さっきまで笑ってたのに、急に不機嫌になった。何が引き金だったのか、分からない。彼女の感情の波に、正直、疲れてる。
結婚相談所で7年、感情表現の豊かなカップルと、感情の波に苦しむカップル、両方を見てきた。最初に言っておきたい。疲れの原因は、感情の強さそのものじゃないことが多い。
疲れるのは、感情の強さじゃなく、理由の見えなさ
喜怒哀楽がはっきりしてる人と一緒にいて、必ずしも疲れるわけじゃない。よく笑い、よく泣き、よく怒る人でも、一緒にいて心地いい相手は、普通にいる。
本当に消耗するのは、感情が動く理由が、こちらから見えない時。何が引き金だったのか分からないまま、機嫌が急変すると、次に何が起きるか予測できなくなる。予測できない状態に居続けることが、感情の強さそのものより、はるかに、人を疲弊させるんだ。
起伏の激しさには、二種類ある
理由があって揺れる人と、理由が見えずに揺れる人
感情の起伏が激しい、とひとくくりにされるものの中には、まったく違う二つのパターンが混ざってる。
一つは、揺れの大きさは激しくても、理由がはっきりしてる人。約束を守られなかった、話を遮られた、大事にされてないと感じた。反応は大きくても、原因を辿れば、必ず、具体的な出来事に行き着く。
もう一つは、揺れの理由が、本人にもうまく説明できないタイプ。何が引っかかったのか、後から聞いても、はっきりしない。前者は、対処できる。原因が分かれば、そこに向き合えばいい。後者は、対処のしようがない。原因が見えないものに、対策は立てられないから。
疲れの正体は、常時警戒というコスト
理由が見えないタイプの起伏と付き合ってると、人は、常に、次の地雷を探し続けるようになる。今の言い方は大丈夫だったか、今の表情は変じゃなかったか。会話のたびに、無意識のうちに、点検作業をしてる状態。
この、常時警戒の状態こそが、本当の疲労の正体。感情そのものにぶつかる痛みより、四六時中、警戒を解けない状態でいることのほうが、じわじわと、体力を削っていく。24時間、気の抜けない仕事をしてるのと同じで、休む暇がないんだ。
相談所で見た、二つの「起伏の激しさ」
成婚後の夫婦を、二組、比べたことがある。一組目の妻は、感情表現がとても豊かで、嬉しい時は大げさに喜び、悲しい時は人目をはばからず泣く人だった。でも、夫は、疲れてる様子がなかった。理由を聞くと、なんで怒ってるか、だいたい分かるんですよ、と。原因が見える揺れは、対処さえできれば、消耗につながらなかった。
もう一組は、妻の機嫌が、頻繁に、はっきりした理由もなく変わる家だった。夫は、面談のたびに、正直、家にいるのが緊張する、と話してた。何が引き金になるか分からないまま、常に顔色をうかがい続ける生活は、彼を、着実にすり減らしてた。
同じ、感情の起伏が激しい、という言葉でも、疲労への影響は、まったく別物だった。
感情が豊かなことと、不安定なことは、別の話
ここで、はっきりさせておきたい。感情豊かであることは、それ自体、悪いことじゃない。むしろ、喜怒哀楽をちゃんと表に出せる人は、共感力が高く、一緒にいて、人間らしい温かさを感じられることが多い。
問題になるのは、感情豊かさじゃなくて、不安定さのほう。揺れが、外の出来事と切り離されて、予測不能なタイミングで、しかも、長く尾を引くように起きる場合。ここを混同して、感情表現が豊かな女性全般を、疲れる、と一括りにするのは、ちょっと違うと思う。
揺れが大きすぎて、本人も苦しんでいる場合
もう一つ、大事な視点を置いておきたい。理由の見えない揺れに、本人自身が、いちばん振り回されて、苦しんでることも、実際には多い。
なぜあんなに感情的になったのか、自分でもよく分からない、後から自己嫌悪に陥る、という声を、面談で何度も聞いてきた。もし、揺れの大きさが、日常生活や、本人の心身にまで、長く負担をかけているようなら、それは、二人の関係だけの問題じゃなくなってくる。専門家に相談することは、決して大げさなことじゃなくて、本人にとっても、パートナーにとっても、状況を整理する、有効な選択肢の一つだと思う。
見るべきは、揺れの後、戻ってこられるかどうか
最後に、判断材料を、一つだけ渡しておきたい。感情が動いた後、時間が経てば、彼女は、ちゃんと落ち着いた状態に戻ってこられるか。
揺れた後、しばらくすれば、また普段通りの会話ができる。これは、健全な範囲の起伏。揺れが、何日も尾を引いて、日常そのものを覆い尽くしてしまうなら、それは、感情の強さの問題というより、戻ってくるための、何らかの助けが必要な状態なのかもしれない。
感情の強さで、疲れを測らないでほしい。見るべきは、理由が見えるか、そして、揺れた後、ちゃんと着地できるかどうか。それだけなんだ。
