会話は弾んでた。よく笑ってくれたし、目もちゃんと合ってた。なのに、別れ際、連絡先を聞かれなかった。
あんなに脈ありっぽかったのに、どうして。
その場の空気は最高だったのに、その先の一歩が出ない男性を、何百人と見てきたがあれは、脈なしのサインではない。
その場の脈ありと、連絡先を聞く行動は、別の筋肉
会話中に笑う、目を合わせる、前のめりになる。これは、楽しい、と感じた瞬間に、体が勝手に反応する動き。ほとんど、意識せずに出てくる。
一方、連絡先を聞く、という行動は、まったく別の場所から出てくる。今、楽しい、じゃなくて、この先も、この人とつながりたい、という未来への意志を、言葉と行動に変換する作業。前者は、反射に近い筋肉。後者は、意志を持って踏み出す、まったく別の筋肉なんだ。
同じ人の中に、この二つの筋肉が、同じ強さで備わってるとは限らない。楽しい、はすぐ出せても、動く、が出せない人は、普通にいる。
なぜ、聞く瞬間だけ、ハードルが跳ね上がるのか
それまでの態度は、いつでも「ただの親切」で逃げられる
会話中の好意的な態度って、実は、いくらでも言い訳が効くようにできてる。笑ったのは、話が面白かったから。目を見たのは、礼儀として。前のめりだったのは、ただの性格。全部、好意以外の理由で、説明がついてしまう。
この、いつでも撤退できる余地があることが、態度で好意を示すことへのハードルを、低くしてる。
連絡先を聞いた瞬間だけ、言い訳が効かなくなる
ところが、連絡先を聞く、という行動だけは、違う。これをやった瞬間、また会いたい、という意志が、誰の目にも明らかになる。もう、ただの親切、では言い逃れできない。
そして、断られた時、逃げ場がない。連絡先はいりません、と言われたら、それは、まぎれもない、明確な拒絶になる。会話中の笑顔と違って、これだけは、演技のせいにできない。だからこそ、聞くという行為だけが、極端に重くなる。楽しい空気の中にいながら、この一歩だけが、崖の縁みたいに、急に切り立って見えるんだ。
聞かなかったことは、脈なしの証拠として弱すぎる
つまり、連絡先を聞かなかった、という事実は、あなたへの興味の薄さより、彼の中にある、崖の縁への恐怖の強さを、表してることが多い。
興味の強さと、行動に移す勇気は、実は、別の変数。とても興味があるのに、行動する勇気が足りない人もいれば、それほど興味がないのに、勇気だけはある人もいる。連絡先を聞かなかった、という一点だけを見て、脈なし、と判定するのは、変数を一個混同してる。
相談所という仕組みが、教えてくれたこと
これ、相談所というシステムそのものが、証明してくれたことでもある。
お見合いの現場では、連絡先の交換や、次の交際希望の申し込みは、本人同士が直接やり取りするんじゃなくて、アドバイザーが間に入って仲介する仕組みになってる。この仕組みがあるだけで、普段は連絡先ひとつ聞けないような、内気な男性会員が、驚くほど積極的に、次の交際を希望してくることが多かった。
仲介者がいることで、崖の縁に立たなくて済む。拒絶された時の痛みが、直接会話でのそれより、ずっと和らぐから。あの積極性を見るたびに、思ってた。彼らの興味は、最初から、そこにちゃんとあったんだ、と。足りなかったのは、興味じゃなくて、崖を飛び越える時の、緩衝材だけだった。
見るべきは、聞いたかどうかじゃなく、その後の動き
とはいえ、聞かなかった、という事実だけで、何も判断できないわけでもない。もう一つ、見るべき材料がある。その後、彼が、何らかの形で、あなたと再びつながろうとする、間接的な動きを見せるかどうか。
共通の知人に、それとなく、あなたのことを聞いてみる。同じ場所に、また偶然を装って現れる。SNSを探して、そっとフォローする。直接の一歩は踏み出せなくても、間接的な糸を、そっと伸ばしてくる人は、興味が本物である確率が高い。
逆に、その場限りで、その後、何の気配もなければ、それは、崖への恐怖より、単純に興味が続かなかった、という可能性の方が高くなる。聞いたかどうかより、その後、何かしらの形跡を残そうとしたかどうか。そこを見てほしい。
待つより、こちらから差し出す方が早い
彼が崖の縁で固まってるだけなら、いちばん早い解決策は、あなたが先に、その崖を、埋めてあげること。
連絡先、良ければ交換しませんか、と、こちらから、さらっと切り出してみる。彼にとって、この一言は、ものすごく大きな橋になる。あなたが崖の反対側から手を伸ばせば、彼は、飛び越える勇気を出さなくても、その手を掴むだけで、こちら側に来られる。
待ち続けて、彼の勇気が育つのを祈るより、自分から差し出した方が、ずっと早く、ずっと確実だよ。
