何を考えてるか、分からない。楽しそうなのに、どこか遠い。近づいたと思ったら、また靄の向こうに戻ってる。掴みどころがない女、と検索した手は、たぶん少し疲れてる。
あるいは、掴みどころがないと言われた側で、これは直すべき欠点なのかと確かめたくて来た人も。
結婚相談所で7年、感想シートに掴みどころがなかったと書かれた女性たちと、その後の顛末を両方見てきた。最初に言っておく。掴みどころがない、は相手の欠点を指してるんじゃない。ほとんどの場合、掴もうとする側の、見方の話なんだ。
掴みどころがない、は相手の欠点じゃない
掴みどころ、という言葉に、すでに問題がある。
人を掴む、という発想は、相手を、一枚の絵の中に収めようとしてる。こういう人、と分類できれば、あとは予測できる。コントロールできる。安心できる。だから掴みたい。
でも、人間は一枚の絵に収まらない。職場での顔、家族の前での顔、初対面の顔、深夜の顔。全部、同じ人間から出てくるのに、それぞれ違う。光を当てる角度によって、別の色が出るプリズムみたいな存在。
掴みどころがない女性は、そのプリズムの面が多いだけなんだ。一枚の絵に収めようとするから、余った面が、どこか分からない場所へ消えるように見える。問題は、絵の外にはみ出てる部分にあるんじゃなくて、一枚に収めようとしてる側の、額縁の小ささにあるんだよ。
掴もうとする前に、見ようとしているか
分類したいだけの男と、理解したい男
掴もうとする、と、見ようとする、は、全然違う行為なんだけど、混同されがち。
掴もうとする男は、相手の情報を集めて、このタイプだ、と分類できた瞬間に安心する。分類できれば、次の手が読める。だから、あなたってこういう人だよね、という確定を急ぐ。
見ようとする男は、分類を急がない。今日のこの顔と、先週の顔が違っても、へえ、そういう面もあるんだと、むしろ更新する。終わりのない観察を、面白がってる。
掴みどころがない女性の前に来ると、この二種類は、まったく違う結末を迎えるの。
掴みどころがないと言う男の、正体
感想シートに、掴みどころがなかった、と書いた男性の面談を、何件かやってきた。話を聞くと、ほぼ共通してることがある。自分が何を好きかは言えるけど、相手の話になると、あまり聞いてなかった、という。
自分の話を展開しながら、相手の反応を、脈あり、脈なし、の二択で測ってた。相手のどこが好きかを聞いても、雰囲気、とか、なんか気になる、しか出てこない。つまり、相手をまだ見てない。見てないから、掴めない。
掴みどころがないは、相手の説明じゃなくて、自分がまだ見ていませんの、宣言だったりする。言葉が指してる先が、逆なんだ。
掴みどころがない女の、二つの種類
カメレオン型
ただし、本人側にも、二つのパターンがある。まず一つ目。
相手に合わせすぎて、どの顔が本当の自分か、自分でも分からなくなってるタイプ。上司の前、彼氏の前、初対面の前。それぞれに最適化された顔を出しすぎて、全員から、なんか本音が見えない、と言われる。
これは、以前書いた心を開けない、や、無難という名の消しゴム、と根っこが同じで、嫌われたくなくて自分を消した結果、掴む場所ごと消してしまってる。取っ手をなくした器。見た目は整ってるのに、手がかかる場所がどこにもない。
このタイプへの処方は、フレネミー記事や、決め手の記事でも書いたのと同じ方向で、恥ずかしくて隠してた側こそが、取っ手になる。工場夜景が好き、なあの話の延長。
全部は見せない多面体型
二つ目は、全然違う。最初から、全部は見せないと決めてる型。
これは戦略で、欠点じゃない。初対面で全部を開示する人は、むしろ地雷が多い。会うたびに新しい面が出てくる人と、初日に全部言い切る人、どちらと長く付き合えるか。答えは明らか!
この型の女性は、相手を測りながら、開示のペースを自分でコントロールしてる。見極める前に全部は渡さない、という賢さ。登山で言えば、頂上まで一気に見せないで、次のルートを少しずつ開いていく地形。全部見えたら、登り切ったら終わりになるから、登り続けられる山でいようとしてる。
掴みどころがないように見えて、見せる順番を、ちゃんと設計してる人なんだ。
感想欄では、掴みどころがないが最も成婚に近かった
現場で、ちょっと意外な傾向があった。
感想シートの評価として、掴みどころがなかった、は、表面上は残念な評価に見える。でも、その後に交際申請が来る確率は、かなり高かった。いい人でしたが交際に進まない確率より、はるかに高い。
いい人でした、は婚活の霧消の前奏曲と呼んでた。
掴みどころがないは、続きが気になってる、の別の言い方なんだ。もっと見たい、という欲が出てる状態。見切れてないから、また会って確かめたい。結局これは、相手への関心の裏返しで、いい人でしたに比べて、エンジンがかかってる。
全部見えた相手には、次会う理由が薄くなる。全部見えない相手には、また行く理由が残る。万華鏡は、角度を変えるたびに違う模様が出るから、手を止められない。
掴まれたくないんじゃなく、掴まれ方を選んでいる
掴みどころがない女性に、近づけない、と感じてる男性に、聞いてみたいことがある。あなたは今、何を掴もうとしてるか。
彼女の全体像を、一枚の絵に収めようとしてるなら、たぶん一生収まらない。収まることに、本人が関心がないから。
でも、今日の彼女を、今日の分だけ見ようとしてるなら、話が違う。今日の角度から見える面を、面白がれる人に、多面体は少しずつ別の面を向けてくる。全部を一気に渡すんじゃなくて、見てくれてる人に、次の面を出していく。掴まれたくないんじゃなくて、全部を一気に掴もうとしてくる人に、渡す気がないだけなんだ。
掴もうとする手を、開いて、ただ見る手に変えた瞬間に、相手の見え方が変わることがあるよ。
