3日目の夜
渡した瞬間は、あんなに空気が良かったのに。
翌日、何もなし。二日目も。
三日目の夜、ふと嫌な考えがよぎる。
あれ、社交辞令だったのかな、と。
一通目には、内容と温度と長さの全部が乗る
考えてみてください。
最初のメッセージって、白紙なんですよ。文脈がゼロ。
何を書くか。どのくらいの長さにするか。敬語のままか、少し崩すか。絵文字を使うか。名乗るのか、いきなり本題か。
全部を自分で決めないといけない。
そして、外したら終わりだと思ってる。
二通目以降は楽なんですよ。相手の文体に合わせればいいので。
最初の一通だけが、異様に難易度が高い。ここで詰まる人が、想像の何倍もいます。
当日中に送ってきた男性会員の、その後
相談所にいた頃、お見合い後の連絡のやり取りを追える立場にいました。
成立から何時間で最初の連絡が発生したか、けっこう見えるんです。
当日の夜に送っている男性、多かった。
そして、その人たちの成婚率が特別高かったかというと、そうでもなかった。
早い人は、慣れてます。定型文を持ってるので。
本日はありがとうございました、楽しい時間でした、またお会いできれば。
この文面、私は何百回読んだか分かりません。誰に送っても成立する文章です。
一方、三日目に送ってきた男性の文面が、ぐしゃぐしゃなことがあった。
遅くなってすみません、何を書けばいいか分からなくて、と正直に書いてある。
そういう人のほうが、その後うまくいってました。
遅さは、慎重さの副産物であることがある。
そこそこ本気だから、テンプレを使えなかったわけです。
時間が経つほど、送信コストは上がる
一日目と四日目では、必要な文章の量が変わる
当日なら、今日はありがとう、で済みます。5秒。
二日目でも、まだ普通。
四日目になると、遅れた理由の説明が要る。
一週間経つと、それ自体が謝罪になる。
二週間なら、もう送れません。
時間が経つほど、書かなきゃいけない量が増えるんですよ。
そして人間は、面倒な作業を後回しにする。後回しにすると、さらに面倒になる。
雪だるまです。
だから三日目以降の沈黙は、気持ちが冷めたサインじゃない。
負債が膨らんでいるだけ。
彼の中であなたへの好意は、たぶん一ミリも減っていません。減っているのは、送れる自信のほう。
48時間を超えると、自力では戻れない
私の体感だと、境界線は二日です。
そこを超えた人は、自分から戻ってこられません。
何度も見ました。面談で、あの人に連絡できないまま三週間経ちましたと言う男性会員。
好意はあるんです。むしろ、あります。
ただ、時間が経ちすぎて、送る行為が事件になってしまった。
彼らに共通していたのが、下書きを書いていること。
書いて、消して、また書く。送信ボタンだけ押せない。
アプリの中に、送られなかった文章が溜まってる。
こちらから送るのは、負けじゃなく回収
待つほうが有利、という説を私は信じていません
追う女は損をする。
どこにでも書いてありますよね。
7年、婚活の現場にいて、この説で得をした人を見ていません。
むしろ、待っている間に別の人と話が進んで消えた縁を、数え切れないほど見ました。
沈黙を破る行為には、価値があります。
相手が動けなくなっている状態を、解除する作業なので。
彼を追い詰めるんじゃない。逃がしてあげてるんですよ。
送るなら、返信義務を発生させない文
送っていいけど、質問形にしないでください。
連絡ないけど大丈夫?は最悪です。
これ、返信した瞬間に言い訳から始めないといけない構造になってる。
男は、自分の非を認める作業が死ぬほど苦手なので。
効くのは、こんな形。
この前話してたお店、行ってきた。普通だった(笑)
返さなくても成立します。返してもいい。
彼は、遅れたことに触れずに会話に戻れる。
逃げ道を用意しておくと、そこからちゃんと出てきます。
本当の判定は、彼が送ってきた最初の一通に出る
速度じゃなく、中身を見る
返信が来た。ほっとする。ここで終わらないでください。
判定材料は、そこにあります。
遅れてごめん、で始まって、そのまま次の予定の話に入るなら、望みは濃い。
遅れた理由を長々と説明してくるなら、その人は誠実だけど動きが遅いタイプです。
そして、こちらの話に一切触れずに、当たり障りのない返事だけしてくるなら、それは義理です。
返信の速さは、あまり意味を持ちません。
即レスは、感情がゼロだから出せる速度でもあるので。
二週間経っても何もないなら、それも回答
線引きも書いておきます。
こちらから一通送って、それでも何も返ってこない。
そこで終わりにしていいです。
返ってこないという返事も、立派な回答なので。
好意がある人は、たとえ遅れても、こちらから声をかければ必ず飛びついてきます。むしろ感謝されます。助かった、と。
それがないなら、順番が低かった。
残酷ですけど、二週間宙吊りになるより、はるかに親切な結末です。
渡した自分を、恥じている人へ
渡す行為は、痛くない
たぶん、この記事を読んでいる人の何割かは、こう思ってます。
自分から渡したのに来ないって、私が勘違いしてたってことだよね、と。
違います。
連絡先を渡すという行為、けっこうな勇気が要るでしょ。
その勇気を出した事実は、相手が動いたかどうかとは無関係に存在してます。
面談で、男性会員が言っていた言葉があります。
連絡先をもらったのが嬉しすぎて、逆に慎重になりました、と。
嬉しさが、行動を止めることがあるんですよ。人間、変な生き物なので。
私が渡して、10日待った話
自分の恥もさらします。
20代の頃、飲み会で気になった人にメールアドレスを渡しました。当時はまだそういう時代でした。
紙に書いて、震える手で。
三日、何もなし。
五日目には、渡した瞬間の自分の顔を思い出して悶えてました。
重かったかな、いや、あれは完全に痛かった
一週間経った時点で、もう終わったと判断して、忘れることにした。
十日目の夜、届きました。
何を書けばいいか分からなくて、と最初の一行に書いてあった。
その人とは結局続きませんでしたけど、あの十日間の意味は覚えてます。
彼は、私に興味がなかったんじゃない。私に何を書くべきか、十日考えていた。
どちらも同じ沈黙に見えるのに、中身がまったく違う。外からは見分けがつかない。
今夜、何をすればいいか
通知を待つのをやめて、期限を決める
まず、いつまで待つかを自分で決めてください。
一週間なら一週間。
期限を決めると、待つ時間の質が変わります。
無期限で待つのがいちばんきついので。終わりが見えない待機は、人を削ります。
期限が来たら、一通送る。
それで反応がなければ、閉じる。
判定を彼に預けたままにしないこと。ここだけが、自分でコントロールできる部分ですからね。
