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キスの相性がいいと忘れられない理由と本当の相性の正体

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五年経っても消えないキスが、ひとつある。
相手の顔はぼやけているのに、あの数秒の感触だけ妙に鮮明で、思い出すと肩のあたりがぞわっとする。ずるい話ですよ、本当に。
これを相性という一語で片づけると、きれいにまとまりすぎる。

続いた恋のキスは、消耗品になっていく

毎日おはようのついでにするキス。あれ、誰も覚えてないでしょ。三年一緒にいた相手とのキスも、思い出そうとすると平べったくなって、記憶の底に沈んでいる。
残るのは、途中で止まった曲のほう。サビの手前でぶつっと切られたやつが、いつまでも頭の中で鳴り続ける。
つまり、忘れられないキスの共通点は質の高さじゃない。終わり方。会えなくなった、フラれた、言えないまま離れた。完成しなかったものだけが、腐らずに保存される。
残酷だと思う。あなたの脳が保管しているのは、最高のキスじゃなくて、未完成のキス。

相談所で元カレのキスの話をする人ほど、成婚が遠かった

結婚相談所で数えきれない人の交際を見てきました。お見合いは通る、交際も進む、なのに三か月で必ず自分から切る女性がいた。34歳、感じのいい方。
理由を聞くと、いつも同じ答えが返ってくる。あの人のときみたいにならないんです、と。あの人というのは八年前に別れた元彼。
彼女が戦わせていたのは、生身の男性と、記憶。勝負になるわけがない。記憶の中の元彼は歯を磨き忘れないし、口も乾かないし、髭の剃り残しもない。目の前の男性は全部ある。
彼女には申し訳ないくらい冷たいことを言いました。その元彼と今日キスしても、たぶん同じ点数は出ませんよ、と。ぽかんとされた。そのあと、少しだけ泣いた。

目次

相性の正体は、体の相性じゃなくてテンポ

息継ぎの間が合う人は、だいたい会話の間も合う

相性がいいと感じている瞬間、実際に合っているのは何か。角度でも唇の厚さでもありません。息を吸うタイミング、力の抜き方、離れる速さ。この三つ。
合わない人と何が違うかというと、待てるかどうか。相手が息を吸いたそうにしている一瞬を、待てるか。待てずに自分の予定を進めてしまうか。それだけの差でした。
そしてこれ、キスの外側でも全く同じことが起きている。話の途中で被せてくる人とは、たいてい合わない。ふわっと沈黙を置ける人とは、合う。
体の相性という言い方が誤解を招くんですよね。合っているのは体じゃなくて速度なんだから。

技術がある人ほど、相手を見ていないことがある

うまい人と相性がいい人は、別物です。ここ、めちゃくちゃ勘違いされている。
手数の多い人は、手順を持っている。順番が決まっている。二回目で気づいて、三回目で確信する。あ、この人、私を見てないな、と。
相談所時代、恋愛経験を武器みたいに語る男性会員が何人もいました。段取りは完璧。デートの流れも滑らか。なのに交際が三週間で終わる。女性側の退会理由に何が書かれていたか。すべてが用意されていて、こわかった、です。
うまさは自己完結する。相性は同期する。似ているようで、真逆の話。

不安が強い相手ほど、キスは焼き付く

次に会える保証がないほど、濃く残る

どきどきの正体を、人は取り違えます。心臓が速く打っているのは好きだから、とは限らない。怖いときも同じ反応が出るから。
別れ話の直前。長距離の改札の前。この人はもう連絡をくれないかもしれない、と思いながらするキス。あれが一番残る。当たり前です、恐怖と興奮が同じ配線を通っているんだから。
つまり、忘れられないキスの多くは、幸せの記録じゃなくて不安の記録。
胸を張って言えることじゃないけど、私はこれを自分の体で確かめました。

23歳で三年引きずった相手は、ただの連絡不精だった

当時の彼は、次いつ会うかを決めない人でした。帰り際にキスをして、じゃあまた、で終わる。またっていつだよ! と心の中で叫びながら、笑顔で手を振っていた。
毎回、これが最後かもしれないと思っていた。だからキスが強烈だった。相性がいいんだと信じていた。運命だとまで思っていました。恥ずかしい…。
転機は彼が転職して、時間ができたとき。急に毎日会えるようになった。
そうしたら、同じキスが、なんというか、ぬるくなったんですよ。ぱたっと熱が下がった。相手は何も変えていない。私も変えていない。変わったのは、失う怖さの量だけ。
あのとき理解しました。三年引きずっていたのは彼じゃなくて、彼といるときの緊張だった。

結婚相談所は成婚までキス禁止。それでも夫婦は続いている

確かめないまま結婚を決めた人たちの、その後

あまり知られていない話をします。日本の主要な結婚相談所の規約では、交際中の身体の関係が禁止されています。成婚退会するまで、原則として何もしない。キスも例外じゃない。
だから会員さんからは、しょっちゅう不安をぶつけられました。相性が分からないまま結婚を決めるなんて、危なくないですか、と。私も入社したての頃は内心そう思っていた正直に言う。
実際どうだったか。成婚退会した方から、身体の相性が悪くて別れました、という報告はほとんど来なかった。年に一件あるかどうか。
代わりに山ほど届いたのは、会話が続かない、価値観が合わない、金銭感覚がずれている、というほう。
順番が逆なんですよ。多くの人は、体が合えば会話は何とかなると思っている。現場で見た限り、逆でした。会話が合う相手とは体も合っていく。会話が合わない相手とは、体だけが先に冷える。

もうちょっとゆっくり、が言えるかどうかで決まる

相性は生まれつきじゃない。作れます。ただし条件がひとつある。言える相手であること。
歯が当たる、息が苦しい、もう少しゆっくり。この一言が恥ずかしくて出せない相手とは、一生合わないまま終わる。半年経っても同じ角度でぶつかり続ける。
夫との二回目のとき、私は言いました。歯、当たってる。彼は真顔でこう返してきた。ごめん、緊張してた。それを聞いて笑ってしまって、そこから普通に合った。
ダサいでしょ。ムードもへったくれもない。でも三十秒の会話が、三年分の相性の差を埋めることがある。
言えない関係のほうが恋愛っぽく見える。そこが罠。

忘れなくていい。上書きしようとするから戻る

消そうとした記憶ほど、濃くなって帰ってくる

新しい人で塗り替えよう、という発想。これが一番効きません。
比較しながらキスしている時点で、目の前の人は勝負に参加すらできていない。相手からすると、なんか集中してないな、が伝わる。ぐっと距離を取られて終わり。
やるなら、格下げをやめること。あれは良かった、以上、で棚に置く。否定しないから、追いかけてこなくなる。
忘れられないという状態を異常だと思わなくていい。未完成の記憶が保存されているだけなんだから、消えないのが正常です。

夫との最初のキスは、はっきり言って最悪だった

角度が合わない。鼻がぶつかる。極めつけに、彼は目を開けていた。こわい!
帰り道、本気で考えました。この人とは無理かもしれない、と。あの夜のがっかり感、まだ覚えてる(笑)。
十年経って、子どもが二人いて、今は一日一回あるかどうか。挨拶みたいなものになった。もう心臓は速くならない。
そして五年前のあの数秒は、いまだに肩のあたりに残っている。残っているだけ。それ以上のことは、もう何も起きない。
忘れられない人と、毎日隣にいられる人。別人であることのほうが、たぶん多い。そういうものですよ、人生って。

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