名前をつけて保存と上書き保存、あれ逆です
男は名前をつけて保存、女は上書き保存。
どこかで一度は見たはず。うまいこと言うなあ、と当時の私も思ってました。
7年、婚活の現場にいて、私はこの説を完全に捨てました。
実際に上書きしているのは、男のほうです。
再婚希望の面談で、元妻の話が止まらなくなるのは男性のほう
再婚を希望して入会する人には、前の結婚について話してもらう時間があります。
必要な確認なので、こちらから聞く。
男性は、止まらなくなることが多かった。
最初は淡々と経緯を話してるんです。それが、ある一点から急に細部に入る。式の日の天気とか、新婚旅行で乗り遅れた電車とか。私は何度も、そこまでは聞いてません、と言いそうになりました。
女性は、逆。
5分で終わります。事実だけ並べて、はい次、という顔。
私が最初にこの差を見た時、女性のほうが冷たいのかと思った。とんでもない勘違いでした。
女が覚えているのは事実、男が覚えているのは場面
掘り下げていくと、記憶の質が違うんですよ。
女性は、日付も金額も相手の親の口癖も、驚くほど正確に覚えてる。ただし語る時に感情が乗っていない。書類を読み上げてるみたいな喋り方。
男性は事実が曖昧です。何年前でしたっけ、と本人が首をひねる。
でも、その場の空気だけ鮮明に残ってる。
彼女がベランダで洗濯物を干していた朝の光の感じ、みたいな話が出てくる。ここでいつも、ずーんときました。
保存しているのは女性。
再生しているのが男性。
持っているかどうかじゃなく、開く回数の差なんです。女性はフォルダを閉じたまま10年放置できる。男性は月に一度開いて、また閉じる。
立ち直りが早く見えるのは、別れる前に終わっているから
じゃあ、なぜ女性は早く立ち直るように見えるのか。
早くないです。始まりが早いだけ。
女性は3か月前に泣き終わっている
交際終了を申し出てきた女性会員に、いつから考えていたかを聞くのが私の仕事でした。
返ってくる答え、平均して3か月前。長い人は半年。
その3か月、彼女たちは何をしていたか。
夜中に泣いてます。理由を書き出して、消して、また書いて。友達に相談して、引き止められて、それでも消えなくて。
別れを告げる頃には、涙が枯れてる。
だから当日、あっさりして見える。
男性側は、あの冷静さに打ちのめされるんです。俺はこんなに苦しいのに、と。
苦しみの総量は変わりません。彼女は先に払い終えただけ。
27歳の男性会員が言っていた言葉が、今も残ってます。
別れ話の時、彼女がもう他人の顔をしてたんですよ、と。
他人の顔になるまでに、彼女は3か月かけてた。彼はその工程を1ミリも見ていない。
男性の失恋は、別れた日から始まる
男は鈍い、という話にしたくないんですけど、実際そういう構造になってます。
彼女の中で終わりに向かって工事が進んでいる期間、彼は普通に暮らしてる。前兆に気づかない。気づいてても、まさか、で処理する。
そして当日、いきなりゼロから始まる。
女性が3か月前に着手した作業を、その日から一人で始めるわけです。
半年後に男が引きずっている、というのは正しい観察。
ただ、女性も半年前は同じ状態でした。時差が半年あるだけ。
同じ失恋を、二人が違う季節に体験してる。すれ違うに決まってる。
ずれた時期に、二人は違うものを探している
探しているものも違う。ここも噛み合わない。
女は理由を探し、男は再生ボタンを押す
女性が求めるのは、説明です。
なぜこうなったのか。どこで間違えたのか。あの発言はどういう意味だったのか。
言語で決着させようとする。だから友達と何時間も喋る。喋ることで一本の物語に整えていく。整い切った瞬間、フォルダを閉じられる。
男性がやるのは、再生。
説明を求めていません。求めているのは、あの時間にもう一度入ることです。
だから写真を消せない。プレイリストを変えられない。
