MENU

男性が運命を感じる女性は共通点の多さではなかった

  • URLをコピーしました!

運命の人でした、と成婚退会の挨拶で男性が頭を下げる。
隣で彼女がはにかむ。いい場面です。何度見ても、こちらの顔までゆるむ。
ただね、私はその男性の三か月前の申込書を覚えているんですよ。彼女のプロフィールは彼の希望条件から三つ外れていて、最初は申し込みすら渋っていた。
運命って、なんなんでしょうね。

目次

運命は、出会った瞬間には存在していない

馴れ初めは、あとから書き直される

成婚インタビュー、面白いんですよ。
初めて会った日の印象を聞くと、男性はたいてい、最初から何か違いました、と語る。でもこちらの手元には初回お見合い後の彼の報告書が残っている。書いてあるのは、普通の方でした、の一行。
嘘をついているわけじゃありません。記憶が書き換わっている。
結婚を決めたあと、人は過去を編集します。何でもなかった初対面に照明を当て直して、伏線だったことにする。アルバムの並べ替え作業。
つまり運命は出会いに宿るんじゃなくて、決断のあとに支給される。
順番が逆なんですよ。運命だから選んだのではなく、選んだから運命になった。

初対面でビビッと来たと言う男は、三か月もたない

逆のパターンも大量に見ました。
お見合いの翌日、興奮気味に電話してくる男性会員。運命を感じました、と。
担当としては、この時点で警戒に入ります。経験上、この熱は三か月続かないので。
実際、その手の交際は高確率で急停止しました。理由を聞くと、思っていた人と違った、と言う。当たり前でしょ! 初対面で見えていたのは彼女じゃなくて、あなたの願望なんだから。
早く運命を口にする男は、目の前の女性ではなく、脳内の物語と交際しています。現実とずれた瞬間、彼女ごと切り捨てる。
運命と言われて舞い上がっている人へ、指標をひとつ。言われた回数じゃなくて、あなたが先週話した内容を彼がどれだけ覚えているか。数えるならそっちです。

正体は、自分の条件を破ったときの言い訳

年齢条件を三年守った男性が、条件外で即決した

42歳の男性会員がいました。お相手の年齢は35歳まで。ここを三年間、一ミリも動かさなかった人。
その彼が、紹介の手違いで会った38歳の女性に、翌週真剣交際を申し込んだんです。椅子から落ちるかと思いました。
理由を聞いたら、しばらく黙って、それから照れくさそうに言った。運命みたいなものなので、と。
分かりますか。この言葉は、自分の行動を自分で説明できなくなったときに出てくる。三年守った条件を一週間で破った。その矛盾を処理できる語彙が、他になかった。
だから特徴を探しても出てこないんですよ。特徴で選ばれていないから運命と呼ばれる。定義からして、リスト化の外側にある。

共通点の多さは、思っているほど効かない

趣味も価値観も一致するほどいい。婚活の常識みたいになっていますけど、実感は違いました。
プロフィール上の共通点が多い組み合わせ、お見合いは確かに盛り上がります。会話に困らないので。ただ、そこから先が伸びない。盛り上がりと惹かれは、別の科目なんですよね。
効いていたのは量じゃなくて不意打ちでした。インドアにしか見えない女性が、実は毎週ひとりで山に登っている。それを聞いた瞬間の男性の顔。ぱちんとスイッチの入る音が、こちらまで聞こえる。
予想が外れた体験だけが、相手の記憶に爪を立てます。共通点を並べる作業は予想通りを積み上げる作業なので、感じはいいのに、引っかからない。

発生する時期は、彼の人生の谷と重なっている

転職、失敗、入院。谷底で会った人が特別になる

成婚例を思い返して、ぞくっとした共通項があります。
男性側が運命という言葉を使ったケース、その多くで、出会いの時期が彼の谷と重なっていた。転職の直後。事業がこけた年。親を亡くした季節。退院の翌月。
弱っていた時期の自分を知っている。それだけで、その女性は他の全員と別の棚に入ります。
つまり発生条件は、彼女側の特徴ではなく彼側の状態。
身も蓋もない話でしょ。でも裏返せば救いです。あなたに何かが足りないから運命扱いされないんじゃない。単に、彼の谷に居合わせなかった。それだけのこと。

