MENU

好きな人が忘れられないのは、いちばん良かったからじゃない

  • URLをコピーしました!

何年も経ったのに、ふとした瞬間に、あの人の顔が浮かぶ。今の生活に不満なんてないのに、なぜか、あの人だけが、記憶の中で色褪せない。好きな人が忘れられない、と検索した人へ。
結婚相談所で7年、成婚した後も、心の奥に、誰かの記憶を持ち続けてる人たちを見てきた。最初に、意外な話をしておきたい。忘れられない人は、いちばん良かった人とは、実は限らない。いちばん、終わっていない人であることが多いんだ。

目次

忘れられない人は、いちばん良かった人とは限らない

記憶に残り続ける相手を、無意識に、運命の人だった、と結論づけてしまいがち。でも、記憶に残る強さと、相性の良さは、実は、別の物差しで測られてるものなんだ。
記憶を長く保存させる、いちばん大きな要因は、その関係が、どう終わったか。きれいに終わった関係と、宙ぶらりんのまま終わった関係、脳の中での扱われ方が、まったく違う。

脳は、終わった話より、途中で切れた話を覚えている

結末を知らない物語は、何度も再生される

停電で、映画が、いちばん盛り上がる場面の途中で、ふっと止まったことを想像してみてほしい。最後まで観た映画のことは、案外、細部を忘れていく。でも、途中で止まった映画のことは、何年経っても、あの続きはどうなったんだろう、と、ふと思い出す。
人の脳には、こういう性質がある。完結した物語は、片づけて、しまっておける。でも、途中で切れた物語は、片づける場所が見つからないまま、意識の隅で、ずっと再生され続ける。
好きな人が忘れられない、という現象の多くは、これと同じ構造。はっきりした理由もなく距離ができた、お互いの気持ちを最後まで確かめられなかった、突然、環境が変わって会えなくなった。そういう、結末のない終わり方をした相手ほど、記憶の中で、上映され続ける。

忘れられない相手ほど、平凡な姿を見ていない

もう一つ、理由がある。忘れられない相手のことを、あなたは、たぶん、あまり長く見ていない。
関係が長く続けば、相手の機嫌の悪い日も、寝癖も、つまらない癖も、否応なく見えてくる。理想は、日常という現実に、少しずつ削られていく。
でも、短い時間で終わった関係、あるいは、始まる前に終わった関係は、その、削る作業が起きないまま止まってる。相手の姿は、いちばん輝いていた瞬間のまま、標本箱に収められて、色褪せずに保存される。忘れられないのは、相手が完璧だったからじゃなくて、平凡な姿を見る前に、時間が止まったから。

相談所で見た、結婚してもなお浮かぶ記憶

成婚して数年経った女性会員が、あるとき、ぽつりとこぼしたことがある。夫のことは、ちゃんと愛してます、幸せです。でも、たまに、大学時代に少しだけ関わりのあった人のことを、思い出す瞬間があるんです、と。
話を聞くと、その人とは、交際にすら至らなかった。お互い好意はあったはずなのに、彼が留学することになって、はっきりした言葉もないまま、疎遠になった。それだけの相手。
彼女は、これって、夫への気持ちが足りないってことでしょうか、と、不安そうだった。
そうじゃない、と伝えた。夫との関係は、日々更新され続けてる、生きてる関係。あの人の記憶は、更新が止まったまま保存されてる、標本。両者は、同じ棚には並んでない。標本を時々眺めることは、生きてる関係への愛情とは、まったく別の回路で起きてることなんだ。

私が今も、ふと思い出す、あの数週間

私にも、似たような記憶がある。20代の頃、短期の研修先で、数週間だけ一緒に過ごした人がいた。
特別な告白もなく、ただ、毎晩、遅くまで話し込んで、笑い合って、それだけの数週間。研修が終わって、それぞれの生活に戻って、自然と連絡も途絶えた。何もなかったのに、なぜか、季節の変わり目や、ふとした匂いで、あの数週間のことを、今でも思い出す。
夫のことは、ちゃんと愛してる。それとは矛盾しない場所に、あの数週間の記憶は、静かに、しまわれてる。終わらなかった話は、いつまでも、本棚の、開いたままのページで待ってる。そういうものなんだと思う。

終わらせるには、物語に自分で区切りをつける

それでも、思い出す頻度が高くて、しんどいと感じるなら、物語に、自分で区切りをつける作業が、効くことがある。
出さない手紙を書いてみる。あの時、伝えられなかったことを、全部、紙に書き出す。あの時、こう思ってた、こうしてほしかった、さよならも言えなかった。書き終えたら、その手紙は、送らずに、しまうか、処分する。
これをやると、脳の中で、途中で切れてた物語に、自分の手で、結末をつけたことになる。停電で止まった映画に、エンドロールを、無理やりでも流す作業。完結した物語は、少しずつ、上映され続ける頻度を落としていく。

忘れられないことと、今が不幸せなことは、別の話

誰かを忘れられずにいることは、今の生活が不幸せだという証拠には、ならない。
忘れられない記憶は、多くの場合、今の幸せとは、無関係な場所に、静かに保存されてるだけ。標本を時々眺めることと、生きてる関係を大切に育てることは、両立できる。
無理に忘れようとしなくていい。ただ、その記憶が、今の生活を邪魔するほど大きくなってきたら、そっと区切りをつけてあげればいい。棚の奥にしまったまま、時々思い出すくらいで、ちょうどいいんだと思う。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次