うまくいってたはずなのに、気づいたら自分の手で、ぜんぶぐちゃぐちゃにしてた。
そういう経験があってもあなたは壊れてるわけでも、愛され下手なだけでもない。7年間、恋が壊れていく瞬間を現場で数えきれないほど見てきて、ひとつ確信したことがある。恋愛の自滅は、事故じゃなくかなり高度な戦略なんだ。
恋愛の自滅は、事故じゃなく戦略
自滅って、本人は被害者みたいな顔をしてる。気づいたらやってた、自分でも止められない、と。でも現場で何百件と見てると、別の絵が浮かぶ。
壊れる交際は、ランダムには壊れない。決まって、いい感じになった直後に壊れる。お見合いが盛り上がった次の週、相手が本気を見せてきたタイミング、結婚という単語がちらついた瞬間。そこで急に粗探しが始まったり、音信が途切れたり、ケンカがぼっ発する。
偶然にしては、出来すぎてる。
考えてみてほしい。終わりが向こうからやってくるのを待つのは、地獄だ。いつ、どんな形で刺されるか分からない。それなら、痛いのは確定だとしても、いつ刺すかを自分で決めたほうが、まだマシに思える。自滅は、その理屈で動いてる。
これは無意識の作戦行動。捨てられるかもしれない恐怖を待つくらいなら、自分の手で先に終わらせる。コントロールできない崩壊より、コントロールできるほうが、まだ耐えられるから。
なぜ、うまくいってる時に限って壊すのか
幸せの予感が、いちばんの引き金
普通は、関係が悪いときに別れを考える。自滅型は逆。いちばん危ないのは、幸せの予感がした瞬間。
理由はシンプルで、怖いから。手に入りかけると、失う想像がセットでやってくる。これを失ったら、もう立ち直れない。その恐怖がピリピリ走った瞬間、脳がこう判断する。失う前に、自分から手放したほうが安全だと。
壊れる予兆は、外から見ると丸わかり
担当してると、ああこの人そろそろやるな、というのが見えた。お見合いがうまくいって、相手からの好意がはっきりした、まさにその次の面談で、急に相手の欠点を並べ始める。前回まであんなに楽しそうだったのに。
37歳の女性会員で、真剣交際に入った途端、毎回、相手の食べ方が無理になりますと言い出す人がいた。距離が縮まる合図が、その人にとっては逃げる合図。咀嚼音は、口実にすぎなかった。
急ブレーキは、好きじゃなくなったからじゃない。好きになりすぎて、怖くなったから。本人だけが、自分が今アクセルを踏んでるのか、ブレーキを踏んでるのか、分からなくなってる。
自滅する人は、たいてい相手をちゃんと好き
ここは強めに言いたい。自分のことを冷たい人間だと思い込んでる自滅型の人へ。逆だから!
どうでもいい相手は、壊さない。失っても痛くないから、わざわざ防衛する必要がない。軽く付き合って、軽く別れて、傷ひとつ残らない。あれは自滅じゃなくて、ただの無関心。
自滅できるのは、本気で好きな証拠なんだ。失うのが怖くてたまらないほど、相手を大事に思ってる。その大事さの行き場がなくて、暴発してるだけ。
自分の十八番を知らないと、一生くり返す
自爆ボタンには、人それぞれの型がある
自滅にも、その人の持ちネタがある。だいたい一個か二個に決まってて、毎回それを出す。
先に振る人。相手の本気が見えた瞬間、自分から別れを切り出して、捨てられる側になる前に捨てる側へ回る。
試す人。わざと冷たくしたり、連絡を遅らせたり、別れをちらつかせて、それでも追ってくるか確かめる。受かるたびに難易度を上げて、最後は相手が音を上げるまでやめられない。合格させる気が、最初からないから。
粗探しする人。完璧な相手に無理やり欠点を見つけて、こんな人だったんだと冷める。冷めれば、好きという怖い感情から逃げられるから。
ぷつっと消える人。理由も言わず、ある日フェードアウト。向き合う前に、いなくなる。
型は違っても、目的は全部同じ。本気を、なかったことにしたい。
発動する条件は、いつも同じ場所
大事なのは、自分の型と、それが出る瞬間をセットで覚えること。
過去の恋を三つ思い出して、終わった直前に自分が何をしたか並べてみると、ぞっとするくらい同じパターンが出てくる。たいてい、関係がいちばん良かった地点の、すぐあと。
私が、いちばん好きだった人を自分で消した話
偉そうに分析してるけど、私の十八番は、先に振ること。
二十代の頃、本当に好きな人ができると、相手が本気になった瞬間に、決まって別れを切り出してた。好かれてる、と感じた夜ほど、わざと冷たいメールを打った。自分が捨てられる未来が怖くて、先回りして終わらせてたわけ。
一度、心から好きだった人がいて。向こうも誠実で、たぶん結婚まで行けた人。なのに、彼が将来の話をした次の日、私はどうでもいい一言にかみついて、関係を壊した。きれいに、完璧に。彼が去ったあと、ベッドでぽつんと、ほら、やっぱり、と思った。自分で仕向けたくせに。
別れを告げたあとは、決まって涙が出た。自分で振ったのに泣くなんて矛盾してるけど、心の底ではずっと、追いかけてきてほしかったんだと思う。
夫のときも、危なかった。彼が指輪の話を匂わせた週、いつもの発作が出かけた。冷たくしようとした。けど一回だけ、踏みとどまった。また同じことをしたら今度こそ一生後悔する、と分かってたから。自分の十八番を、知ってたおかげ。
自分を愛して、が一番ダメな処方箋
最後に、いちばん腹が立つアドバイスを名指ししておく。自分を愛しましょう。
これ言う人、だいたい自分は愛せてる側だよね(笑)。自分を愛せたら苦労しない。愛せないから、ここにいる。気合いで自己肯定感は上がらない。
効くのは、もっと地味なやつ。まず、自分の十八番を知る。先に振るのか、試すのか、粗探しか、消えるのか。次に、それが出る瞬間を覚える。たいてい、幸せの予感がした直後。そして本番。その瞬間が来たら、行動をきっかり十分だけ止める。冷たいメールを打つ指を、別れを切り出す口を、十分だけとめらせる。何もしない。
十分のあいだに何をするか、先に決めておくといい。スマホを別の部屋に置く。散歩に出る。誰かに電話する。とにかく、自爆ボタンを押す手が塞がってる状態を、十分だけ作る。
発作は、波みたいなもの。ピークの十分をやり過ごせば、勝手に引いていく。引いたあとで、まだ別れたいか自分に聞けばいい。たいていは、別れたくない。
自滅は、愛が深い人のクセ。直すんじゃなくて、出かかった瞬間に手を止める練習をするだけだよ。
