デオドラントを買い足す前に、やることがある
自分の匂いって、自分ではわからない。
これがこの問題のいちばん残酷なところ。
だから多くの人は、まず制汗剤を買う。次に香水を足す。ボディソープを変える。
足し算で解こうとするんですよ、全員。
結婚相談所で会員さんを見てきて言えるのは、そこで解決した人をほとんど見ていないということ。
むしろ悪化していた。
足すと混ざる。混ざった匂いは、元の体臭より強く記憶されます。
お見合いで切られる理由の欄に、匂いとは書かれない
先に現場の話をしておく。
お見合いのあと、女性側から交際を断る連絡が入る。そこに書かれる理由はこんなの。
価値観が合わないと感じました。
お人柄は素敵でしたが、ご縁を感じませんでした。
これ、かなりの割合で匂いです。
女性会員に直接聞くと、当たり前だけど正直に言う。あの、少し匂いが気になってしまってと。
でも書面には絶対書かない。傷つけたくないから。
つまり本人には一生届かない。仲介者経由で伝えるかどうか、私も毎回迷ってました。
伝えて泣かれたこともある。伝えずに三年決まらなかった人もいる
本人の鼻は、二週間で慣れる
嗅覚順応というやつ。同じ匂いを嗅ぎ続けると、脳が処理をやめる。
自分の部屋の匂いがわからないのと同じ理屈です。
つまり自分でチェックする方法は、原理的に存在しない。
唯一まともに機能したのは、脱いだシャツをビニール袋に入れて密閉し、二時間ほど外の空気を吸ってから開けて嗅ぐやり方。
これ、けっこう効きます。効きすぎて落ち込む人もいた。
匂いの出所は、脇じゃないことのほうが多い
ここが今日の中心。
体臭というと脇を連想するけど、婚活の現場で問題になっていた匂いの多くは、別の場所から出ていました。
枕カバーと、車のシートと、コートの襟
四十代の男性会員がいました。清潔感を指摘され続けて、風呂の回数を増やし、制汗剤を三種類使い分けていた人。
それでも改善しない。
話を聞いていくうちに、ある一言が出てきた。枕カバー、そういえば半年替えてないですね、と。
出所はそこでした。
頭皮の皮脂が枕に染みて、それが毎晩、髪と首筋に戻ってくる。本人は毎日洗っているつもりで、実は毎晩塗り直していた。
同じ理由で怪しいのが、車のシート、ソファ、部屋着、そして冬のコートの襟。
体は洗える。布は洗われないまま何年も居座る。
彼、枕カバーとコートを替えた三ヶ月後に交際成立しました。あっけないくらい。
洗濯物の生乾き、あれは体臭に化ける
もうひとつ多かったのがこれ。
洗ったはずのシャツから、雑巾みたいな匂いが立ち上がる現象。着て体温が上がった瞬間に開花するタイプ。
本人は洗濯直後に嗅いで、無臭だから問題ないと判断してる。落とし穴。
部屋干しの菌は、湿気と体温で目を覚まします。
対処は単純で、洗濯槽を洗う、洗剤を減らす、干す前に乾いたタオルで挟んで水分を抜く。あとは酸素系漂白剤に一時間つける。
これだけで消える人、けっこういた。
加齢臭という言葉に振り回されない
三十代後半から、加齢臭という単語が急に自分事になる。
専用のソープを買い、ゴシゴシ洗う。
やめたほうがいい。
皮脂を落としすぎると、体は不足を埋めようとして分泌を増やします。洗うほど脂が出る、という間抜けな循環に入る。
実際、婚活中の男性で匂いが強かった人の何割かは、洗いすぎでした。
必要なのは強く洗うことじゃなく、耳の後ろ、首の後ろ、背中の上部を毎日ぬるま湯で流すこと。それだけで違う。
食べ物と酒、この二つが効く速度
三日で変わる、というのは本当だった
匂いの相談を受けたとき、私がまず聞いていたのは食事の内容です。
にんにく、肉中心、揚げ物、そして酒。
