条件を全部満たす人がいない、と言っていた人たち
入会面談で希望条件を書いてもらうと、びっしり埋めてくる人がいます。
年収、身長、学歴、喫煙、長男かどうか、実家との距離、転勤の有無。
書き終えて、ほっとした顔で言うんです。これくらい普通ですよね、と。
七年間で何百枚も見てきました。
条件を絞り込んだ人が、条件どおりの相手と結婚した例。ほとんどありません。
完璧主義という診断名が、いちばん邪魔をしてる
やめたほうがいい。
妥協して結婚した人が、婚活の現場でどうなっていたか知ってるので。
先に言い切ります。あなたが決められない理由は、理想の高さじゃない。
決めるのが怖いだけです。この二つは、外から見ると同じ形をしてる。
条件が多い人と、決断できない人は別の生き物
本物の条件重視は、あっさり決まる
年収一千万以上、それ以外は問いません。こういう人がいます。
この人は決まります。速い。
決まらない人の特徴は、条件の数じゃないんですよ。
条件を満たした相手が現れたあとに、新しい条件が生まれること。
年収も学歴も希望どおり。会ってみたら、食べ方が気になる。
次の人は食べ方もきれい。今度は、笑い方が合わない。
無限に出てきます。減点する項目が、後から後から。
減点しているのは、相手じゃなく選択の瞬間
本人は相手を審査しているつもりでいる。
実際にやっているのは、決めない理由の調達です。
決めてしまうと、他の可能性が全部消える。その瞬間が怖い。
だから、断る材料を探し続ける。見つかると、ほっとする。
この、ほっとする、が全部を物語ってる。
断ったあとに安心する人は、完璧主義じゃありません。回避してるだけ。
三十七歳の男性会員が、七十人と会って気づいたこと
実例を書きます。忘れられない人なので。
お見合い七十件、交際ゼロ
二年で七十人と会って、一度も交際に進まなかった男性がいました。
毎回、断る理由を丁寧に説明してくる。話が浅かった、価値観がずれていた、清潔感が足りなかった。
分析は的確なんですよ。頭のいい人だったので。
七十人目のあとで、私は聞きました。
七十人全員に欠点があったんですか、と。
彼は黙りました。長い沈黙のあと、出てきた言葉がこれです。
選んだあとに、もっといい人が現れたら耐えられない。
二年、それを言えずに七十人分の分析を持ってきてたのか…
私はそのとき、自分の指導が全部空振りだったと分かりました。条件の話ばかりしていたので。
基準を下げたのではなく、順番を変えた
そのあと彼に伝えたのは、たった一つでした。
今後は、断る理由を書かないでください。
続けるかどうかだけ、その場で決めてください。
分析を禁じたんです。
七十一人目で交際に入りました。
翌年に成婚しています。
条件は何も変えていません。妥協もしていない。
変えたのは、考える時間の長さだけでした。
炎上覚悟で書きます。妥協した結婚のほうが壊れます
理想を下げましょう、という助言。私は現場で一度も使いませんでした。
妥協した人は、その一点を十年数える
相手のどこを飲み込んだのか、本人は完璧に覚えてます。
年収に目をつぶった。実家の距離を我慢した。見た目は好みじゃなかった。
喧嘩のたびに、その項目が顔を出します。
私はあれを我慢したのに、と。
成婚後に相談に戻ってきた人たちの話を聞いていると、揉めている中身は最初に飲み込んだ一点でした。例外がほとんどない。
妥協は、なくなりません。保管されます。
諦めるんじゃなく、要らないものを見つける
下げるんじゃないんですよ。
自分が本当は必要としていなかった項目に気づくこと。これは全然別の作業です。
学歴を条件に入れていた人が、会ってみたら学歴の話を一度もしなかった、という場面を何度も見ました。もともと欲しかったわけじゃない。周りが言うから書いていただけ。
自分の条件表を見て、どれが誰の意見か分けてみてください。親の希望、友人の目、SNSで見た価値観。自分のものは、意外と少ない。
