特に悪いことをした覚えがない。なのに、なぜか避けられてる。輪に入ると微妙に温度が下がる。気づいたら、人が静かに離れていってる。
理由が分からないのが、いちばんきつい。何が悪いのか言ってもらえれば直すのに、それすらない。
何故かの正体は、たぶん存在の罪じゃない
何故か嫌われる、と感じてる人の頭の中では、原因が一個の巨大な塊になってる。私という存在が、丸ごとダメなんだ、という塊。
でも嫌悪って、そんな神秘的なものじゃない。具体的な引き金があって、しかもその多くは、直せる行動だったり、あなたの外側の事情だったりする。
塊のままだと、手の打ちようがなくて、ただ自分を呪うしかなくなる。これを、いくつかの小さい原因にバラしていく。バラした瞬間に、存在の問題が、対処できる課題に変わるから。
先に言っておくと、本気で全方位から嫌われてる人なんて、ほぼいない。あなたが今数えてるのは、嫌ってくる人の顔だけで、普通に接してくれてる人を、不安がカウントから外してるだけかもしれない。
嫌われやすい人の共通項は、性格じゃなかった
好かれようとする力みが、漏れる
現場で、なぜか敬遠されるタイプを何百人と見てきて、共通してたのは、性格の悪さじゃなかった。むしろ逆。嫌われたくない、という気持ちが強すぎる人が、なぜか嫌われてた。
人は、相手の緊張をうつされる生き物なの。あなたが、嫌われないように、変に思われないように、と全身を強ばらせていると、その不安が、言葉の端や表情からじわじわ漏れる。受け取った相手は、理由の分からない居心地の悪さだけを感じて、なんとなく距離を取る。
お見合いでよくあった。緊張しすぎた人の席だけ、相手も理由なくそわそわして、会話が弾まない。本人は、嫌われた、と落ち込む。実際は、力みが伝染しただけ。あなたが嫌われてるんじゃなく、あなたの不安が、場に伝染してるんだ。
良い人すぎる人が、なぜか避けられる
もう一つ、矛盾して見える現象。良い人すぎる人が、なぜか好かれない。
全員に合わせて、誰にも反対せず、いつもにこやかで、自分の意見を出さない。安全なはずでしょ。なのに、距離を置かれる。
理由はね、本心が見えない人は、不気味だからなの。何を考えてるか分からない笑顔は、人の警戒心をそっと起こす。嫌われるのが怖くて自分を消した結果、得体の知れなさという、別の嫌われ要素を発生させてた。良い人すぎる、は、褒め言葉の顔をした警告だったりする。
40代の女性会員が、まさにこれだった。誰にでも親切で、絶対に波風を立てない。なのにお見合いが続かない。男性の感想は、決まって、悪い人じゃないけど、距離が縮まらなくて。彼女に足りなかったのは、好感度じゃなく、隙と本音だった。
嫌悪には、発信源が一人いることがある
ここから、誰も言わない話をする。嫌われてる、と感じる現象の裏に、たった一人の発信源がいることが、けっこうあるんだ。
嫌悪は、伝染する情報なの。職場でもグループでも、一人があなたに悪い印象を持つと、それは噂や、態度や、何気ない一言になって、周りへ配信される。直接あなたを知らない人まで、なんとなくあの人は、という空気だけを受け取る。
だから、全員から同時に嫌われたように見える時、実際は、一人の発信源があなたの像を勝手に編集して、流してるだけのことがある。あなたが急に全方位でダメになったんじゃなくて、電波塔が一本、悪い電波を出してるだけ。
相談所でも見た。ある女性会員を、同時期に入会した別の会員が、陰でひどく言いふらしてた。言われた本人は、自分は誰からも好かれない、と思い込んでたけど、発信源はたった一人。その一人と距離を取った途端、周りの空気が、すっと変わった。
これに気づくと、楽になる。世界全部があなたを嫌ってるんじゃない。発信源を一個、特定すればいいだけ、という話に縮むから。
全員に好かれる水は、誰の記憶にも残らない
