自分の飲み物を勧める男性心理。間接キスなど考えていない
これ、うまいから飲んでみて。
グラスがこっちへ滑ってくる。ストローがついている。一瞬、時間が止まる。
飲む? 飲まない? 拭く? 拭いたら失礼? そもそも今、間接キスって単語が頭に浮かんだ私、中学生か
結婚相談所で7年、お見合いと交際の細かい報告を延々と聞いてきた立場から言います。あの場面、男性側は九割がた何も考えていません。
差し出されているのは、飲み物じゃない
彼が共有したいのは、自分の選択の正しさ
男性が飲み物を勧めるとき、頭の中にあるのはだいたいこれです。
自分が選んだものが正解だったので、それを確認したい。
店で三分迷って選んだ。運ばれてきた。飲んだ。うまい。ここで発生するのが、選択の成功を誰かに認めてほしいという気持ち。感想が返ってこないと、成功が確定しないんですよ。
つまり差し出しているのは液体じゃなくて、採点用紙です。
だから、うわ、おいしい、と言われた瞬間の彼の顔を見てください。妙に嬉しそうでしょ。あれは距離が縮まって喜んでいるんじゃなくて、自分の判断が承認されて喜んでいる。
男って、そういうところが本当に単純です。
あなたのグラスの中身には興味がない場合が多い
判定に使えるものを先に置いておきます。交換になったかどうか。
自分のを勧めるけれど、あなたのを飲みたがらない人。この場合、動機は承認です。自分の選択を見せたいだけで、あなたが何を選んだかには関心が向いていない。
逆に、じゃあこっちも飲んでみて、と自然に交換が起きる人。ここには相手への興味が入っています。
差が出るのは一往復目じゃなくて二往復目。ここ、見落としている人が多い。
お見合いの報告でこの構図に気づいてから、私は会員さんに聞くようになりました。彼、あなたの飲み物には興味を示しましたか、と。示さなかったケース、交際の伸びが悪かったです。露骨に。
間接キスは、たぶん彼の脳内に存在しない
意識しているのはこちら側だけ、という悲しさ
はっきり書きます。あの瞬間、間接キスという単語が浮かんでいるのは、たいてい女性側だけ。
男性会員に確認したことがあるんですよ。何人にも。飲み物を勧めたとき、間接キスを意識しましたか、と。
返ってきた反応が、ほぼ全員、きょとん。
一人だけ、あ、と声を上げた人がいました。今、言われて初めて気づきました、と。四十代です。四十代! 何年生きてるんですか(笑)。
彼らは本当に、うまいから共有したい、しか考えていない。ここに深読みを重ねると、こちらだけが疲れます。
意識してしまった自分を恥じる必要もありません。むしろ、意識するほうが人間として真っ当な反応ですよ。鈍いのは向こうです。
ストローを二本もらってきた男性会員
交際二か月の男性会員がいました。デートの報告を、こちらが聞いてもいないのに事細かに送ってくる人。
ある日の報告に、こう書いてありました。自分のドリンクを勧めるとき、店員さんにストローをもう一本もらいました、と。
理由を聞いたら、彼女が飲みにくいと思ったので、だそうです。それだけ!
