、向こうから出してこなくなる。
例の非常口のランプが、そろそろ点灯しているころ…。

そのサインに気づいても、問い詰めるのはやめておく。
詰め寄られた緑好きは、ランプに向かって一直線に歩き出すから。
少し間を置いて、最近どう、と短く聞くくらいで足りる。

急かさないこと、決断を迫らないこと、相手の日曜の朝を奪わないこと。
緑好きにとって、自分のペースは庭みたいなもの。
柵の外から眺めるぶんには歓迎されても、土足で入れば黙って門を閉められる。
緑好きの本人にも、一つだけお願いがある。
非常口に向かう前に、一回だけ、嫌だったことを言葉にしてみてほしい。

緑好きと相性がいいのは、同じ緑より待てる人

手帳の中で、緑好きと長く続いたカップルには共通点がある。
相手も緑好きかといえば、そうでもない。
長靴で畑に来た彼女も、図書館の彼女の夫も、赤やオレンジが好きな人だった。
似ていたのは色より、相手のペースを先に聞く癖のほう。
緑好きの庭の広さを、踏み込む前に尋ねられる人。
それだけで、緑好きは驚くほど早く門を開けてくれる。

逆に、緑好き同士のカップルは揉めないかわりに、何も決まらない。
新婚旅行の行き先で三か月悩み続けた二人を、私は知っている。
そんな二人には、決める係を月替わりの当番制にしてもらった。

仲良くなりたいなら、なんで緑なのかを聞けばいい

うちの義母は、筋金入りの緑好きだ。
カーディガンも湯のみもエプロンも、見事に全部緑!
穏やかでよく笑う人なのに、洗濯物の干し方だけは頑として譲らない。
タオルの端をそろえずに干したら、黙って干し直されて、ムッとしたものだ。

ある年のお盆、思い切って聞いてみた。
お義母さん、なんでそんなに緑なんですか、と。
静岡の茶畑の家で育ったのよ、と義母は笑った。
摘み取りの季節の、あの一面の緑が忘れられないんだって。
茶の木は、一度植えたら何十年も同じ畑から動かないらしい。
(そりゃ、干し方も動かないはずだ)

あの時の義母の笑い方で、いろんなことに合点がいった。
緑が好きな人の性格をつかむなら、色の名前より、その理由を聞いてみること。
理由の中に、その人が抱えてきた景色がまるごと入っている。
あの日から私は、義母のやり方でタオルを干すようになった。
毎年五月、静岡の親戚から届く新茶を、義母は必ず私にもいれてくれる。

手帳を押し入れに戻す前に、裏表紙の内側に自分の分を書き足した。
好きな色、今は緑。
同じ緑でも、あの机の頃とは理由がまるで違う。
ベランダのポトスが、今朝また一枚、葉を増やしていたから(笑)

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