アルコールは分解の過程で出るものが汗と息に回るので、飲んだ翌日の体は普通に匂う。これは体質の問題じゃなく、単純な化学の話。
面白いのは、変化が早いこと。
食生活を変えた会員さんは、だいたい三日から一週間で周囲の反応が変わっていました。
一ヶ月かかると思ってた人が拍子抜けするくらい早い。
お見合い前日の食事だけ変える、という現実路線
とはいえ、食生活を丸ごと変えるのは無理でしょ。私も無理。
だから現場では、前日と当日だけ守る作戦を勧めてた。
前日の夜は、にんにくと酒を抜く。当日の朝食は軽めに、揚げ物は避ける。
これだけ。
継続できないことを勧めても意味がないから、勝負の日だけ整える。
ズルいと思う? 婚活はそういうもんです。
香りで隠すのは、ほぼ全部が裏目に出る
香水をつけた瞬間、二種類の匂いが同時に届く
婚活中の男性は、香水をつけないほうがいい。
理由は簡単で、体臭は消えないから。上から乗せると、香水の匂いと体臭が同時に鼻に届く。
女性側の記憶に残るのは、この混ざった匂いのほうです。
そして混ざった匂いには名前がない。名前がないものを、人は不快として処理する。
柔軟剤も同じ。強い香りのものを使うと、汗と反応して独特のものになる。
無香料、これが最強でした。七年やって、これは確信してる。
いい匂いだと言われた男性会員に共通していたもの
逆パターンの話。
女性から、あの人いい匂いでしたと言われる男性が、たまにいるんです。
共通点を探したことがあります。全員、香水をつけていませんでした。
何をしていたか。洗いたてのシャツを着ていた。それだけ。
つまり、いい匂いの正体は無臭に近い状態のことなんですよ。
匂いをプラスするんじゃなく、ゼロに近づける。
がっかりするくらい地味な答えでしょ。でも現場の答えはこれ。
それでも消えないときは、医療の話になる
努力で解決する範囲を超えている場合がある
生活を整えて、布を替えて、食事を調整して、それでも変わらない。周囲の反応がずっと同じ。
そこまでやったなら、それは怠慢の結果じゃない。
腋臭症や多汗症は治療の対象になります。皮膚科で相談できるし、保険が効く処置もある。
糖尿病や肝機能の低下が匂いとして出ることもあるので、健康診断の結果を放置しているなら一度きちんと見てもらったほうがいい。
自分の努力不足だと思い込んで一人で抱えている人を、私は何人も見てきました。あれ、いちばんしんどいやつ。
病院に行くのは負けじゃないです。むしろ最短ルート。
誰にも聞けない、が最大の敵
この問題の本当の難しさは、匂いそのものより、確認できないことにある。
親にも友人にも聞けない。聞かれた側も本当のことを言わない。
だから、聞くなら関係が壊れない相手を選ぶこと。美容師、行きつけの店員、あるいは有料で意見をくれる立場の人。
利害のない人ほど、正直に答えてくれます。
匂いを消しても、それだけでは決まらない
最後に、身も蓋もない話をひとつ。
匂いを整えた会員さんが全員うまくいったかというと、そんなことはない。
匂いは減点要素なんです。加点じゃない。
ゼロに戻したところで、そこからようやくスタートライン。
ただ、減点が消えると本人の顔つきが変わる。ここが大きい。
自分が匂っているかもしれないと思っている人は、無意識に相手から距離を取ります。半歩下がる、正面を向かない、口元を隠す。
その姿勢が、自信がない人に見えていた。
匂いを片づけると、姿勢がまっすぐになる。まっすぐになった人は、それだけで印象が変わる。
枕カバーを替えた四十代の彼、成婚した理由は匂いが消えたからじゃなかったと思ってます。堂々と近づけるようになったから。
今日、枕カバーだけ替えてみたらどうでしょう。それが一番安くて、一番効きますよ。
