職場の、あの人のことを、つい目で追ってる。LINEの通知が、ちょっと嬉しい。体には何もしてない。でも、これって…浮気なのか?
結婚相談所で7年、結婚に至る前後の心の動きを、たくさん見てきた。最初に、立ち位置をはっきりさせる。心の浮気の本体は、相手の女性じゃない。家庭で枯れた、自分自身の燃料切れのほうなんだ。
線は、心が動いた瞬間じゃなく、その先の行動に引かれる
まず、いちばんもやもやする問いから。心が他の人に動いたら、それはもう浮気なのか。
正直に言うと、心が動くこと自体は、止められない。既婚であっても、人間は、魅力的な誰かに、ふっと心を持っていかれる。これは天気みたいな自然現象で、意志で完全に消すのは無理がある。動いた、というだけで自分を責めても、あまり意味はない。
線が引かれるのは、感情じゃなく、行動の側なんだ。
心が動いたあと、その火を、自分で消そうとするか、それとも、薪をくべて育てるか。連絡の頻度を上げる、二人きりの口実を探す、妄想の中で関係を進める。火を大きくする行動を選んだ瞬間に、ただの自然現象が、自分の意志による浮気に変わる。
だから、目で追ってしまった、通知が嬉しい、までは、まだ天気。問題は、その先で、あなたが傘をさすか、わざと雨に濡れにいくか、なんだ。
相手の女性は本体じゃない。ただの受け皿
心の浮気で、いちばん勘違いされてること。それは、相手の女性が、特別な運命の人だ、という思い込み。
たいていの場合、彼女は、運命じゃない。あなたの中で枯れていた何かを、たまたま満たしてくれる、受け皿だったんだ。
考えてみてほしい。もし家庭で、十分に満たされていたら、その人がどんなに魅力的でも、ここまで心は動かない。心が外に漏れ出すのは、家庭という器に、ひびが入って、中身が減ってるからなの。彼女に強烈に惹かれてるんじゃなくて、あなたが渇いていて、たまたま近くにあった水に、手が伸びただけ。
ここを取り違えると、相手の女性を、運命の相手だと美化して、人生を懸ける価値があると錯覚する。でも、本当に向き合うべきは、彼女の魅力じゃなく、なぜ自分の器が、こんなに渇いているのか、のほうなんだ。
心の浮気を燃やす、三つの燃料
家庭で、透明な存在になっている
一つ目の燃料。家庭の中で、自分が、空気のように扱われている感覚。
おかえりも、ありがとうも、いつのまにか消えて、夫である前に、ATMか、家事の分担要員になっている。誰も自分を、一人の男として見ていない。その透明化が進んだ家に帰る人ほど、外で、自分を名前で呼んで、目を見て話してくれる相手に、ぐらりとくる。
心の浮気は、強烈な恋というより、透明だった自分が、誰かに見えてもらえた、という安堵だったりする。承認の補給に、外の窓口へ通ってる状態なんだ。
ときめいていた頃の自分への、郷愁
二つ目は、相手というより、過去の自分への郷愁。
結婚生活が長くなると、ドキドキとか、誰かを好きで眠れない、みたいな感覚が、遠い記憶になる。心の浮気で蘇るのは、相手への恋心の形をした、ときめいていた頃の若い自分なんだ。
だから、惹かれてるようでいて、本当に取り戻したいのは、その人ではなく、まだ何者かになれそうだった頃の、自分の感情のほう。失われた青春に、その人の顔を当てはめてる、ということが、けっこうある。
まだ異性として見られる、という確認欲
三つ目は、自分はまだイケる、という確認欲。
年を取って、夫として父として、異性の対象から外れていく感覚は、思いのほか応える。そんな時、外の誰かが、好意の素振りを見せてくれると、自分はまだ男として終わってない、という証明書をもらった気になる。
これは、相手が好き、というより、相手の好意を使って、自分の価値を確認してるだけ。相手の女性は、その確認のための、鏡の役割を担わされてる。
三つ並べて分かるとおり、燃料はどれも、相手の女性の中にはない。全部、あなたの家庭と、あなた自身の側にあるんだ。相手を変えても、燃料が残ってる限り、また別の誰かで、同じ火がつく。
完璧に隠した会員の家庭が、結局冷えた話
バレなければセーフ、と思ってる人に、現場で見た話をひとつ。
心の浮気を、妻に一切悟られないよう、完璧に隠し通していた男性がいた。証拠も残さず、態度にも出さず、技術的には完璧だった。本人は、何も壊していない、と思っていた。
でも、家庭は、じわじわ冷えていった。
理由はね、心が外に向いている人は、隠せていても、家庭への投資が、確実に減るからなんだ。心のエネルギーには総量がある。外の誰かを思う時間が増えた分、目の前の家族に向けるはずだった、優しさや関心が、静かに目減りする。妻は、浮気の証拠は掴めなくても、自分への熱が冷えていく感触だけは、正確に受け取ってしまう。
心の浮気の本当の害は、バレることじゃない。バレないまま、家庭の温度が、原因不明のまま下がっていくこと。隠す技術が上がっても、漏れ出ていく熱は、止められないんだ。
妻の側で読んでいるなら
ここからは、夫の心の在処に気づいてしまった、妻の側の人へ。
まず、証拠もないのに責める後ろめたさと、でも何か変だという直感の間で、苦しんでると思う。その直感は、たぶん間違ってない。心の温度の変化を、いちばん早く察知するのは、いつも隣にいる人だから。
ただ、ここで、相手の女性を特定して責めることに、全エネルギーを注ぐのは、あまり得策じゃない。さっき書いたとおり、相手は受け皿で、本体じゃないから。その人を遠ざけても、夫の中の燃料が残っていれば、火は別の場所でまたつく。
見るべきは、相手の女性じゃなく、夫が、なぜ外で承認を補給しているのか、のほう。家庭の中で、彼が透明になっていなかったか。これは、夫だけの罪を問う話じゃなくて、二人の間の温度を、一緒に点検する話なんだ。もちろん、心を外に向けた責任は、向けた本人にある。その上で、燃料の在処を見ないと、同じことが繰り返される。
(ここで、夫を責めるか、自分を責めるか、の二択に入り込むと、たいてい消耗だけが残る)
そして、点検した上で、もう温度が戻らない、誠実さが信じられない、と感じるなら、それを我慢し続ける義務も、あなたにはない。直すのか、向き合って話すのか、別の道を選ぶのか。その判断は、あなたが、納得できる形で持っていい。
消すべきは相手じゃなく、補給する理由
最後に、両側へ。
心の浮気をしている男性へ。相手の女性を、運命だと美化して悩む前に、自分の家庭の燃料計を見てほしい。あなたが外で補給している承認は、本来、家庭で満たされるはずだったものだ。相手を消そうとするより、なぜ家で渇いたのかを、配偶者と向き合って立て直すほうが、根っこの解決になる。サプリで誤魔化すより、ちゃんとした食事に戻すこと。それが難しいなら、隠して続けるんじゃなく、誠実に話す側へ進んでほしい。
気づいてしまった妻へ。心の在処は、責めても戻らない。外で満たされている承認が、なぜ家庭で渇いていたのか。その目盛りを、二人で見られるかどうかが、分かれ道になる。
心が動くのは、止められない。でも、その火を、家庭の外で育てるか、家庭の中の渇きと向き合う合図にするかは、選べる。
燃料切れのサインを、裏切りで埋めるか、立て直しの起点にするか。そこだけは、意志の話なんだ。
