デートの翌朝、私の携帯は鳴っていました
相談所で働いていた頃、日曜の夜から月曜の朝にかけて、男性会員からの報告が一気に届く時間帯があった。
すごく楽しかったです。
また会いたいと思っています。
ぜひ次も、と伝えてください。
その同じ時間に、女性会員からは別の連絡が来る。
彼から何も来ないんですけど、脈なしですよね。
同じ日の、同じデートの話です。
あなたが確かめたいのは、脈の有無じゃない
この状況で人が本当に怖がっているのは、振られることじゃありません。
あの日、楽しいと感じた自分の感覚が、まるごと間違いだったのかもしれない。そっちです。
笑い声のタイミングも、話が途切れなかったことも、店を出るときの空気も。全部こちらの勘違いだったのかと思うと、足元がぐらっとする。恋愛の失敗より、自分の判断力が壊れることのほうがきついんですよ。
黙っている男の頭にあるのは、あなたじゃなく用件
連絡しない理由を、気持ちの温度だと訳すから話がこじれる。
実際に止まっているのは、もっと手前の部分です。
送る理由が見つからないと、男は動けない
女性は、用がなくても送れます。今日こんなことがあった、で一通が成立する。
男の多くは、それができない。
理由のない連絡は迷惑だと本気で思ってる人が、びっくりするほど多いんです。だから何か口実を探す。次の店、次の日程、何かのお知らせ。見つかるまで止まる。その待機が、そのまま沈黙になる。
気持ちが薄いんじゃない。手順を踏まないと動けないだけ。じりじりしている側からすれば、どっちでも同じなんですけどね。
三日黙っていた男の、間抜けな理由
三十二歳の男性会員がいました。二回目のデートのあと、三日間、女性に何も送っていなかった。
女性側からは当然のように不安の連絡が入る。私は本人に電話しました。
何してたんですか、と聞いたら、こう答えたんです。
次に行く店を探してました、と。
三日間、ずっと店の口コミを読み比べていたそうです。いい店が決まらないと誘う資格がない、と思い込んでいた。
そのあいだ相手がどんな気持ちで待ってるか、想像できないのか…
私は電話口でかなり強めに言いました。今すぐ、店が決まってなくてもいいから一行送ってください、と。
彼は送りました。女性はその一行で復活した。あの交際、翌年に成婚してます。
男の沈黙には、こちらが想像するような重い意味がない場合が本当に多い。むしろ、しょうもない理由のほうが多数派でした。
当日にお礼の長文を送ってくる男のほうを、私は疑ってた
帰宅直後に丁寧なお礼が届くと、女性は安心するでしょ。あの人、ちゃんとしてる、と。
現場で追跡していた実感としては、逆でした。
文面が完成されている人は、何度も送ってる
その日の会話が一行も入っていないお礼。誰にでも出せる文章。
あれを即座に打てるのは、型を持っているからです。つまり、繰り返してきた回数が多い。
デートの手順が体に入っている人ほど、事務処理としてこなす。返信も早い。予定調整も上手。なのに、半年後に残っている率は低かった。
逆に、二日空けて、たった二行しか送れなかった男。その二行にあの日の話が混じっていたら、そっちのほうが本気でした。文章が下手なほど信用できる、なんて書きたくないけど、傾向としてはそうだった。
早さと、続くかどうかは別の話
連絡の速度で相手を評価する癖、いったん捨てたほうがいい。
見るべきは、その文にあなたと過ごした時間の痕跡があるかどうか。
昨日のあの店の話。あなたが言った冗談。転んだ話。
一個でも入っていれば、間違いなく思い出しながら打ってます。
合否が決まったのは、デート中じゃなく改札の前
ここがいちばん伝えたい部分。
男が持ち帰る記憶は、デート全体じゃありません。別れ際の三十秒だけです。
丁寧にお辞儀した女性が、脈なし判定されていた
何度も見た場面を書きます。
女性会員は、店を出て駅まで歩いて、改札の前できちんと向き直ってお辞儀をする。今日はありがとうございました、と。育ちのいい人ほどそうします。