決められない人の頭で、何が起きているか
もう少し深く掘ります。
比較の対象が、目の前にいない人になってる
会った相手を、過去に会った全員と並べて採点しようとする。さらに、これから会うかもしれない未知の誰かとも比べる。
存在しない相手に勝てる人はいません。当然でしょ。
だから、無限に負ける。
比較をやめない限り、何人と会っても同じ結果になります。
五分で決めさせると、判断が変わる
私が会員に課していたのは、お見合いの直後に決めることでした。
会場を出て五分以内に、続けるか終わるか。持ち帰らせない。
持ち帰ると、人は減点を始めます。思い出した細部を並べて、理由を作り出す。
その場で決めると、感覚で判断する。もう一度会いたいかどうか。それだけ。
この方法に変えてから、交際に進む率が明らかに上がりました。相手の質は何も変わっていないのに。
仕事ができる人ほど、ここで詰まる
これは傾向としてはっきりありました。
正解を探す癖が、そのまま持ち込まれてる
仕事では、情報を集めて分析して最適解を出す。それが評価される。
同じ手順を、人に対して使う。
無理なんですよ。相手が変わるので。
今日の最適解が、来年も最適とは限らない。相手も自分も変化するから、そもそも正解という概念が成立しない。
仕事では優秀な人が、婚活で何年も動けなくなるのを何度も見ました。能力の問題じゃない。手法を持ち込んだだけ。
結婚は、決めてから正解にする作業です
これは現場の実感として書きます。
うまくいっている夫婦は、最初から正解を引いたわけじゃありませんでした。
決めたあとに、そこを正解にしていってる。
選択が結果を決めるんじゃなく、選択のあとの扱い方が結果を決める。
この順番を理解した人から、決められるようになってました。
完璧主義を、直す必要はない
性格を変えろという話にはしません。無理なので。
基準の数を減らさず、期限を入れる
条件はそのままでいい。
代わりに、いつまでに決めるかを決める。
三回会ったら判断する。半年で答えを出す。
期限がある人は決まります。期限がない人は、条件が少なくても決まらない。
現場で何度も確認した、いちばん強い相関でした。
完璧を求める力は、結婚後に効く
これは言っておきたい。
細かいところまで気になる人は、生活が始まってから強いんですよ。
家計を管理する。子どもの手続きを漏らさない。親の介護の段取りを組む。
選ぶ場面でだけ、その力が裏目に出てる。
能力の問題じゃなく、使いどころの問題です。
私は、三ヶ月で決めました
最後に自分の話を。
アドバイザーをしていた頃、私は誰よりも条件の意味を知っていました。年収の分布も、年齢による申し込み数の変化も、全部データで見ていた。
だから、自分の番になったとき、いちばん決められなくなった。
今の夫と会って、二回目のデートの帰りに、私は頭の中で採点を始めていました。職業、年収、実家、長男かどうか。全部、仕事で使っていた項目です。
点数は、正直よくなかった。私が会員さんに勧める基準には届いていなかった。
それでも三ヶ月で決めました。
理由は、しょうもないことです。
彼と歩いていると、自分の歩幅を調整していないことに気づいたから。
私は身長が高いほうで、昔から男性に合わせて歩く癖があった。無意識に。
彼の隣では、それをやっていなかった。
条件表に、歩幅の欄はありません。
そういうものなんですよ、たぶん。
結婚して十年以上経ちます。彼の年収は、当時の私の採点表では不合格のままです。
一度も気にしたことがない。というより、思い出したのは今、これを書いているときが初めてでした(笑)
条件を下げる必要はありません。条件表に書けないものが決め手になるだけです。
次に会う人については、考える時間を五分に区切ってみてください。そこで出た答えが、二週間考えた答えより正確なので。
