入会書類の希望年齢の欄に、50歳から60歳と書いてあった。
書いたのは、29歳の会員さん。
(あれ、書き間違い?)
確認すると、彼女は平然とした顔で言った。
私、枯れ専なんです。
同世代とのデートは、毎回プレゼン大会みたいで疲れるんですよね。
枯れた雰囲気の、はるか年上の男性に恋をする枯れ専の女性たちが本当に惹かれていたのは、年齢でもお金でもない。
勝ち負けから降りた男が出す、急かさない空気です。
枯れ専の意味とは?おじ専との違いもあわせて
枯れ専は、枯れた雰囲気の年上男性に惹かれる女性のこと
枯れ専は、枯れた男性専門、を縮めた言葉。
若い頃のギラギラした脂が抜けて、静かな哀愁をまとった中年以降の男性。
そういう人に惹かれる女性を指します。
相手の年齢は、おおむね50代から上。
父親と同じくらいか、それ以上離れている場合も珍しくない。
枯れたおじさんの魅力を集めた本が話題になって、広まった呼び名です。
ちょいワルおやじが流行った少しあと、と聞けば、懐かしく感じる世代もいるはず。
おじ専との違いは、残っている脂の量
似た言葉に、おじ専がある。
こっちは、渋さも色気もまだ現役のおじさんが好きなタイプ。
おじ専の相手は脂がのっていて、枯れ専の相手は脂が抜けている。
焼き魚で言えば、脂ののった秋のサバと、風に干した干物くらい違う。
さらに上のおじいちゃん世代まで広がると、ジジ専と呼ばれることもある。
呼び名は違っても、根っこは同じ。
同世代の男性にはない何かを求めている。
枯れ専は何歳から?当てはまるかどうかの目安
枯れ専に、年齢の決まりはない。
20代でも30代でも、感覚が当てはまれば立派な枯れ専です。
たとえば、同世代のLINEの勢いに、少し疲れてしまう。
白髪や目尻のしわに、色気を感じる。
休日は、にぎやかな店より、静かな喫茶店で過ごしたい。
年下の男性の武勇伝を聞くと、心が遠くへ行く。
いくつか心当たりがあるなら、あなたの中にも枯れ専の芽がある。
相手との年の差より、こういう感覚に覚えがあるかのほうが、話の芯に近い。
枯れ専の女性に多い特徴
同世代とのデートが、プレゼン大会に見えている
冒頭の彼女の言葉は、枯れ専の女性からかなりの頻度で聞いた。
同い年くらいの男性と会うと、話題は年収、仕事の実績、行ったことのある店。
お互いの持ち物を見せ合う品評会になりやすい。
評価されるのも、評価するのも、もう食傷気味。
枯れた男性は、そもそも自分を売り込んでこない。
その静けさの前だと、肩の力が抜けて、ほっこりするんだそう。
甘えたいというより、急かされたくない
枯れ専の特徴として、甘えたい願望が強い、とよく書かれている。
半分は当たり。
ただ、面談で聞いた本音は、少し違う言葉だった。
甘えたいんじゃなくて、急かされたくないんです。
次のデートはいつ、付き合うかどうか早く決めて、将来は。
若い男性ほど、悪気なく答えを急ぐ。
会って3度目で、うちの親に会ってほしい、と切り出されて逃げ出した女性もいた。
その点、枯れた人は、彼女が決めるまで、黙ってお茶を飲んで待っていられる。
その待ち方に、心を持っていかれるらしい。
恋愛で、もう燃えすぎたくない
20代で嵐みたいな恋愛を経験した人ほど、枯れ専に行き着くことがある。
32歳で入会した女性は、同い年のバンドマンと5年付き合って別れたばかりだった。
