仲はいい。むしろ親友の部類。なのに、彼女と会った帰り道は、なぜか少し削られてる。おめでとうと言われたのに、祝われた気がしない。
結婚相談所のカウンターで7年、会員さんの恋路が親友に壊される瞬間を何度も見てきた。
友達のフリをした敵、という説明がもう違う
フリ、じゃないのよ。
フレネミーの友情は、たいてい本物。一緒に泣いた夜も、看病も、終電を逃して語り合った時間も、嘘じゃない。本物の友情のすぐ隣に、本物の敵意が同居してるだけ。
偽物の友達なら、話は簡単だった。見抜いて、離れて、おしまい。
厄介なのは、好きと、負けたくないが、同じ人間の中で平気で両立すること。彼女はあなたを大事に思いながら、あなたの幸せに耐えられない。矛盾してるけど、人間ってそういう生き物でしょ。
切れない理由も、こっちの罪悪感が消えない理由も、ぜんぶここ。フレネミーがしんどいのは、敵だからじゃなく、友達でもあるから。
見分けるのは悪口じゃなく、おめでとうの最初の3秒
マウントや詮索では、判定できない
特徴リストの定番は、悪口が多い、詮索してくる、張り合ってくる。あてにならない。
口の悪い友達にも、心からあなたの幸せを願ってる人はいる。逆に、物腰のやわらかいフレネミーは山ほどいる。にこにこしたまま、急所だけ正確に刺してくるタイプ。
表面の態度で仕分けると、大事な友達を誤爆して、本物のフレネミーを取り逃がす。
不幸の時の速度と、吉報の時の温度
見る場所はひとつだけ。あなたの調子が上がった報告と、下がった報告で、彼女の温度がどっちへ動くか。
フレネミーは、あなたが落ちてる時、最高に優しい。失恋した夜、誰より早く駆けつけて、朝まで電話に付き合ってくれる。あの優しさも本物。ただ、優しくなれる条件が、あなたが下にいることなんだ。
で、吉報の時。婚約したよ、と伝えた瞬間の、最初の3秒。
一拍の間。すん、と冷える空気。よかったじゃん、の直後に続く、でもさ。話題が秒速で彼女自身のことへ切り替わる。おめでとうの言葉はあるのに、温度が入ってない。
不幸に駆けつける速度と、幸福を祝う温度。この二つが逆転してる相手、それがフレネミー。体温計みたいに正直だから、3秒あれば測れる。
婚活の最大の敵は、ライバルじゃなく親友だった
あなたならもっといい人いる、という破壊兵器
相談所で交際が壊れる理由、何がいちばん多いと思う?条件の不一致でも性格の相性でもない。面談メモを思い返す限り、断トツは、友達に相談したら反対されて。
38歳の会員さんがいた。誠実な男性と真剣交際まで進んで、本人も幸せそのものだった。ある日の面談で、表情が曇ってる。聞けば、親友に彼の写真を見せたら、えー、あなたならもっといい人いけるよ、妥協じゃない?と返されたらしい。
それだけ。たったそれだけで彼女はぐらぐら揺れて、ひと月後に交際終了。
彼は半年後、別の女性と成婚した。で、もっといい人とやらは、その後彼女の前に現れたか。…現れてない。当たり前だ。もっといい人いるよ、と言う人は、そのいい人を連れてきてはくれない。言いっぱなしで、責任はゼロ。あの一言は、応援の顔をした解体作業なんだよね。
だから現役の頃、会員さんには言い切ってた。決まるまで、彼を親友に見せないでください、と。冷たく聞こえるのは承知の上。壊された現場を見すぎた人間の、本気の防御策だった。
成婚を、親友にだけ隠す人たち
もっとザラッとする話を置いておく。
成婚退会の手続きの席で、これ、友達にはまだ内緒にしてください、と頼んでくる会員さんが一定数いた。親でも職場でもなく、いちばん仲のいい友達にだけ、隠す。
一緒に入会した仲良し二人組なんて典型で、片方が先に決まりそうになると、もう片方が相手の欠点リストを毎週送ってくる。決まった側は退会日を濁して、式の直前まで報告を引き延ばしてた。
おめでとうと言ってほしい相手に、いちばん言えない。あの光景、何度立ち会っても胸がヒリヒリした(泣)。
フレネミーは性格じゃなく、天秤が壊れた状態
フレネミーは、生まれつき性格のねじれた特定の女、じゃない。関係の状態を指す言葉だと思ってる。
女同士の友情って、対等という天秤の上で安定してる。同じ独身、同じくらいの稼ぎ、同じ悩み。その皿の片方に、婚約や出産や昇進が、どすんと乗る。天秤が傾いた瞬間、昨日まで普通だった親友の中で、何かが起動する。
つまりフレネミーは、あなたの幸せと同時に発生する。あなたが前へ進むほど製造される。理不尽だけど、それが仕組み。
私の中にも、いた
二十代後半、まだ独身でアドバイザーをやってた頃、いちばん仲のいい友達が先に婚約した。おめでとう!と言った。声のトーンは完璧だったはず。
その夜、家で何をしたか。彼女の指輪のブランドを検索して、値段を調べた。
胸がチクッとして、チクッとした自分に気づいて、二重に嫌な気分になった。私の中にも、いたわけ。フレネミーの芽が。
数年後、自分が結婚する側に回ったら、今度はあの子からの連絡がすっと減った。天秤は交互に傾く。お互いさまだったんだと、今なら分かる。
だから、友達の吉報に一瞬チクッとした経験のあるあなたも、そこで自分を裁かなくていい。あの痛みは人間の標準装備。分かれ道は、痛むかどうかじゃなく、痛みを行動に変えるかどうか。欠点リストを送りつけた瞬間、芽はフレネミーに育つ。
縁を切れではない
切れない相手ばかり、という現実
対処法を調べると、距離を置きましょう、思い切って縁を切りましょう、の大合唱。書いた人は、現実の人間関係を回したことがあるのかな。
フレネミーは、職場の同期だったり、グループの中心だったり、ママ友だったりする。切った瞬間に別の面倒が始まる席へ、ちゃんと座ってるのよ。しかも前述のとおり友情の側も本物だから、切れば自分の心も普通に痛む。二択を迫る記事は、その痛みを計算に入れてない。
餌を断てば、勝手におとなしくなる
私の答えは、関係は切らず、情報だけ絞る。
フレネミーの敵意は、あなたの情報を餌にして育つ。彼の年収、関係の進み具合、迷い、不安。餌が入るたび、刺す場所が正確になっていく。
だから餌やりをやめる。恋愛の進捗は話さない。聞かれたら、ぼちぼちかな、で止める。悩み相談は、利害のぶつからない別の場所へ持っていく。幸せ報告の投稿は、公開範囲を一段だけ狭める。吉報は、外堀が全部埋まってから最後に伝える。
喧嘩もしない、絶縁もしない、ただ静かに兵糧だけ止める。情報が入らないフレネミーは刺しようがなくて、そのうち勝手に静かになる。これ、ママ友の世界でもそのまま使える。子どもの成績と受験は、婚活の次にフレネミーがよく育つ畑だから(笑)。
最後に、救いの話をひとつ。天秤は、また動く。指輪の値段を検索したあの夜から年月が経って、私とあの子は、お互い子持ちのくたびれた身分になった今、また普通に笑い合ってる。皿の高さが揃えば、戻れる友情もある。
切るか我慢するかの二択で消耗しないで。餌だけ止めて、天秤が動くのを待てばいい。フレネミーは永遠の身分じゃなく、ただの一時的な状態だって覚えておいてね。
