目覚ましがあるのに、なぜ人に頼むのか
明日、七時に電話して。
そう言われて、かわいいなと思った人。
面倒だなと思った人。
どっちの反応も正しい。ただ、その言葉が出てきた背景は、たぶんあなたが想像しているのとは違う。
私じゃなきゃダメなの? それとも誰でもいいの?
スマホのアラームは複数セットできる。スヌーズもある。それでも人に頼む。
この行動の中身を、結婚相談所で七年、交際中の会員さんの日常報告を聞き続けてきた立場から分解します。
起きるためじゃない、という前提
まずここを押さえてほしい。
モーニングコールを頼む男性の大半は、それで起きられると本気で思っていない。
実際、電話で起こしても二度寝する人はいくらでもいる。
つまり目的が起床じゃないんですよ。
朝いちばんに接触する権利を、前日のうちに確保している。それが実態。
頼む男性の心理は、四つに分かれる
現場で聞き取りをしていて、きれいに分類できました。
一つ目、単純に朝の声が聞きたい
いちばん多いのがこれ。
好意がある相手の、寝起きの声。作っていない、無防備な状態の声を聞きたい。
これは素直な欲望です。悪意ゼロ。
このタイプは、電話が繋がった瞬間に用件を言いません。おはよう、のあとに雑談を始める。起きるための電話なら、起きたと言った時点で切るはずでしょ。
切らないなら、目的は会話のほうです。
二つ目、あなたの生活時間に自分を刺したい
これは少し複雑。
朝七時に電話をかけてもらうということは、あなたの朝七時が彼のために使われるということ。
一日の始まりに、自分の存在を入れ込む。
無意識にやってる人が多いけど、これは領域の確保です。
一日の最初に思い出す人になれば、その日ずっと有利。
本人にその自覚があるかというと、ない。ただ、行動としてはそういう機能を持ってる。
三つ目、試している
ここから少し嫌な話になります。
面倒な頼みごとを引き受けるかどうかで、相手の優先順位を測る人がいる。
朝の電話は、負担として絶妙なんですよ。断るほど重くはないけど、確実に相手の生活を削る。
引き受けたら、自分が優先されている証拠になる。
このタイプは、一度引き受けると要求が段階的に増えます。次は毎日になり、その次は出なかったときに機嫌が悪くなる。
判別方法はひとつ。忘れた日、あるいは出られなかった日にどう反応するか。
そこで責めてきたら、これです。
四つ目、本当に起きられない
最後に、まっとうなやつ。
遅刻が仕事に直結する立場で、過去に失敗している人。単純に助けを求めてる。
このタイプは頼み方が具体的です。時間、理由、いつまで必要か、全部言う。
明日は九時から大事な会議で、前科があるから怖い。今回だけお願いできる?
こう言われたら、素直に受けていい。
相談所で見た、モーニングコールが理由で終わった交際
三ヶ月続けた女性会員の話
三十代の女性会員が、交際中の男性から毎朝の電話を頼まれていました。彼女は真面目な人なので、きっちり三ヶ月続けた。
毎朝六時半。彼女自身の出勤は九時。つまり、彼のために一時間半早く起きていたことになる。
面談で報告を受けたとき、私が聞いたのは一つだけ。
それ、彼は知ってますか。
彼女、少し考えてから言いました。言ってないです、と。
言えなかったんですよ。負担だと思われたくなくて。
その二週間後、彼女のほうから交際を終了しました。
理由の欄に書かれていたのは、私が何を差し出しているか、彼が最後まで気づかなかったので。
男性側は、本気で気づいていなかった
私の話ですが連絡したとき、彼は心底わけがわかっていなかった。
毎朝楽しく話していたのに、なぜ、と。
負担をかけている自覚が、一ミリもなかったんです。彼女が笑って対応していたから。
これ、モーニングコール問題の核心だと思ってます。
頼む側は、電話一本の話だと思ってる。受ける側は、起床時刻を明け渡してる。
同じ行為の重さが、両者でまったく違う。
逆に、うまく機能していた例
交代制にしたカップル
別の会員さんは、同じ頼まれ方をして、こう返しました。
いいよ。じゃあ私が朝弱い日は、そっちがかけて。
これで一気に変わった。
一方通行のサービスだったものが、相互のやり取りになった。
彼女が寝坊しそうな日に彼から電話が来るようになって、二人とも生活が整ったらしい。
結果として成婚しています。
仕組みを対称にするだけで、同じ行為の意味が変わる。
期限を切ったパターン
もう一つ。
試用期間として、来週の月曜から金曜だけ、と決めた人がいました。
金曜が終わったら、続けるかどうかをもう一度話す。
これも良かった。だらだら続いて負担になる前に、点検の機会が入るから。
無期限で引き受けると、やめるときに関係の話になってしまう。期限を先に切っておけば、やめても事故らない。
受ける側が考えるべきこと
かわいいと思えるうちは、やっていい
私は、頼まれた電話を全部断れとは言いません。
朝の連絡が楽しいなら、続ければいい。実際それで関係が深まる人もいる。
判断基準はシンプルです。
今朝、電話をかける前にため息が出たかどうか。
出ていないなら問題ない。出たなら、その時点で話し合ったほうがいい。
断ることで壊れる関係なら、遅かれ早かれ壊れる
モーニングコールを断ったくらいで態度が変わる相手は、その先の生活で必ず同じことをします。
朝の電話は序盤も序盤。
これから先、もっと重い頼みごとが山ほど来る。転勤、介護、育児、家事の分担。
電話一本で優先順位を測ってくる人が、その全部で公平に振る舞うと思えますか。
無理でしょう。
だからこの段階で、断る練習をしておいたほうがいい。安く済むうちに。
断り方は、代案の形で
とはいえ真正面から断るのは気が重いよね。
効くのは、別の形を提案すること。
毎朝は起きられないから、大事な日だけ言って。
電話は無理だけど、七時にメッセージなら送れる。
拒否じゃなく、条件の変更として出す。
これで相手の反応を見れば、さっきの四分類のどれかが一発でわかります。素直に受け入れるか、不機嫌になるか。
頼む男性を、少しだけ擁護しておく
最後に、意外なことを書きます。
私、モーニングコールを頼む男性が嫌いじゃないんです。
助けてほしいと口に出せる男性は、少ないから。
七年間、男性会員を見てきて痛感したのが、彼らの多くは弱さを出す方法を知らないということでした。
できない、助けて、一人だとしんどい。この手の言葉が出てこない。
朝起きられないから電話して、という頼みは、その中では珍しく素直な弱音なんですよ。
かっこ悪い。かっこ悪いけど、正直。
だから私は、頼んできた男性そのものより、頼んだあとにお礼を言うかどうかを見ていました。
ありがとうが出る人は、たぶん大丈夫。
当たり前の顔で受け取る人は、朝の電話に限らず、この先ずっと当たり前の顔をします。
明日の朝、電話を切ったあとに何と言われたか。そこだけ覚えておけばいいんです。