連絡が来ない夜、予告なしの別れ話、また戻ってくる彼。
その繰り返しに、心のほうが先にくたびれてしまった。
次は、凪みたいな人がいい。
彼女が選んだのは、48歳の税理士さん。
デートの翌日に、昨日は楽しかったです、と必ず一行だけ送ってくる人。
物足りないかな、と最初は思ったらしい。
半年後には、その一行がないと落ち着かない体になっていた。
ファザコンと決めつけられるのが、一番うんざり
枯れ専と言うと、決まって、ファザコンでしょ、と返される。
これ、当事者たちが一番うんざりしている反応です。
私が見てきた限り、父親との仲は、良い人も悪い人も普通の人も、人それぞれ。
父親の代わりを探している人は、思われているほど多くない。
むしろ、父親とは似ても似つかない人を選ぶ人のほうが目立った。
結局、ひとくくりにされると、好みそのものを否定された気分になる。
これは覚えておいてあげてほしい。
頼られる側を、長く続けてきた人が多い
もうひとつ、現場で気づいた共通点がある。
このタイプには、意外と長女や、職場で頼られる立場の人が多い。
家でも会社でも、誰かの面倒を見る役が長かった。
恋愛くらいは、面倒を見なくていい相手がいい。
枯れた男は、手がかからない。
自分の機嫌を自分で取れるし、彼女に何かを証明してほしいとも思っていない。
頼られることに疲れた人ほど、この手のかからなさに救われる。
枯れ専の女性が惹かれる、枯れた男性の特徴
自慢しない、張り合わない、値踏みしない
枯れた男性の魅力を、ひと言でまとめるのは難しい。
あえて挙げるなら、この三つ。
自分の話を盛らず、誰かと張り合わず、相手を値踏みもしない。
若い頃は、どれも難しかったはずのこと。
仕事の勝ち負けをひと通り経験して、恋愛でまで競う気がなくなった人。
そういう人だけが出せる空気です。
タクシーの運転手さんにも敬語、という人も多かった。
白髪も、しわも、くたびれたシャツも色気になる
見た目の好みにも、枯れ専ならではのツボがある。
白髪まじりの短髪。
笑うと、目尻にしわが寄る。
老眼鏡を額にずらして、メニューを読む仕草もたまらないらしい。
よれた麻のシャツを、気にせず着こなしている感じ。
若い男性なら、清潔感がないと言われかねないところが、彼女たちには色気に見える。
ただし、本当に不潔なのは別。
枯れと、手入れしていないのとは、似ているようでまったく違う。
年齢より、勝ち負けから降りているかどうか
だから、枯れ専の正体は、年齢じゃない。
26歳で相談に来た女性が、いい例だった。
最初の希望は50代。
でも実際に心をつかんだのは、まさかの34歳。
趣味は盆栽と銭湯めぐり。夜は10時に寝る。
若いのに、見事に枯れていた(笑)
本人いわく、年上が好きだったんじゃない。
張り合ってこない人が好きだっただけ、だそう。
枯れは年齢じゃなく、心のあり方。
そう気づくと、出会える相手の幅が一気に広がる。
枯れ専の恋愛で、気をつけたいこと
枯れて見えたのは、恋愛から遠ざかっていただけかもしれない
冒頭の29歳の彼女は、54歳の古書店の店主とお見合いをした。
白髪まじりで、物静かで、話すのはもっぱら古い映画のこと。
彼女の理想そのものの、枯れた人でした。
二人は1年後に結婚。
ここからが、予想外の展開!