絶好調の男は、誰と会っても何も感じない

仕事は好調、健康、友人も多い。この状態の男性会員、お見合いの成立数は多いのに、交際がまるで深まらない。感想を聞いても、いい方でした、が延々と続くだけ。
満たされている人間には、埋めるべき穴がありません。穴がなければ、誰かがぴったりはまる感覚も発生しない。
彼らが動くのは、何かを失った月です。昇進が飛んだ、同期が先に結婚した、健診で数値を突きつけられた。ぐらついた時期に会った女性と、するすると決まっていく。
長く定点で見ていると、恋愛は人柄の話というより気圧の話に見えてきます。はぁ…夢のない仕事でした(笑)。

狙って再現しようとすると、逆に消える

仕込んだ偶然は、匂いで割れる

ここまで読んで、じゃあ彼の谷を狙って不意打ちの共通点を用意すればいい、と考えた人。発想は正しい。でもやめておいたほうがいい。
彼の趣味を調べ上げて、釣り番組を三本予習して初回に臨んだ女性会員がいました。序盤、男性は食いつきました。三回目で急に冷めた。
終了理由に書かれていたのは、全部合わせてくれている感じがして、でした。
男は鈍いくせに、意図の匂いにだけは犬並みに敏感です。用意された一致は、感心はさせても、ぐらつかせない。
偶然の価値は、仕込めない点にあります。仕込んだ瞬間、それは営業に変わる。

決定打は、彼女が覚えていない三秒だった

成婚した男性たちに、彼女を意識した瞬間を聞き続けていました。半分は私の趣味です。
返ってくる答えが、揃いも揃ってしょうもない。
傘がたためなくて焦っていた姿。違う料理が運ばれてきたのに、おいしそうだからいいやと食べ始めたところ。乾杯の前にひとくち飲んでしまって、あっ、という顔をした瞬間。
女性側に確認すると、全員、その場面を覚えていませんでした。
決定打は、演出の外側で発生している。取り繕いが剥がれた三秒に男は勝手に落ちて、あとから運命という題をつける。
再現性、ゼロ。狙えるとしたら、取り繕いの総量を減らすことくらいです。

運命を感じさせる女に、なる必要はない

運命と呼ばれて結婚した友人の、十年後

友人に、夫から運命の人と呼ばれて結婚した子がいます。プロポーズも映画みたいで、当時は正直うらやましかった。
十年経って、その言葉は彼女の枷になっていました。喧嘩のたびに、運命だと思ったのに、と言われるそうです。理想からずれるたび減点される。降りられない配役。
称号には更新条件がついていたんですよ。
彼女がこぼした一言が忘れられません。普通に好きって言われたかったな、って。じわっと来ました(泣)。

夫に聞いたら、身も蓋もない答えが返ってきた

うちの夫は、運命なんて一度も言ったことがありません。告白でもプロポーズでも、通算ゼロ回。
この記事を書くにあたって、聞いてみたんです。私に運命を感じた瞬間、あった? と。
夫は少し考えて、真顔で答えました。ない、と。
ないんかい!
ただ、続きがありました。毎回、別れ際に、来週も会いたいなとは思ってた。それがずっと続いてるだけ、と。
笑ったんですけど、あとからずしんと来ました。
運命は、選び終わった人があとから編集するハイライト映像。リアルタイムの現場に存在するのは、来週も会いたいかどうか、その一点だけ。
だから、運命を感じさせる女性を目指さなくていい。狙うなら、来週も会いたいと思われる人のほう。地味でしょ。地味なんですよ、続くものって全部。
彼があなたを運命と呼ぶ日が来るなら、それは全部決まったあと。呼ばれたら、ふうん、と聞き流すくらいでちょうどいいです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次