配慮としては満点でしょ。ただ、女性側の報告を読んだら、こう書かれていました。ストローを二本にされて、ちょっと壁を感じました、と。
どっちの気持ちも分かるから、面談で笑いをこらえるのが大変でした。
善意と受け取り方は、こんなにずれます。深読みしても意味がないというのは、こういうことです。
ただし、明確な例外がある
差し出す瞬間、あなたの目を見ている人
九割は何も考えていない。残りの一割の話をします。
見分けは視線です。
無自覚な人は、グラスを見ています。差し出しながら、自分の飲み物のほうを見ている。感想がほしいので、当然そうなる。
意図がある人は、あなたの目を見ています。差し出した瞬間、こちらの反応を確認しにきている。飲むかどうか、迷うかどうか、頬が動くかどうか。
この視線の差、体感で分かります。ぞわっとするほうが後者。
さらに言うと、意図がある人は場所を選びます。二軒目、席が近い店、照明が暗い場所。一軒目の明るい居酒屋でこれをやる人に、たいてい計算はありません。
断ったときの一秒で、全部出る
判定装置は断ってみる。それだけです。
あ、私いま口紅濃いから、でいい。ごめん、猫舌で、でもいい。理由は何でもいいんですよ。
何も考えていない人は、あ、そうか、と一瞬で終わります。飲み物を引っ込めて、話題が次に行く。傷ついた顔すらしない。関心が飲み物の感想にあるので、断られても大したことじゃないんです。
意図がある人は、ここで表情が動きます。ほんの少し止まる。あるいは、いいじゃん、とか、気にしないよ、と押してくる。
押してきた時点で、確定です。あなたの躊躇を、越えるべき障害物として扱っているので。
一度でもこれをやる人は、この先も同じことをします。飲み物で済んでいるうちに分かって、むしろ良かったと思うことにしましょう。
拒否するのは失礼じゃない。現場で何度も言いました
空気を壊すより、境界線を先に引くほうが安い
断ると場が冷える。せっかくの好意を無下にできない。この相談、めちゃくちゃ多かった。
毎回、同じことを答えていました。今日の三十秒の気まずさと、三か月後のしんどさ。どっちが安いですか、と。
最初に一度だけ線を引いておくと、その後がものすごく楽になります。この人はこういうところで線を引く人だ、と相手が学習するので。
逆に、嫌だと思いながら受け入れた場合。相手はそれを合意として記録します。次はもう少し先まで来る。悪意がなくてもそうなる。
断る技術より、断っても関係が壊れない相手かどうかを見る技術のほうが要ります。壊れるなら、それはもう情報でしょ。
三十歳の会員が、初めて断った日
30歳の女性会員がいました。人に合わせすぎる方で、嫌なことを嫌と言えない。
交際相手からグラスを差し出されて、毎回飲んでいた。でも面談では、実は苦手なんです、と言う。
飲まないでいいですよ、と伝えたら、彼女は驚いていました。断っていいんですか、と。いいに決まってるでしょ!
翌週、実行したそうです。ごめんなさい、私こういうの苦手で、と。
彼の反応が、あ、ごめん、気づかなくて、だった。それだけ。何事もなく話は続いたそうです。
彼女、面談で泣いていました。ずっと我慢していたのが馬鹿らしくなって、と言って。
二人はその後成婚しました。あの日の一言が効いたと、私は勝手に思っています。
勧めてこない男性のほうが、本気かもしれない
慎重な人は、飲み物ひとつでも越えない
一度も飲み物を勧めてこない。触れない。距離を詰めてこない。これで、脈がないと落ち込む人がいます。
現場の実感では、逆のことがよくありました。
真剣に考えている男性ほど、慎重になります。嫌われたくないので、一線を越えることに極端に臆病になる。ストローの共有ですら、失礼にあたるかもしれないと本気で悩んでいる。
面談で、実は勧めたかったんですけど、と打ち明けられたことが何度もあります。何を悩んでるんだ、と思いつつ、その慎重さは信用できる材料でした。
気軽に差し出せる人と、差し出せない人。どちらが真剣かは、飲み物からは分かりません。
夫は今も、自分のグラスを渡してこない
最後に自分の話を。
うちの夫、付き合って十年以上経ちますが、自分の飲み物を勧めてきたことがほぼありません。
一口ちょうだいと私が言うと、渡してはくれる。渋々。明らかに渋々(笑)。
先日、なんでそんなに嫌そうなの、と聞いたら、いや、減るから、と言われました。
減るから!
間接キスがどうとか、距離感がどうとか、こちらが何年も考えていた話は、彼の中に一切存在していなかった。彼が守っていたのは自分の飲み物の量です。それだけ。
ずっこけましたけど、なんだか妙に納得もしました。