結婚して半年、彼は突然ジムに通い始めた。
1年後には、フルマラソンを完走するムキムキの体に。
枯れていたわけではなく、恋愛から長く遠ざかっていただけだったらしい。
彼女は笑って言っていた。
枯れ専で選んだのに、毎週末マラソンの応援です。
(それは、あなたが水をあげたからでしょうに)
枯れた男は、ドライフラワーに似ている。
水をやると、生花に戻ってしまうことがある。
でも結局、彼女はその変化ごと、彼を好きでいる。
変わっていく彼を愛せるか、付き合う前に一度、想像しておいたほうがいい。
年の差は、10年後と20年後にもう一度やってくる
年の差の恋愛で、現場が一番慎重になるのはここ。
今の25歳差は、ただの数字に見える。
でも、彼が70歳になったとき、あなたは45歳。
子どもを望むなら、子どもの成人式の頃に、彼が何歳になっているかも計算に入れる。
介護、仕事の引退、親の年齢。
相手の親が、自分の祖父母と同世代ということもある。
相手の年金生活の始まりと、自分の子育ての真っ最中が重なることだってある。
こういう話を、交際が進んでから知るのと、最初から知っているのとでは、覚悟の固さが違う。
正直言って、年の差婚でうまくいった夫婦ほど、この話を早いうちにしていた。
それも一度じゃなく、何度も。
家族や友達に反対されたときは
年の差が大きいと、周りの反対はほぼ避けられない。
特に、相手が自分の父親と同世代なら、親の胸中は複雑です。
ここで隠すのが、一番こじれる。
年の差婚にこぎつけた会員さんたちは、たいてい早い段階で親に会わせていた。
彼のほうから、将来のお金や介護の話を、自分の言葉で説明してもらう。
親が心配しているのは、年齢そのものより、娘が苦労しないかどうか。
その不安に正面から答えてくれる相手か。
そこは、一番わかりやすい見極めにもなる。
枯れたふりをした、脂っこい男もいる
もうひとつ、ここは強めに書いておく。
枯れ専の女性は、年上の男性からすると、願ってもない存在に映る。
だから、枯れたふりで寄ってくる男性もいる。
最初は聞き役に徹して、穏やかで、何も求めない。
ところが距離が縮まった途端、急に所有欲をむき出しにしてくる。
職場の上司と部下のように、もともと力の差がある関係なら、なおさら注意。
既婚を隠しているケースも、残念ながらゼロじゃなかった。
はぁ…
本当に枯れている人は、自分から、俺は枯れてるから、とは言わない。
自己申告の枯れほど、あてにならないものはないんです。
見分けるコツは、誘いを断ったときの反応。
本当に枯れた人は、そうですか、と穏やかに引く。
ふりの人は、急に機嫌が悪くなる。
枯れ専と、お金が前提の関係は別物
年上の男性との関係というと、お金のやりとりが絡む話と混同されることがある。
でも、食事のたびに見返りを期待される関係は、恋愛とは別物です。
枯れ専が惹かれているのは、相手の財布じゃなく、相手の空気。
逆に、お金で好意を買おうとする年上の男性は、枯れているどころか、かなり脂っこい。
おごってもらうのはいい。
ただ、断れない空気が生まれたら、その時点で一度立ち止まってほしい。
枯れ専は、恥ずかしい好みじゃない
私、枯れ専なんです、は言う相手を選ぶ
気になるおじさまに、枯れ専です、と打ち明けるときは少しだけ注意。
喜ぶ人もいるけれど、もう枯れてると思われてる、と受け取る人もいる。
まだまだ現役のつもりの男性ほど、傷つきやすい(泣)
言うなら、落ち着いた人が好きなんです、くらいに言い換えるのが無難です。
関係が深まってから、実は枯れ専で、と笑いながら打ち明ける。
そのほうが、素直な賛辞として届く。
すでに付き合っている相手なら、ぜひ言葉にしてあげて。
あなたのその枯れ具合が好き、は、年を重ねた男性にとって最高の殺し文句です。
枯れた男性とは、どこで出会えるのか
枯れた男性は、自分から前に出てこない。
だから、出会いの場も少し工夫がいる。
相談所なら、希望年齢を広げるだけで、年の差を前提にした出会いが手に入る。
年上を希望する女性は、相談所では引く手あまた。
古書店、純喫茶、将棋や囲碁の教室、早朝の釣り船。
静かな趣味の場には、たいてい枯れた人が一人はいる。
アプリなら、年齢の検索条件を思い切って上に広げてみる。
登録写真が少し古いのは、ご愛嬌ということで。
玄関に飾ってある、ドライフラワーの話
うちの玄関には、成婚した会員さんからもらったドライフラワーが飾ってある。
もらったあの時は、色あせた花束だな、くらいに思っていた。
それがもう何年も、色を少しずつ変えながら、ちゃんとそこにある。
生花より派手さはない。
でも、長く一緒にいられる。
彼女たちが欲しがっているのは、たぶん、こういう相手なんだと思う。
年齢の数字じゃなく、隣で長く静かにいられること。
ドライフラワーを長持ちさせるコツは、湿気を避けて、ときどきほこりを払うこと。
湿っぽい詮索はしない、小さな不満はためずに払う。
枯れた恋の手入れも、きっと同じです。
それが、枯れ専の本当の意味かもしれない。
