褒められたのか、けなされたのか
優男だね、と言われる。
笑って返しながら、たぶん頭のどこかがざらつく。
すぎる、が付いた瞬間に空気が変わることも、なんとなく察してる。
今の、どっちの意味だ?
優男は見た目の話。優男すぎるは中身の話。
すぎるが付いた瞬間、褒め言葉から評価に変わってます。しかも、たいていは物足りないという意味の。
そもそも優男の元の意味
語源としての優男は、線が細くて上品な男性を指す言葉でした。優美な男。姿かたちの話です。
昔の使われ方だと、色白で、所作がきれいで、荒っぽさがない。単純に見た目の分類。
そこに悪い意味はなかった。
それが現代に来て、性格を指す言葉に変質しました。
優しい男と混ざったんだと思う。優の字が同じだから。
今の会話で優男と言うとき、外見だけを指しているケースはほぼありません。
すぎるが付いたときに、何が起きているか
優男すぎる、という表現には二つの用法があります。
ひとつは容姿を強調するもの。細身で中性的な顔立ちの俳優なんかに使う、単なる感嘆。
もうひとつが、行動に対する評価。優しすぎて、何を考えているかわからない。押しがない。決めてくれない。
女性が男性本人に向かって言う場合、九割は後者です。
そして本人には、ほぼ確実に前者の意味で伝わってる。この誤解が、婚活の現場で山ほど事故を起こしてました。
相談所で、優男すぎると言われ続けた会員
三十六歳、お見合い成立率トップ、交際継続率ワースト
実例を書きます。
三十六歳の男性会員。細身で、清潔で、話し方が柔らかい人でした。写真の反応が抜群で、お見合いの申し込みが常に上位。
それなのに、交際が続かない。
女性側から返ってくる感想が、毎回ほぼ同じでした。
優しい方でした。でも、優しすぎるというか。
何度も読んで、私も最初は意味がわからなかった。優しいのがダメなのかって。
デートの内容を全部聞いて、原因が出た
彼のデートを一日ぶん、細かく聞き取りしたことがあります。
待ち合わせ場所、どこにしましたか。相手の希望に合わせました。
お店は。相手が行きたいところに。
食事のあとは。相手が疲れていそうだったので、早めに解散しました。
全部です。全部、相手基準。
彼に悪気は一切ない。むしろ気遣いの塊。
でも女性側から見ると、四時間一緒にいて、彼の意思が一度も出てこなかったことになる。
好かれたいから決めない。決めないから、何も伝わらない。
優しすぎるという言葉の中身は、これでした。
私が彼に言ったこと
面談で、私はけっこうきついことを言いました。
それ、優しさじゃなくて、責任の回避ですよね、と。
彼、黙り込んだ。
店を決めれば、外したときに自分のせいになる。だから決めない。相手に選ばせれば、まずくても相手の責任になる。
無意識にリスクを渡してるんですよ。
言い過ぎたかと思って、私も後から胃が痛くなりました(泣)。
でも彼は次のデートで、店を自分で予約しました。しかも、相手の好みを聞かずに。
結果を言うと、その店は失敗だったらしい。想定より騒がしくて、落ち着いて話せなかった。
それでも交際に進んだんです。
女性が後で言ったそうです。すみません、うるさいですねって謝ってくれたのが、なんか良くて、と。
優しすぎると言われる人の、共通した癖
否定形で気遣いを表現する
無理しなくていいよ。
嫌だったら言ってね。
どっちでもいいよ。
全部、相手を尊重する言葉です。悪いところがひとつもない。
ただ、これらには共通点がある。全部、自分の希望がゼロ。
気遣いを否定形で作ると、会話に情報が乗らないんですよ。
相手の頭には、この人は何をしたいんだろうという疑問だけが残る。
反論を全部飲む
意見が食い違ったとき、すぐに引く。
たしかにそうだね、と言って自分の考えを取り下げる。
一回なら誠実に見える。三回続くと、意見がない人になります。
そして四回目には、この人は自分に興味がないのかもしれない、という解釈に変わる。
興味がないと思われるんですよ、譲りすぎると。ここが本当に皮肉なところ。
怒らない
優男すぎると言われる人は、まず怒らない。
店員のミスにも、遅刻にも、無理な要求にも。
これを見た女性が何を思うか。
この人は、私が何をしても怒らないんだな。
一見いいことに見えるでしょ。違うんです。
怒らない人は、境界線を持っていない人に見える。境界線がない相手には、こちらも本気で向き合えない。
それでも私は、優男を擁護したい
強引な男が持て囃される風潮が、雑すぎる
優しすぎる男はモテない、押しが強い男が選ばれる。
この手の言説、私はずっと嫌いでした。
だってその理屈で押しを強くした男性を、何人も見てきたから。全員、失敗してる。
急に決めつけるようになったり、相手の意向を無視して予定を組んだり。
女性側の感想がひどかった。急に人が変わったみたいで怖かった、と。
足りないのは押しじゃない。
足りないのは、輪郭じゃなく好みの表明
優男すぎると言われる人に欠けているのは、強さじゃありません。
自分が何を好きかを口に出す習慣。
これだけ。
僕はここのコーヒーが好きです。
実はこういう映画が苦手で。
今日は疲れてるので、座れる店がいいです。
どれも相手を押していない。ただ自分の情報を出しているだけ。
優しさと自己開示は、まったく別のものなんですよ。両立できる。
むしろ好みを言える人のほうが、相手を尊重する余裕がある。
結婚してから、優男は強い
最後に、婚活記事らしくない話をします。
選ばれるまでの弱さと、選ばれた後の強さ
優しすぎる男性は、交際に入るまでが遅い。これは事実。
でも結婚してからの評価は、ほぼ真逆になります。
私が担当した会員さんで、成婚後に奥さんから感謝の連絡が来るのは、この手のタイプが圧倒的に多かった。
理由は単純です。生活の中で、押しの強さは要らないから。
必要なのは、相手の体調に気づけること。機嫌が悪い日に距離を取れること。決めつけないこと。
交際期間に不利だった性質が、そのまま長期戦の武器になる。
自分の家のことを言うと、私も夫に対して同じことを思ってます。付き合っていた頃は物足りなかった部分に、今は毎日助けられてる。
言われたときの返し方
だから、優男すぎると言われたときの対応はひとつ。
言い返す必要も、性格を変える必要もない。
その場で自分の好みを一個出す。
そうかも。ちなみに僕、辛いものが全然ダメなんです。
これで終わり。
優しさは残したまま、情報だけ足す。
あの三十六歳の彼、成婚したあとに一度だけ電話をくれました。うるさい店を予約した日の話をして、二人で笑った。
外したのに進んだ、というのが全部を言ってると思う。
決めたことが正しかったんじゃなくて、決めたこと自体が伝わっただけなんですよ。