その日の男性会員の報告が、これでした。
きれいに終わらされた感じがした、脈なしですよね、と。
女性側に確認すると、楽しかったと言うんです。次も会いたいと。
それなのに、男は別れ際の礼儀正しさだけを見て帰っていた。
かちっとした挨拶が、線を引かれたサインに見えるらしい。
理不尽です。本当に。
でも、そこで判定して帰る生き物なので、こちらが対策するしかない。
効くのは言葉の中身じゃなく、去り際の温度
会員に教えていたのは、ひとつだけ。
改札を通る前に、半歩だけ戻ること。
その状態で、楽しかった、と崩した言い方で言う。丁寧語をひとつ落とすだけでいい。
それから手を振って歩き出す。
これを実行した人の、翌日の連絡到着率が明らかに変わりました。数字を取っていたわけじゃないので断定はしないけど、体感でははっきり違った。
男は、最後の温度で自分の立ち位置を決めて帰ります。楽しかった三時間より、最後の三十秒が上書きしてしまう。覚えておいて損はない。
自分から送るのはいい。ただし、お礼を書かないで
待てないなら送っていい、というのが私の立場です。ただし文面には条件がある。
ありがとうございましたは、関係を締める文です
あの一文、実は終了の合図として機能します。
仕事でも、買い物でも、そうでしょ。取引が完了したときに出てくる言葉なので。
送った本人は誠実にやってるつもり。受け取った男は、区切りをつけられたと感じる。だから返信が、こちらこそ、の一往復で終わる。あれで詰んだ交際を何十件も見てきました。
書くなら、感想。
あの店のデザート、まだ味を覚えてる。
これだけで返信率が違います。感想には続きがあるけど、お礼には続きがないから。
疑問符を入れた瞬間、業務連絡になる
今週忙しい?
また会えますか?
質問は、相手に処理義務を発生させます。返信しなきゃ、という重さが乗る。重くなったものは後回しにされて、後回しにされたものは沈む。
答えを求めないまま投げる。それが、いちばん返ってくる型でした。
何日待つか、という数え方をやめる
三日待て、一週間は様子見、そういう話に意味はありません。職業も生活も人によって違うので。
日数より、次の予定が入っているかどうか
別れ際に次の約束が決まっていたなら、連絡が一週間なくても関係は生きてる。予定というレールがあるから。
何も決めずに別れて、三日空いたなら、それは黄色信号です。日数じゃなく、空白の種類を見て。
あと、ひとつだけ線を引いておきます。
こちらから一通送って、それにも二日以上反応がない場合。もう待たなくていい。追撃も要りません。
沈黙が二回続いたら、それが返事です。
待ちましょうと言った私が、交際をひとつ壊した
自分の失敗を書きます。
アドバイザーになって二年目くらい。女性会員から、連絡が来なくて不安だと相談を受けました。
私は定番の助言をした。男性はマメじゃない人も多いので、もう少し待ちましょう、と。
彼女は待ちました。素直な人だったので。
十日後、彼女から交際終了の申し出が届きました。
その二日後に、男性側からも終了の連絡が来た。理由の欄に書いてあったのは、脈がないと思ったから、でした。
どちらも相手を気に入っていた。私の一言が、二人分の十日を無駄にしたんですよ。
待ちましょう、って、なんて無責任な言葉なんだろう…
あの日から、待つことを勧めるのをやめました。動いて外したほうが、待って腐らせるより百倍いい。
私も昔、下書きを七個作りました
最後に、恥ずかしい話を。
二十代半ば、気になっていた相手からのデート後の連絡が来なかった。
私はメモ帳に文案を七個書いた。七個です。友達に見せて添削までしてもらった。真剣に。今思うと笑える(笑)
結局、どれも送らなかった。
完璧な文面が作れなかったから。
そのまま、ぱたっと終わりました。相手が嫌いになったわけでも、私が嫌われたわけでもない。誰も何もしなかったから、ただ消えた。
今でも思うんです。どれでもよかった、と。文面の質なんて、届いた側は気にしてなかったはずなので。
