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嘘をつく時の目線、右上左上の説はとっくに否定されている

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目線の方向で嘘は分からない、これは決着がついてる

右上を見たら作り話、左上なら記憶。
どこかで一度は読んだはず。私も信じてました。会員の面談で、こっそり確認していた時期すらある。

あれ、実験で否定されてます。
嘘をついている人と正直に話している人で、目線の方向に差が出なかった。しかも複数回、別々の研究で。

にもかかわらず、いまだに一番よく出てくる。便利なんですよ、分かりやすくて。
分かりやすい話ほど、たいてい役に立たない。

目を逸らしていたのは、嘘つきじゃなかった

7年、面談室で人の目を見続けてきました。
たしかに、目を合わせない人はいます。かなりいる。

彼らが隠していたのは何だったか。
年収でした。あとは、学歴と、離婚歴と、体重。

嘘じゃないんです。事実を言いながら、恥じている。
44歳の男性会員が、収入の話になった瞬間だけ足元を見るようになる。書類には正確な数字が書いてある。改ざんはゼロ。
ただ、その数字を口に出す時、彼は自分が値踏みされていることを知ってた。

視線を外すのは、後ろめたさじゃなく、羞恥です。
この二つを混同すると、人間関係でかなり大きな事故を起こします。

不安な人ほど、逸らす回数が増える

もうひとつの理由が、緊張。
初対面で好かれたいと思っている人は、視線の処理に失敗します。

見つめすぎると圧が強い、逸らすと興味がないと思われる。
その調整を必死にやっているので、動きが不自然になる。

つまり、視線が落ち着かない相手は、こちらを重要な人物だと認識している可能性が高い。
どうでもいい相手の前では、人は堂々と目を見ます。失うものがないので。
疑うべきサインだと思っていたものが、実は好意の指標だったという、なかなか皮肉な話。

本当に嘘をついている人は、目を見つめてくる

嘘には、視線を管理する余力が要る

虚偽を口にしている最中の人間は、頭の中で複数の作業を同時に走らせています。
話の筋を組み立てる。過去の発言と矛盾しないか確認する。相手の反応を観察する。

そこに、もう一個乗るんですよ。
怪しまれないようにする、という作業が。

そして、怪しまれないための行動として全員が知っているのが、目を見ることです。
だから、意識して見つめてくる。
自然な会話では、視線は6割から7割くらい合って、あとは適当に外れます。ずっと合っているほうが、本当は異常。

交際歴をごまかした会員の、視線が動かなかった

実例を出します。
30代後半の男性会員。過去の交際について聞いた時、彼はまったく目を逸らしませんでした。
私は当時、正直な人だと思った。むしろ好感を持った。

後から、婚姻歴の申告漏れが発覚しました。
本人に確認した時の話し方、今も覚えてます。姿勢が変わらない。手も動かない。まばたきが減っていた。

固まっていたんです、全身が。
私はそれを、誠実さだと読み違えてた。

それ以来、私が見るのはまばたきです。
緊張すると増える。集中すると減る。嘘をついている時は、話している最中に減って、言い終わった直後にどっと増える。
あの落差だけは、意識で調整するのが難しいらしい。

見るなら、目より前後の落差

その人の平常時を知らないと、何も読めない

一番大事な前提を言います。
仕草から何かを読み取るには、比較対象が必要です。

普段どのくらい目を合わせる人なのか。まばたきの間隔は。話す速度は。
それを知らないまま、目を逸らしたから怪しい、と判定するのは無理があります。
初対面の相手に使えないんですよ、この手法は。

使えるのは、身近な人に対してだけ。
そして皮肉なことに、身近な人に対して使い始めた時点で、その関係はもう別のものになってます。

質問の直後の0.5秒だけを見る

それでも見たい人へ、実務を置いておきます。
見るのは、あなたが質問し終わった直後の0.5秒。

正直に答える人は、その瞬間に視線が一度どこかへ飛びます。記憶を探しに行くので。
準備された答えを持っている人は、飛びません。即座にこちらを向く。

返答の速さも同じで、早すぎるほうが不自然です。
本当のことを思い出す作業には、時間がかかるものなので。

見抜いた後に、必ず起きること

ここから、たぶん誰も書いていない話をします。

判定できても、関係は救えない

検索している人の多くは、身近な誰かを疑ってます。
彼氏、夫、子ども、部下。

仮に、目線から嘘を見抜けたとしましょう。
その次に、何をします?

問い詰めますか。証拠は、目線です。
そんな追及、成立しません。
逆に、言いがかりだと責められて、こちらが加害者になる。

私は面談で、パートナーの仕草を延々と分析する人を何人か見てきました。
全員、消耗しきってました。答えを持っているのに使えない、という状態がいちばん人を削るんですよ。

観察が始まった時点で、その関係は終わっている

もっと踏み込みます。
相手の目線を観察するようになった時点で、すでに何かが壊れてます。

壊したのは嘘じゃなく、観察のほうかもしれない。
見られていることは、伝わります。言葉にしなくても、必ず伝わる。
そして、監視されている相手は防御を固めます。防御が固まると、本当のことも言わなくなる。

疑いが嘘を生産する、という循環。
これ、私が担当した交際案件で何度も見ました。相手を疑い始めた人のところに、なぜか本物の隠しごとが増えていく。

私が夫に嘘をつかれて、気づかなかった話

3か月間、隠されていたもの

自分の話をします。
結婚して数年目、夫が3か月ほど、何かを隠していた時期がありました。

帰りが遅い日が増えて、電話をベランダで取るようになって。
私、気づかなかったんですよ。まったく。
目線どころか、違和感すら覚えていなかった。

種明かしをすると、副業を始めていました。
収入が不安定な時期で、うまくいく確証がなかったから言えなかった、と。
うまくいってから言うつもりだった、と。

言われた時、ぽかんとしました。
そのあと、じわじわ腹が立った。心配させたくないという理由で隠されるのが、一番腹立つやつでしょ。

見抜けなかったことに、いま感謝している

ただ、10年たって思うことがあります。
あの3か月、私が仕草を観察するタイプだったらどうなっていたか。

たぶん、浮気を疑っていました。
問い詰めて、否定されて、証拠を探して。
実際にはただの副業なのに、疑われた側は自分を守るためにもっと隠すようになる。
そこから壊れていく未来、簡単に想像できます。

私が鈍かったおかげで、何も起きませんでした。
はぁ…と思いますよ。褒められた話じゃない。
でも、見抜かなかったことが結果的に関係を守った。そういうことも、ある。

それでも確かめたい人へ

目じゃなく、話の細部を聞く

最後に、少しだけ実用的なことを。
嘘を確かめたいなら、観察より質問です。

用意された話には、中心しかありません。周辺が空っぽなんですよ。
その日の天気、店の混み具合、誰が最初に注文したか。
本当の記憶には、どうでもいい情報がくっついてます。作り話には、必要な部分しか入っていない。

細部を聞かれた時に、視線が動くかどうか。ここでようやく目線が使えますよ。

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