言葉にしないから、いつまでも整理されない。整理されないものは、いつまでも生っぽいまま残る。
女性の回復が言語処理で、男性の回復が時間の経過待ち。
方式が違うので、比べても意味がないんですよね。
連絡が来るタイミングが半年ずれる仕組み
これ、実務的に一番使えるところかもしれない。
別れた後の連絡は、たいてい男性から来ます。時期は半年から1年後。
その頃、女性側はとっくに別の生活に入ってる。
逆に、女性が振り返るのはもっと後。3年とか5年とか。
しかも連絡はしません。SNSを一度だけ見て、既婚だと知って、それで終わる。
確認したいだけで、戻りたいわけじゃないので。
男の連絡は、扉を開けに来る行為。
女の確認は、鍵がかかっているかを見に来る行為。
似た動作なのに、目的が真逆。ここを読み違えて期待した人を、何人も見てきました。
性別より、切り出した側かどうかの差がでかい
ここまで男女差の話をしておいて、ひっくり返します。
性別の差より、はるかに大きい変数がある。
振った側の失恋は、遅れて請求書が届く
別れを告げた側は、その瞬間が一番楽です。決断が終わって、肩が軽くなる。
問題はその後。
振られた側は、泣ける。周囲も慰めてくれる。回復の手順が社会的に用意されてる。
振った側には、それがない。悲しむ資格がないことになってるので。
自分で選んだんでしょ、と言われて終わり。
だから処理が遅れます。泣けないまま、感情だけが積み上がる。
私の体感では、振った側のほうが引きずる期間は長いです。表に出ないだけで。
男か女かより、この差のほうが症状を左右してました。
私が別れを告げた3か月後、風呂場で泣いた
自分の話をします。
20代の頃、こちらから別れを切り出した相手がいました。理由は今もうまく説明できない。ただ、続けられないと思った。
その日は、すっきりしてたんですよ。友達と焼肉まで食べに行った。
3か月後、風呂に入っていて、何の前触れもなく来ました。
ぐしゃっと顔が崩れて、シャワーの音に紛らせて泣いた。
自分でも、なんで今なのか分からない。あの人に戻りたいわけでもない。
何が悲しいのか整理できないまま、湯船の縁に額をつけてしばらく動けませんでした。
はぁ…と息を吐いて、髪を乾かして、翌日は普通に出勤してます。
あの3か月、私は失恋していないことになっていた。誰にも言えなかったし、言う資格もない気がしてた。
振った側は、遅れて、しかも一人で払う。
これは男女の話じゃない。役割の話です。
23歳の失恋で、友達の慰め方が真っ二つに割れた
もうひとつ、生々しいやつを。
女友達は理由を掘り、男友達はカラオケに連れて行った
23歳。今度は振られた側でした。
女友達に電話したら、3時間つき合ってくれました。ずっと質問されるんです。最後に何て言われたの、その前の週はどうだった、彼の親とは会ってた?
掘る、掘る、掘る。
一方、男友達に話した時。
うわ、それはきついな、で一言。次の土曜に、なぜかカラオケに連行されました。
失恋の話、一切なし。ひたすら古い曲を入れてくる。私が入れた曲に、下手くそと言ってくる。
腹が立って、笑って、帰り道でぽつんと現実に戻った。
効いたのは、意外なほうだった
当時の私は、掘ってくれた女友達のほうがありがたかった。
ただ、後から効いてきたのはカラオケでした。
掘る作業は、傷の形を明確にします。明確になると、しばらくそこばかり見るようになる。
何も聞かずに時間を埋める行為は、傷を放置します。放置された傷は、勝手にかさぶたになる。
男性の立ち直り方が浅いと言われがちなのは、この放置方式が説明不能だからだと思ってる。
言葉にしないだけで、何もしていないわけじゃない。
今、元カレはもう平気そうに見えると感じている人へ。平気そうに見える方式で処理してるだけの可能性が、かなり高いですよ。
