三時間喋れたのに、何も起きない
好きなバンドが同じだった。
作品の趣味まで重なった。
その日は本当に楽しくて、気づいたら三時間経ってた。
なのに、その後が動かない。
連絡は続く。作品の話なら途切れない。でも、食事にも誘われない。
なんで、と思うでしょ。あんなに盛り上がったのに。
本当の疑問は、これが恋愛の入り口かどうか
七年間、婚活の現場でこの相談を何度も受けました。趣味が合う人と出会えたんです、と嬉しそうに報告してくる人。そのあと数ヶ月して、進展しないと言って戻ってくる。
高確率で、同じ道をたどります。
趣味が同じというのは、恋愛の加点にならない場合がある。むしろ、別の枠に振り分けられることがある。
男が最初に感じるのは、嬉しさじゃなく安心です
ここが出発点になります。
説明しなくて済む相手は、異常にありがたい
男の趣味って、たいてい誰にも理解されてないんですよ。
家族に言っても、ふうん、で終わる。職場では話題にすらしない。
そこに、通じる相手が現れる。
何が起きるか。
まず、警戒が完全に外れます。
異性としてどう見られるかを考えるより前に、話が通じる相手として認識される。この順番が、あとで効いてくる。
同志の枠に入ると、そこから出にくい
一度、話の通じる人として登録されると、男はその相手に対して口説くという動作を起こしづらくなります。
理由は単純で、失敗したときに全部失うから。
誘って断られたら、気まずくなって、この話ができる唯一の相手がいなくなる。
趣味の話ができる相手は希少なので、天秤にかけると保守的になるんですよ。
だから、盛り上がるのに動かない。
冷めてるんじゃありません。惜しいんです。
趣味が同じだと、成婚しにくい
現場の実感として、はっきり書きます。
プロフィールの趣味欄が一致したペアの成婚率が高かった、ということはありませんでした。
むしろ、噛み合わないほうが進んでた。
相手を先生にするか、生徒にするかで壊れる
同じ趣味を持つ二人には、必ず上下が発生します。
知識の量、歴の長さ、金のかけ方。
男が上だと、講義が始まります。
それ知ってる、と女性が言った瞬間、機嫌が悪くなる人がいる。教える立場でいたいので。
女性が上だと、今度は男が縮みます。
自分の浅さが恥ずかしくなって、その話題を避けるようになる。
現場で交際が終わったペアの理由を見ていると、趣味が一致していた組ほど、この形で揉めてました。共通の話題があると、逃げ場がないんですよ。比較が毎回発生するので。
同じアーティストが好きだった二人が、三回で終わった話
三十代前半の男女がいました。趣味が完全に一致していて、お見合いから交際まで一直線。私も、これは決まるなと思ってた。
三回目のデートで終了の申し出が来ました。女性側からです。
理由の欄に書いてあったのが、これでした。
私の好きな理由を、全部否定された。
本人に確認したら、悪気はゼロでした。彼はこう言うんです。
正しい聴き方を教えてあげたかった、と。
(それ、教えなくていいやつ…)
頭を抱えました。
彼女にとっては大事な作品でした。彼にとっても大事だった。だから衝突した。どうでもいい話題なら、笑って流せたのに。
男が見ているのは、趣味の一致じゃなく、扱われ方
知らない人に説明するほうが、実は嬉しい
男性会員に何度も確認しました。どんな女性の反応が嬉しかったですか、と。
返ってきた答えで多かったのは、意外な内容でした。
知らないのに、真剣に聞いてくれた。
これです。
全部知っている相手には、語れないんですよ。説明する場面がないので。
誰かに教えられる機会というのは、男にとってかなり気持ちのいい体験です。それを奪うのが、同じ趣味を持つ女性だったりする。
詳しすぎると、査定されている気分になる
これも面談でよく聞きました。
相手の女性が自分より詳しくて、自分の浅さを見られている気がした、と。
趣味の話をするたびに、自分の程度が測られる。楽しいはずの話題が、試験になる。
好意があるほど、この緊張は強くなります。好かれたい相手の前で、下手なことを言いたくないので。
