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男性が結婚を諦める理由は年収でも出会いでもなかった

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諦めますと言って退会していった男性会員を、一人も見ていません。
一人も、です。
みんな更新の書類を出さなかっただけ。封筒が届いて、机の端に置かれて、そのまま夏になる。期限が切れて、自動的に会員じゃなくなる。それだけ。
世間で並ぶ理由は知っています。金がない、出会いがない、自由を手放したくない、婚活に疲れた。どれも間違ってはいない。ただ、あれは全部あとから貼られたラベルでした。現場で起きていたことは、もっと間抜けで、もっと切ない。

目次

諦めるという動作は、たぶん存在しない

決断の瞬間がないから、引き止める場所もない

退会の連絡が来た男性に、理由を聞くのが私の仕事でした。返ってくる言葉、ほとんど同じ。特に理由はないです。
最初はごまかされていると思っていました。三年目くらいで気づいたんですよ。あれ、本当に何もないんだ、と。
恋愛をやめる決断には場面がある。フラれた、裏切られた、限界が来た。結婚を手放すほうには、それがない。ある朝いきなり嫌になるわけでもなく、誰かに何かを言われたわけでもない。ただ、申し込みを出す指が重くなる日が増えていく。
だから待っている側は永遠に待つことになります。いつか彼が話してくれる日を。
その日は来ません。話す材料が本人の中にないので。

いつかは、と言い続けた人の賞味期限

32歳で入会した男性のプロフィール。希望欄に、三年以内には結婚したいと書いてありました。
38歳のとき、同じ文章がそのまま残っていた。一文字も直していない。六年前の三年以内が、まだそこに置かれている。
背中がぞくっとしました。
いつかという言葉、たぶん三年で腐ります。三年使い回した時点で、それは予定じゃなくて口ぐせ。本人はまだ探しているつもりでいる。周りもそう見えている。実質はもう降りている。
彼を責める気にはなれなかった。腐ったことに気づかせてくれる人が、誰も周りにいなかっただけだから。

引き金になるのは、年収じゃなくて三秒の恥ずかしさ

スマホを二回見られて、それきり戻ってこなかった人

39歳、初めてのお見合いだった男性がいました。準備は完璧。会話の練習まで自分でしていた。
当日、相手の女性がテーブルの下でスマホを二回見て、四十分で切り上げて帰った。
その後、彼から申し込みが一件も出なくなりました。電話をすると明るいんですよ。いやあ、仕事が忙しくて、なんて笑っている。半年後、更新せずに消えた。
アンケートに書かれる理由と、実際に折れた場所。全然違います。書くのは、経済的な不安とか、時間が取れないとか、格好のつく言葉。折れているのは、あの四十分。
男性は、自分が値踏みされて落ちた場面を口に出せません。恥ずかしいから。だから大きくて立派な理由に翻訳する。翻訳されたものだけが世の中に出回って、男性が結婚を諦める理由として並んでいる。

500万になったらと言った人が、700万で言ったこと

年収の話、正面から書きます。
500万になったら本気を出しますと宣言していた会員がいました。三年後、700万を超えた。私は喜んで連絡したんです。動きますよね、と。
返ってきたのが、貯金が1000万ないと相手に失礼なので。
ぽかん、ですよ。ゴールを後ろに蹴っただけじゃないか!
一方で、同じ時期に成婚した男性は年収320万でした。施設で働いている人。八か月で決まりました。何が違ったか。彼は初回のお見合いで、自分の手取り額を先に言えた。言ったあと、平気な顔でカレーの話をしていた。
金額そのものはたいして効いていません。効くのは、その数字を口に出すときに顔が歪むかどうか。歪む人は、いくら稼いでも歪みます。

諦めたと口に出す男は、まだ降りていない

宣言は、聞かれる前に着ておく防具

飲み会で、俺はもう結婚とか無理だわ、と言う男性。あれ、完全に現役です。
先に言っておけば誰にも聞かれない。かわいそうな目で見られる前に、自分から降りたことにできる。負けたんじゃなくて、出場しなかったという扱いに持ち込める。
つまり、まだ気にしている。気にしていないことに、人は防具を着ません。
彼女がいる女性には、この見立てを何度も伝えました。彼が結婚は考えてないと言ったからといって、話が終わったわけじゃない、と。むしろ喋ってくれているうちは、まだ余地がある。

