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LINEの返信に困ったときの気の利いた文面や例文

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ぴこん、と鳴る。
開く。読む。固まる。
結婚相談所で、会員さんのスマホ画面を横からのぞき続けた人間の話をします。どう返せばいいですかという相談、服装や店選びの相談より多かったんですよ。画面を見せられて、一緒にうんうん唸る。あれも立派な業務でした。
その山の中で分かったことがある。困っているとき、足りないのは言葉じゃありません。

目次

固まる原因は、語彙じゃなくて欲張り

一通の文に、三つの仕事をさせようとしている

誘いを断りたい。でも嫌われたくない。かといって期待もさせたくない。
この三つを一通で全部やろうとするから、手が止まります。断る文は突き放しに見え、和らげると期待させ、両方入れると長文の言い訳になる。どう書いても失敗に見えるのは当然で、そもそも同時に成立しない注文なんですよ。プロの書き手でも無理。
解決は簡単です。一通に仕事はひとつ。
今日の返信は断る係。フォローは明日の朝の一通がやる。分けた瞬間、文はすっと短くなります。
迷ったら自分に聞いてください。この一通は何係なのか。答えられないうちは、何を書いても濁ります。

見せられたスクショには、共通点があった

返信に困る画面を七年分見て、気づいたことがあります。
困らせてくる文には型がある。質問が入っていない。日付が入っていない。感情だけが置いてある。もしくは、どう思う? と全部こちらに投げてくる。
つまり、素材が届いていない。
料理で言えば、皿だけ渡されて何か作ってと言われている状態。あなたの腕の問題じゃありません。冷蔵庫が空なんです。
ここを自分の能力不足だと思い込むと、延々と自分を責める夜が続きます。責める場所、たぶん間違っている。

推敲は相手に見えない。遅れだけが見える

60点を当日中に。100点を三日かけて出さない

知っておいてほしい残酷な事実があります。
あなたが四十分かけて磨いた文と、二分で打った文。受信画面の上では、ほぼ同じに見えます。行間の苦労は表示されません。
表示されるのは、既読からの経過時間だけ。
努力の九割が乗っている推敲は見えず、努力と無関係な遅延だけがくっきり見える。この非対称、理不尽でしょ。でもLINEはそういう道具です。
だから会員さんに伝えていた基準はひとつでした。60点でいいから当日中。100点は禁止。
点数を下げる勇気のほうが、語彙より効きます。

三日かけた最高の返事が、着いた場所

33歳の女性会員がいました。お見合い後の男性から、また会いたいですという趣旨の連絡が来て、彼女は三日悩んだ。
最終稿、正直言って名文でした。感じがよくて、押しつけがなくて、ユーモアまである。添削に付き合った私も、これは通ると思った。
返ってきたのは、他の方との交際が決まりまして、でした。
ずーん。
彼は三日の沈黙を、断りの作法として読んだんですよ。文面は一文字も読まれていない、実質。
彼女がスマホを見つめたまま、これ、いい文章だったんですけどね、と笑った顔。忘れられません(泣)。
点数は時間に勝てない。あの日以来、私の中で確定しています。

困らせているのは、送ってきた側かもしれない

また今度、は返信不能の文である

また今度飲もうよ。これに完璧に返せる人、地球にいません。
日付がない。質問がない。社交辞令かもしれないし、本気かもしれない。判定材料ゼロのまま、ボールだけ足元に転がされている。
返信に困ったとき、まず文面を読み直してください。困るように書かれていないか。
相手が省略した作業が、あなたの手元で発生しているだけのことは、本当に多い。誘うなら日付を書く、聞くなら範囲を絞る。それをサボった側の負債まで、あなたが利子つきで払う必要はないんですよ。

ボールは、そのまま打ち返していい

実務の話をします。曖昧な誘いには、日程を聞き返す。いいね、いつが空いてる? の一行で終わり。
重すぎる質問には、範囲を聞き返す。それって仕事の話? 私生活の話? と絞らせる。
質問に質問で返すのは失礼、という思い込みがありますけど、素材のない注文に聞き返すのは、料理人として正当な確認です。
相談所でこれを教えると、みんな最初は怖がります。で、やってみると相手が急に具体的になる。日付が出てくる。店の名前が出てくる。
会話は共同作業で、完成責任があなた一人に乗っている契約なんて、どこにも存在しません。

文字で返さない、という返信がある

感情の長文に、キーボードは道具が違う

夜中の一時に、交際相手から不安を綴った長文が届いた女性会員がいました。朝イチで電話が来て、三時間考えたけど書けません、と。
私の答えは、書かないでください、でした。
今夜、電話して。文字は感情を運ぶには器が小さすぎます。短く返せば冷たく見え、長く返せば重くなる。どう書いても二択の罠。
声なら、うん、とか、そっか、の相槌で九割が済む。実際、彼女の電話は三分で終わったそうです。三時間の下書きと、三分の通話(笑)。
返信に困ったら、返信という手段自体を疑っていい。電話、スタンプひとつ、翌日会って話す。LINEの外に出口がある場合、けっこうあります。

完璧な文面は、ホテルのフロントになる

逆の失敗も見てきました。返信が上手すぎる男性会員。
誤字ゼロ。敬語完璧。絵文字の位置まで教科書どおり。非の打ちどころがない。
交際終了の理由に、女性がこう書いてきました。フロントの方とやりとりしている気分になって、疲れました、と。
崩れのない文は、相手にも崩れを許さない圧になります。丁寧さって、実は距離の単位なんですよ。
だから磨きすぎた下書きは、送る前に少し崩すくらいでちょうどいい。変換ミスをひとつ残せとまでは言いませんけど、整いすぎた文面、あれは壁です。

私が人生で一番困ったのは、義母のLINEだった

下書き十五回。夫の審査は三秒だった

偉そうに書いてきましたが、白状します。
産後、義母から届いた一通。善意九割、チクリ一割、絶妙な配合の育児アドバイス長文。
下書き、十五回書き直しました。敬語を濃くしたり薄めたり、絵文字を入れたり抜いたり、ぐるぐる。夜の授乳を挟んで、まだ悩んでいた。
夫に画面を見せたら、読むのに三秒。出てきた審査結果が、ありがとうございます、だけでいいんじゃない、でした。
それだけ!? と食い下がった私に、夫は、母さんそんなに読んでないよ、と。
半信半疑で五文字を送信。翌朝、義母からスタンプがひとつ返ってきて、世界は平和でした。私の三時間、どこへ…。

画面の向こうでも、下書きは消されている

この話には続きがあります。
何年か経った正月、義母がぽろっと白状したんですよ。あなたにLINEするの、実はいつも緊張してた、何回も書き直してたのよ、と。
じわっと来ました。
あの夜、画面の両側で、二人の人間がそれぞれ下書きを消していた。お互いを怖がりながら、お互いに採点されると信じ込んで。
採点者なんて、最初からどこにもいなかったのに。
返信に困ったとき、思い出してほしいのはこれです。あなたを裁く審査員がいるんじゃない。向こうにも、打っては消している指がある。
どうしても書けない夜は、返信に迷って固まってました、とそのまま書いてしまうのも手です。正直さは、名文よりだいたい強いもんですよ。

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