だから、詳しい女性の前では喋らなくなる男がいる。無関心じゃなく、萎縮です。
恋愛に進ませたいなら、趣味の場から一度出る
共通の話題が使えない場所へ行く
ずっと同じ話をしていると、関係の種類が固定されます。
そこから動かすには、話題が使えない場に移すしかない。
私が会員に伝えていたのは、これでした。
一回だけ、その趣味と無関係な場所に誘う。
展示でもライブでもない場所。ただの食事でいい。
共通言語が使えない状態で、何を話すか。そこで初めて、相手が人としてどうなのかが見えます。
そして、男の側も気づくんですよ。この人と、趣味以外の話もしたいのかどうか。
知らない分野を、一つ差し出す
もう一つの方法。
自分が詳しくない分野を、教えてもらう側に回る。
趣味の話では対等でしょ。そこに上下をわざと作る。
男は、教える相手には好意を持ちやすいので。教えたあとに、相手が実際にやってみたと報告すると、さらに効きます。
媚びろという話じゃありません。関係の型を一つ増やすという話です。
逆に、趣味が同じでうまくいくパターンもある
否定だけで終わらせないので、条件を書きます。
好きな理由がずれている場合、強い
同じ作品を好きでも、惹かれている部分が違う二人。
これは続きます。
語り合えるけど、結論が重ならない。毎回、新しい話ができる。
逆に、好きな理由まで完全に一致している場合、三ヶ月で話すことがなくなります。同意しかないので。
判定するなら、意見が割れたことがあるかどうか。
一度も割れていないなら、会話じゃなく確認作業をしてる可能性が高い。
片方が、相手の知らない領域を持っている
趣味は同じ。でも、それ以外の世界が違う。
これが理想形でした。
共通の言語があるから会話は成立する。だけど、相手の中に自分の知らない部分が残ってる。
現場で長く続いていたペアは、だいたいこの形をしていました。重なりすぎていない。
趣味を合わせにいくのは、やめたほうがいい
一つだけ、はっきり止めておきます。
にわかは、必ずバレます
相手に合わせて勉強してから会う人がいます。気持ちは分かる。
やめておいたほうがいい。深いところを聞かれた瞬間に終わるので。
そして、その失望はけっこう深い。話が通じると思った相手が、通じなかったときの落差があるから。
最初から知らないほうが、まだ好かれます。
覚えるべきなのは、知識じゃなく聞き方
効くのは、それのどこが好きなの、という質問だけ。
知識ゼロでも使えます。むしろゼロのほうが自然に聞ける。
男性会員から何度も聞きました。答えを長々と聞いてくれた相手のことは、ずっと覚えている、と。十年前の会話を細かく話す人もいた。
知っていることより、聞かれることのほうが嬉しいんですよ。
夫と私は、何ひとつ趣味が合いません
最後に自分の話を。
結婚してから知ったんですけど、夫と私は驚くほど重ならない。
彼は車と野球。私はどちらにも興味がない。
私が読む本を、彼は一冊も読んだことがありません。
付き合っていたころ、これを不安に思っていました。共通の話題がないと続かないんじゃないか、と。相談所でも、趣味の一致を重視する会員は多かったので、職業柄そう思い込んでた。
十年以上経って、分かったことがあります。
会話が続く理由は、共通点じゃありませんでした。
彼が野球の話をするとき、私は何も分からないまま聞いてます。誰が誰だか、いまだに分からない。それでも、あの人は毎回ものすごく丁寧に説明してくる。
分からない相手に説明するのが、たぶん楽しいんですよ(笑)
逆に、私が仕事の話をすると、彼は的外れなことを言います。本当に的外れ。それがときどき、思いがけない角度で刺さったりする。
同じものを見ている関係より、別のものを見て報告し合う関係のほうが、話す量は多い。
これは私の実感でしかないけど、現場で見てきたペアにも同じ傾向がありました。
趣味が同じ相手といて進展しないなら、一度その話題を封じて会ってみてください。
共通言語なしで二時間もったなら、それは恋愛に進む関係です。もたなかったなら、大事な話し相手がひとりいる、というだけの話。
それも、悪くないと思いますけど。