本当に降りた人は、数字を言わなくなる

判別の目印を一つ置いておきます。数字です。
何歳までに、いつまでに、どのくらいの貯金で。まだ残っている人は、こういう数字がぽろぽろ出てくる。しんどそうに言っていても、出る。
降りた人の話は、全部ふわっとします。そのうちね。縁があれば。まあ流れで。時間の単位が消える。
面談していて、この変化が起きた瞬間だけは分かるようになりました。半年前まで来年の春には、と言っていた人が、縁があればと言い始める。その日から、こちらが何を提案しても通らない。

待っている側が、たぶん読み違えていること

結婚をやめたのか、式と親戚をやめたのか

彼が結婚したくないと言った。ここで多くの人が、生涯独身を選ばれたと解釈します。早い、早い。
男性が想像している結婚、中身を分解すると、指輪を選ぶ日、両家の顔合わせ、式場の見学、親戚への挨拶、名字の手続き、義実家の正月。この行列が丸ごと乗ってきます。
無理だと言っているのが行列のほうなら、話は全然変わる。
確かめ方は簡単で、式はやらない、籍だけ入れる、旅行は好きなときに行く、この形を一度置いてみる。目が動く人は、結婚を諦めていません。行事を諦めていただけ。
実際これで動いた交際、何組も見ました。彼らが降ろしていたのは荷物で、相手じゃなかった。

あなたとの結婚だけを諦めている、という可能性

ここは嫌われるのを承知で書きます。
結婚願望がない、という言葉。いちばん角が立たない断り方です。あなたとは考えられない、と言うより、はるかに楽。
見分ける材料は、生活の予定に出ます。結婚に興味がないと言っている人が、住宅ローンの話を調べている。四十までに家を持ちたいと友人に話している。転勤の希望を出している。
先の予定を持っている人が、そこにあなたを入れていないだけ。願望がないんじゃない。名簿に載っていない。
きついでしょ。私も面談で何度か言いました。言ったあと、必ず場が静まりました。それでも、三年待ってから同じことに気づくよりはましだと思っています。

諦めた男は戻ってくる。ただし、条件が凍ったまま

47歳で再入会して、20代を希望してきた人

38歳で消えた会員が、九年後に戻ってきたことがあります。
希望条件の紙を見て、言葉が出ませんでした。相手の年齢、20代後半。前回と同じ数字がそのまま書いてある。
成立の見込みを正直に伝えました。彼は最初、怒りましたね。それから黙って、しばらく天井を見て、ぼそっと言った。九年、何もしてなかったんだな、と。
ずしん、と来ました。あれは私が一番効いた瞬間だったかもしれない。
諦めることの本当の代償、孤独じゃありません。自分の見積もりが止まることです。年齢だけが進んで、要望が三十代のまま冷凍される。戻ってきたときに、その差が一気に請求される。
一年ごとに希望を書き直していれば、こんな痛い思いはしなくて済んだのに。

夫にも、もういいやと言っていた時期があった

うちの夫、33の頃に、結婚はもういいと言っていた時期があります。
理由を聞いたことがある。返ってきたのは、めんどくさい、の五文字だけ。恋愛で傷ついたわけでも、金で悩んでいたわけでもない。本当に何もなかった。
何が変わったのかも聞きました。友達の子どもに、おじちゃん、と呼ばれたから、だそうです。
それだけ!(笑)
やめるほうも、戻るほうも、たいした理由じゃない。三秒くらいの場面で、人はどちらにも転ぶ。立派な理由を探しているうちは、たぶんどこにも動かないと思う。
男性が結婚を諦める理由を、私は結局7年かけて集められませんでした。答えられた人が一人もいなかったので。
封筒を机に置いたまま、季節が二つ過ぎただけ。それだけの話が、ずっと続いているよ。

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