そもそも、という根本の話もしておきたい。全員に好かれる、を目標にしてる限り、苦しさは永遠に終わらない。
全員に好かれる人を、味で例えると、無味無臭の水なんだ。誰にも嫌われないけど、誰の記憶にも残らない。可もなく不可もなく、空気のように扱われて、いてもいなくても同じ存在になる。
人を惹きつける人は、必ず味がある。その味は、合う人には大好物で、合わない人には苦手。塩辛いものが好きな人もいれば、無理な人もいる。味があるというのは、一定数に嫌われることと、最初からワンセットなんだ。
つまり、何人かに嫌われてるのは、あなたにちゃんと味がある証拠かもしれない。無味の水になりたいのか、誰かの大好物になりたいのか。後者を選んだ瞬間、嫌われゼロは、そもそも目標から外れる。
全員に好かれようとして、私は透明になった
これ、自分の失敗からの実感なんだよね。
新人アドバイザーの頃、とにかく全会員に好かれようとした。誰の意見にも頷いて、当たり障りのないことだけ言って、波風を一切立てない。嫌われるのが、怖くて怖くて。
結果どうなったか。指名が、ゼル…じゃなくて、ほぼゼロだった(笑)。誰からも嫌われない代わりに、誰からも選ばれない。あの先生じゃなきゃ、という理由が、私には一個も無かった。透明な水だったから。
(毎月の指名一覧に自分の名前が無い、あのスクロールのつらさよ)
転機は、ある会員さんに、嫌われるのを覚悟で、率直に意見した日。その条件で探し続けるのは、正直おすすめしません、と。言ったあと、嫌われたかも、と胃が縮んだ。でも、その人は、初めてちゃんと向き合ってくれた、と言って、私を指名し続けてくれた。
味を出したら、合わない人は離れた。代わりに、私の味を好む人が、残って、選んでくれた。透明をやめた日が、私が選ばれ始めた日だった。
好かれるとは、誰かに強く嫌われること
ここまでをつなぐと、ひっくり返った結論が出てくる。好かれる人になる、というのは、嫌われない人になることじゃない。誰かに強く好かれて、その分、別の誰かに強く嫌われることなんだ。
好意と嫌悪は、同じ味から生まれる双子だから。あなたのはっきりした部分、こだわり、意見、雰囲気。それが、ある人を惹きつけ、別の人を遠ざける。両方を同じ蛇口が出してる。嫌悪の蛇口だけ閉めようとすると、好意の蛇口も一緒に閉まる。
だから、嫌われた事実を、全部消そうとしなくていい。何人かに嫌われながら、何人かに深く好かれてる。それが、ちゃんと味のある人の、正常な状態なの。目指すのは、嫌われない自分じゃなく、合う人に深く届く自分のほう。
もちろん、行動として直したほうがいい癖があるなら、そこは整える。話を遮る、自慢が多い、約束にルーズ。具体的な行動は、味じゃなくただの油汚れだから、落とせばいい。味は残して、汚れだけ落とす。この区別が、たぶんいちばん大事。
不可能な人生を、降りていい
最後に、自尊心がすり減った状態でここまで読んでくれた人へ。
全員に好かれる、という目標は、そもそも誰にも達成できない不可能なゲームなんだ。クリア不能の課題を自分に課して、できない自分を責め続けてたなら、責めてた相手が間違ってる。ルールのほうが、おかしい。
あなたが今日からやめていいのは、全方位への愛されチェック。代わりに、すでにあなたを普通に好いてくれてる、その数人のほうへ、視線を向け直すこと。嫌ってくる顔より、隣にいてくれる顔を数える。
もし、嫌われるという感覚が、明確な無視や排除や、心をすり減らすいじめにまで及んでるなら、それは一人で抱える話じゃない。信頼できる人や、しかるべき窓口に、そのしんどさを渡してほしい。あれは弱さじゃなく、まっとうな手当てだから。
全員に好かれる人生を降りた瞬間に、誰かに本気で好かれる人生が始まる。
水をやめて、味のある一杯になっていい。
