包容力のある女性になりたいんです。
面談でそう言われるたび、私は内心で身構えていました。だいたい、その人が思ってる包容力と、男が求めてる包容力が別物なので。
だいたいイメージするのは、優しくて、否定しなくて、話を全部受け止めてくれる女性でしょ。母性、みたいな言葉とセットで語られがちなやつがモテるという前提、まずそこを壊すところから始めます。
否定しない女性は、実はあまり選ばれない
断言します。何でもうんうんと聞いてくれる女性は、恋愛市場で驚くほど弱い。
理由は単純で、判断を委ねられるから。
男は何でもいいよと言われるのが一番困る生き物です。よく言われるやつですけど、あれ本当です。
実際、私が担当した女性で、絶対に否定しない人がいました。三十代後半、性格は文句なく良い。
お見合いの成立率は高いんです。でも仮交際で必ず止まる。
男性側の終了理由に、こう書かれていました。
何を考えているのかわからない。
全肯定は、無反応と同じ意味に読まれるんですよ。ゾッとする話でしょ。
本物の包容力は、受け止める力じゃない
じゃあ何なのか。
私の結論は、相手の失敗を出来事として処理できる力。これに尽きます。
男が本当に見ているのは、うまくいかなかったときの反応
デートで店選びをミスった。予約が取れてなかった。道に迷った。
その瞬間の女性の顔を、男はものすごく見ています。
ここで固まる女性、無理に笑う女性、大丈夫だよと過剰に慰める女性。全部アウトです。
慰めがなぜアウトかというと、失敗を失敗として確定させてしまうから。フォローされた時点で、彼は自分がやらかしたことを二重に自覚する。
うまい人は、話題を変えます。しかもナチュラルに。
じゃあ歩こっか、こっちの通り歩いたことなかったし、みたいな。
私の担当会員さんで一人、これが天才的に上手い方がいました。四十代の女性です。
その人と会った男性は、ほぼ全員が継続を希望した。全員ですよ。異常な数字でした。
あのときの車内で、私が見た光景
その会員さんとお見合い後にお話しした際、こんな話をしてくれました。
以前お付き合いしていた人が、運転中に高速の出口を間違えたことがあって。
彼はすごく焦って謝ったらしいんです。
彼女が言ったのは、ラッキー、この道きれいだね、の一言だけ。
それだけ。
その彼、後年になって、あのとき結婚しようと決めたと打ち明けたそうです。高速の出口で。
(この話を聞いたとき、私、鳥肌が立ちました。かなわないなと思った)
包容力って、抱きしめることじゃなくて、事故を風景に変える力なんだなと。
包容力のある女性に共通する三つの特徴
現場で見てきた共通点。
一つめ、自分の機嫌を自分で処理している
これが土台。ここが崩れてる人に包容力は出せません。
不機嫌をぶつけないという意味じゃないですよ。不機嫌になった理由を、自分で説明できるという意味です。
今ちょっとイライラしてる、たぶん寝不足、と言える人。
言える人といると、相手は安心します。自分のせいじゃないとわかるので。
逆に、黙って空気を重くする人。あれが一番、男の精神を削ります。何が原因か探し続けることになるから。
二つめ、意見を持っていて、しかも先に出す
意外でしょ。包容力の話をしてるのに、意見の話。
でもここが決定的なんです。
自分の意見を先に置ける人だけが、相手の意見を安全に受け止められる。
私はイタリアンがいいけど、あなたは?
この形が言える女性は強い。自分の立場を明かしてるから、相手も本音を出せる。
何でもいいよ、の人は受け止めてるように見えて、実は相手を試してます。無意識に。
私はそう見ていました。散々見てきたので。
三つめ、相手の弱さを記憶しても、持ち出さない
これが一番むずかしい。そして一番効く。
男性が弱音を吐いた日のことを、覚えている。でも二度と話題にしない。
ここができる人が、本当に少ないんです。
喧嘩したときに、あのとき泣いてたくせに、と言ってしまう人。私も昔やりました。最悪です。
一度でもそれをやると、相手は二度と弱音を吐きません。永久に。
弱さを預けられる相手だと思われること。それが包容力の正体で、預かった弱さを武器にしない誓いが、その中身。
ここから炎上覚悟の話をします
包容力を目指すこと自体が危険だと、私は思ってる。
包容力は目指すものじゃなく、余裕の副産物
包容力のある女性になろうと努力してる人、たいてい失敗します。
なぜなら、努力してる時点で余裕がないから。
私が見てきた包容力のある女性たちは、全員が別のことに夢中でした。仕事だったり、趣味だったり、家族だったり。
恋愛が人生の三番目くらいの位置にある。だから彼氏の失敗が、そこまで大きな事件にならない。
言い方は悪いけど、どうでもいい部分があるんですよ。だから優しくできる。
これを聞いて、そんなの本当の優しさじゃないと思う人もいるでしょ。私も昔はそう思ってました。
でも現実は、必死な優しさより、余裕から出る雑な優しさのほうが人を癒します。悔しいけど。
男性が求める包容力と、モテたい女性が磨く包容力のズレ
相談所での傾向として、女性が磨こうとする包容力は、聞く力に偏ります。
男性が求めてるのは、その手前です。判断してくれる力。
どっちの店にする、何時に集合する、そういう場面でスパッと決められる女性。あれ、めちゃくちゃモテます。
決断は優しさの一種なんですよ。相手の脳の負荷を引き受けてるので。
決められない女性が、話だけたくさん聞いてくれても、疲れは取れません。
私が包容力を完全に失っていた時期の話
偉そうに書いてますけど、私自身は最悪な時期があります。
子どもが生まれて半年くらい。睡眠が二時間ずつしか取れなくて、夫が仕事の愚痴を言った瞬間に、こっちのほうが大変なんだけど、と言い返しました。
その後の夫の顔、今でも思い出せます。無言でした。
それから半年、夫は一切仕事の話をしなくなった。
はぁ…私が閉じたんですよね、あの扉。
包容力なんてものは、体力と睡眠の関数です。精神論じゃない。
だから今、余裕がなくて優しくできない自分を責めてる人がいたら、まず寝てほしい。マジで。
性格の問題だと思ってるものの多くが、体調の問題です。
結局、選ばれているのはどういう人なのか
七年見て、成婚していった女性たちを思い返すと。
優しい人ではなかった。むしろ、はっきり物を言う人が多かった。
共通していたのは、相手が失敗したときに空気を重くしなかったこと。それだけです。
人は、自分がダメだった瞬間を一緒にいた相手の顔で記憶します。
そのときに、なんてことないよという表情ができた人が、選ばれてきた。
だから包容力を身につけたいなら、優しくなろうとしなくていい。
誰かがミスした瞬間に、笑い飛ばせる自分でいられるかどうか。そこだけ磨けば足ります。
そのために必要なのは、たぶん人格じゃなくて、自分の生活が満たされてることのほうなんですよ。
