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既婚女性の一人旅|行かせない夫と、後ろめたさの正体

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目次

行きたい、と言えないまま

子どもを預ける段取りを頭の中で組んでみる。
夫に何て言えばいいか、切り出し方を三通りくらい考える。
そこまでやって、結局言わない。
自分だけ遊びに行くって、どう思われるんだろう

行っていいのかどうかの承認。あるいは、同じことを考えている人がいるという確認。
先に言いますが行くかどうかで悩んでいる時点で、その旅は目的が旅行じゃありません。
一人になりたいだけ。旅はその手段として選ばれてるだけ。

誰にも判定されない時間が、足りていない

既婚女性が一人旅を欲するとき、実際に不足しているのは景色じゃない。
自分の行動を誰にも説明しなくていい時間です。
何時に起きるか、何を食べるか、どこに寄るか。全部を自分だけで決めて、誰にも報告しない。
家にいる限り、この状態は作れません。同じ家に人がいれば、行動は共有されるから。
だから距離が必要になる。
遠くに行きたいんじゃなくて、説明しなくていい場所に行きたい。

夫が渋る理由は、浮気の心配じゃない

ここを誤解している人がすごく多い。

実際に出てくるのは、別の感情

夫が難色を示すとき、多くの妻は疑われていると解釈します。
実際に聞き取ると、違うものが出てくることが多かった。
自分がいなくても平気なんだ、と感じる。
これです。
一緒にいなくても楽しめるという事実そのものが、こたえてる。
男性は、自分が必要とされているかどうかで関係を測る人がかなりいます。妻が一人で楽しめると分かると、自分の存在価値が減った気がする。
そこを言葉にできないから、別の理由を持ってくる。
危ないから、金がもったいない、子どもがかわいそう。
全部、後付けです。

だから正面から説得しても通らない

安全性を説明しても、費用を計算して見せても、夫が納得しないことがあるでしょう。
当然です。反対している理由がそこにないから。
効くのは、必要とされている実感を先に渡すこと。
これがないと私が壊れるから、という形で伝える。
つまり、あなたのために出かけるという建て付けにする。
ずるいと思う? でも実際、これが一番早かった。相談所時代、夫婦間の交渉でこの形にした人たちは、だいたい通ってました。

相談所で見た、旅を許さなかった夫婦

成婚後に聞いた、意外な後日談

実例を書きます。
私が担当して成婚した夫婦がいました。三十代同士、穏やかで、傍から見て理想的なカップル。
結婚して二年後、奥さんから連絡が来ました。相談所に、というより私個人に。
内容は、一人で旅行に行きたいと言ったら夫の様子がおかしくなった、というものでした。
彼女は最初、浮気を疑われたと思っていた。
私が助言したのは、夫に直接聞くことでした。何が引っかかるのか、正面から。
出てきた答えがこれです。
自分は一人で行きたいと思ったことがないから、意味が分からなかった。
反対じゃなかったんですよ。理解できていなかっただけ。

説明したら、あっさり通った

彼女は説明したそうです。あなたが嫌なわけじゃなく、一人でいる時間が必要なんだ、と。
夫の返事が、けっこう良かった。
それなら分かった。俺の分の休みも合わせるから、その日は子どもといる。
これで解決してます。
何が起きていたかというと、単に情報がなかった。
一人になりたいという感覚を持たない人間は、それを想像できない。想像できないものを提案されると、人は警戒します。
説明を省いたまま許可だけ求めると、警戒だけが返ってくる。

後ろめたさの正体を、分解する

ここが今日いちばん書きたいところ。

母親の役を降りることへの罪悪感

夫の反対より、自分の中の罪悪感のほうが重い人が多いはず。
私もそうでした。
子どもを置いて出かけることが、母親として失格だという感覚。
これ、どこから来てるんだろうと考えたことがあります。
たぶん、母親の不在に対して社会が異常に厳しいからです。父親が一人で出かけても誰も何も言わない。母親だと、誰かが何かを言う。
言われたことがなくても、言われるかもしれないと思って動けなくなる。
実際に反対されているんじゃなく、想像上の批判に縛られてる。

楽しんではいけない、という思い込み

もう一つ厄介なのがこれ。
行くとしても、実家に顔を出すついでとか、友人の結婚式の前泊とか、正当な理由をくっつけようとする。
純粋に楽しむための旅を、自分に許可できない。
私は一度、これで失敗しました。
子どもが三歳の頃、思い切って一泊だけ一人で出かけたんです。
なのに、旅先でずっと家のことを考えていた。今頃お風呂かな、寝たかな、夫は大丈夫かなって。
何しに行ったんだって話でしょ。
体だけ移動して、頭は家に置いてきてた。

二回目で、やっと使えた

半年後にもう一度行きました。
そのときは、着いてから三時間くらいで頭が切り替わった。
何がよかったかというと、一回目があったからです。一回目で家が回っていたという実績ができたから、二回目は安心できた。
だから初めての一人旅は、期待しないほうがいい。たぶん半分も楽しめません。
それでいいんです。一回目は実績作り。

実際にどう行くか

近くていい、短くていい

現実的な話をします。
遠方じゃなくていい。電車で一時間の温泉でも、都内のホテルでも同じ効果があります。
必要なのは距離じゃなく、誰も自分を知らない場所にいることなので。
一泊が難しいなら、日帰りでもいい。半日でもいい。
私の周りで満足度が高かったのは、意外にも近場の一泊でした。移動時間が短いぶん、一人でいる時間が長く取れるから。
遠くに行くと、移動が旅の大半を占めます。それはそれで楽しいけど、目的が違う。

予定を組まない、これが一番効く

やってみて分かったこと。
観光地を詰め込むと、家事と同じになります。時間に追われて、こなす作業になる。
何も決めずに行くと、最初は落ち着かない。何をすればいいか分からなくて、手持ち無沙汰になる。
その手持ち無沙汰が、実は必要なものでした。
やることがない時間に置かれて初めて、頭の中の音が止まる。

連絡の頻度を、先に決めておく

これは夫婦間のトラブル回避として。
出発前に、連絡は夜に一回だけ、と決めておく。
これを決めないと、こちらは気になって何度も確認してしまうし、向こうは報告義務があるのかどうか分からなくて困る。
決めておけば、双方が楽になります。

行った人が、その後どうなったか

帰ってきてからのほうが、変化が大きい

自分の話に戻します。
二回目の一人旅から帰った日、私は玄関で子どもに抱きつかれて、素直に嬉しいと思えました。
その一ヶ月前は、抱きつかれるたびに重いと感じていた。
同じ行為なのに、受け取り方が変わってる。
これが答えだと思ってます。
一人になる時間は、家族から離れるためじゃなく、家族を再び受け取れる状態に戻るために要る。

夫の見え方も変わる

もうひとつ、意外だったこと。
帰ってきたら、家がめちゃくちゃでした。洗い物が溜まって、子どもの服が散らかって。
以前の私なら、それを見て腹を立てていたと思う。
でも、そのときは笑えたんですよ。二日間、この人なりに回してたんだなと。
余裕がある状態だと、同じ光景が違って見える。
性格が良くなったんじゃなく、処理能力が戻っただけなんですよ。

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